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一緒に


 ボクの頭を撫でて、ボクが擦り寄っているユウリちゃんに対抗心を燃やしたのか、レンさんが反対側でボクにくっついてきて、先ほどと同じような状況に戻ってしまいました。


「いちいち、くっついて対抗し合わないでください、暑っ苦しい」

「……」


 それは、ロガフィさんに膝に抱かれているイリスには、言われたくないな。

 ロガフィさんが望んでしている事なので、口には出さないけどね。


「それより、話を戻しましょう。皆さん、仲が良いのはとても良い事ですけどね」


 聖女様が、ボク達に微笑みかけながら、言いました。その言葉に、嫌味っぽさは全くない。ボク達を見て、心底嬉しそうにしている様子が伺えます。


「……そうですね。話を戻すと、ネモ。貴方が魔王を討伐しに行くという事は、この町を出ていくという事です。まさか、魔王討伐が日帰りでできるとか、思っていないでしょう?」

「あ……」


 そうか。イリスは、その事を言っていたのか……。

 確かに、魔王討伐が日帰りでできるとは思えない。しばらくは、家を留守にする事になってしまうだろう。そうなった場合に、家の管理とか、ラメダさんへの借金の返済の問題とかが出てくる。


「それだけじゃ、ありません。私たちは、どうなるんですか?以前のように、貴方はもう一人ではないんですよ」

「……」


 ボクには、ボクが守るべき人が出来てしまった。特に、この世界に飛ばされてしまった、ユウリちゃんとイリスは、ボクの勇者の加護から外れてしまうと、どんな目にあってしまうのか……想像するのも、恐ろしい。なので、置いていくことはできない。

 かといって、魔王討伐に連れて行くのは、危険だ。その道の途中は、野宿になる事もあるだろう。その環境は、とても辛い物になるはずだ。ユウリちゃんはともかく、イリスは体力がないし、凄く我儘で、そんな環境に耐えられるとは思えない。


「……ごめん、イリス。ボクは、何も考えていなかったみたい」

「別に、誰も貴方を責めようと言っている訳ではありません。分かればいいんです。その上で、もう一度聞かせてください。本当に、魔王討伐に行くのですか?」


 イリスが、ボクを真っすぐ見据えて、そう尋ねてきました。

 そんなイリスの頭上の、ロガフィさんもボクをみつめています。ボクと目が合うと、ロガフィさんが首を横に振りました。討伐に行かなくてもいいという事だろうけど、そうはいかない。

 ここでボクが止めると言えば、ロガフィさんはきっと、一人で行ってしまう事になる。かといって、行くなとも言えない。それは、ジェノスさんに死ねと言うのと、同じだ。


「何を、迷っているんですか。本当に、情けのないヘタレ勇者ですね、貴方は」

「イリス……」

「私とユウリは、貴方についていく。ただ、それだけです。でなければ、勇者の加護から外れた私たちは、どんな目に合う事になるか……」

「うん……」


 それは、分かっている。だから、ボクが魔王討伐に行くのなら、2人は連れて行かなければいけない。


「だから、貴方についていく事は、既に決まっています。あとは、この町に残るか、魔王討伐に出かけるかですが、町に残るのなら、特に何も変わったことはありません。ロガフィは恐らく、町を出て行ってしまうでしょうが、私たちはこの町で、いつも通りの生活を送る事になります。これまでと、何も変わらない生活です。たまに、何かあるでしょうけど、まぁなんとかなるでしょう」

「そうだね……」


 ボクも、そんな気がする。イリスに加えて、ユウリちゃんもいる。3人で固まっていれば、どんな困難も乗り越えて、楽しく暮らせるはずだ。

 ただ、そこにはロガフィさんがいない。せっかく知り合いになれて、イリスと仲良しのちゅーまでしたロガフィさんが、いなくなってしまう。イリスを嬉しそうに抱く、そんなロガフィさんの姿が、二度と見れなくなってしまうのだ。


「もう一方の、魔王討伐に行く場合。貴方が先ほど、何も考えずに発言した事ですが、こちらを選んだ場合、当然町を出ていくことになります。数日……数週間、あるいは数か月。もしかしたら、数年。かかる時間は、私にも分かりません。私は、この世界の魔王の事を、何も知りませんので。以前のように、貴方をサポートする力もありません。そんな中で、お荷物でしかない私とユウリを連れて、旅に出るんです。貴方は、僅かなお金と水だけあれば、どのような環境でも生き延びられるでしょう。ですが、私とユウリはそうはいきません」

「うん……」


 そんな旅に、2人は連れていけない。環境だけではなく、危険すぎる。


「だから、色々といる物を用意しなければいけません。まず、馬車は確定ですね。歩くのは嫌なので。野営用のテントに、ふかふかの布団も持っていかなければいけません。それから、新鮮なお肉を毎日食べるため、狩りの必要もあります。そんなお肉を焼くための、道具も必要です」

「ま、待ってイリス。イリスは、反対はしないの?」

「反対?何に?」

「ボクが、魔王を討伐に行く事に……」

「しません。ロガフィを救う事を選択した貴方は、正しいと思います。むしろ、ロガフィを見捨てるような選択をしたら、赦しません。だから貴方は、貴方の選択を貫き通し、私にこう言えばいいのです。危険な旅になるかもしれないけど、付いてこい、と。そう言ってくれさえすれば、あとはこちらがなんとかします。だから、迷うのはよしなさい。そして、一人で行くみたいに言うのも、よしなさい。先ほども言いましたが、貴方はもう、一人ではないんです」


 意外にも、イリスは賛成だったんだ……。

 イリスの事だから、きっとその先に待っている事まで、考えているに違いない。そんなイリスが、考えたうえで、そう言ってくれている。それなら、迷う必要はない。

 なんといっても、イリスは女神様で、ボクを導いてくれる、かけがいのない存在なのだから。


「……イリス。ユウリちゃん。ボクと一緒に、魔王討伐の旅に出よう!」

「……」

「はい!」


 イリスは黙って頷き、ユウリちゃんは元気よく返事をしてくれました。


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