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二人ずつ


 赤狼の傷の大半は、やはりレヴォールさんにつけられた傷らしい。彼は、赤狼を痛めつけて、それを遊びと称して繰り返し、虐待した。あまりに酷い仕打ちに、ボク達は心が痛みます。


「ところで、どうしてそんな男の奴隷になったんですか?」


 事情をよく知らされていないイリスが、イスにどかりと座り、足を組んで赤狼に尋ねた。相変わらず、貴族とか王様……あるいは、女王様のような態度だね。

 でも現実は、ボクの奴隷だ。ボクが借金をしてまで買い取って、その身柄を預からなければ、イリスも今頃赤狼のようになってしまっていたかもしれない。それはさすがに、嫌だなと思う。


「あの男は……ある日突然、私の故郷の村にやってきた。そこで、最初は親切な振りをして私たちに近づき、そして薬で動けないようにしてから、一人ずつ、家族を殺されたくなければ奴隷になれと脅され、全員奴隷にされた。今思えば愚かな行動だった。しかし、当時は奴隷紋に関しての知識も浅く、後で逆らって殺せばいいと思っていた。実際は、全く抵抗する事ができなくなってしまったがな……」

「なるほど。事情は大体、分かりました」

「……」


 納得した様子のイリスを、赤狼が何か聞きたそうに、見ている。耳がぴこぴこ動いていて、可愛らしい。触りたい。


「なんですか?」

「失礼を承知で聞くが、貴女はエルフだな。と、いう事は、もしやもの凄く年上だったりするのだろうか……?」

「……この中の誰よりも、年上ではあります」

「おばあちゃんって事だね」

「誰がおばあちゃんですか!こんなに若くて可愛いおばあちゃんが、いますか!?いないでしょう!?」


 余計な事を言ったアンリちゃんに向かい、イリスが激昂する。確かに、おばあちゃんなら、そんなに簡単に怒らないよね。でも実際は、おばあちゃんなんだけどね。それも、千歳以上……恐ろしい。

 でも、そう茶化したアンリちゃんも、百歳近いんじゃないかな。詳しくは知らないけど、十分おばあちゃんだよね。


「それが、どうかしたんですか?」

「エルフという種族が、珍しくてな。興味があったんだ。しかし、本当に長寿なのだな。こんなに幼い外見だと言うのに……」

「そうですね。私たちから見れば、ずっと同じ外見で、若いまま。羨ましくもありますが、ちょっと寂しそうですね。でも別の見方をすれば、一生若いままその身を堪能できる、素晴らしい種族です」

「わ、私はユウリの奴隷ではありません!ネモの、奴隷です!おかしな考えは起こさないようにしてください!ね、ネモ。ちゃんと、ユウリを管理してくださいね!?」


 ユウリちゃんを管理?難しい事を、要求してきます。ボクは乾いた笑いで、イリスに返しました。


「……そういえば、貴女も、そちらの女性の奴隷だったな。このエルフの娘も、そうなのか?」

「私は、ユウリ。ユウリとお呼びください。エルフは、イリスです」

「ぼ、ボクは、ネモ」

「では、ネモ。貴女は、この二名の奴隷に対して……あの男。レヴォールが私にして来た事と、同じような事をするのか……?」

「しません」

「しませんね」


 即答したのは、ボクの奴隷の2人。ユウリちゃんと、イリスだった。

 それを尋ねてきた赤狼は、不安げだったけど、2人が即答した事により、安心したように頬を緩めました。


「お風呂に一緒に入った時、私の肌を見ましたよね。見た通り、傷一つありませんよ。お姉さまが、私を大切にしてくださっている、証拠です。愛でられこそすれど、痛めつけられることは、ありません」

「め、愛で……!?」

「誤解を与えるような事を、言わないでください。この甲斐性無しのいくじなしは、私たちに手を出す事はありません。むしろ、その女にセクハラをされ、それを耐え忍ぶ毎日です。先ほども、見たでしょう?レンにキスされたくらいで、気を失うような意気地なしですよ。手を出せる訳ないです」


 イリスが、足で人を指さして説明してくる。非常に、お行儀が悪いです。

 あと、誰が甲斐性無しの意気地なしだ。ボクだって、やろうと思えばユウリちゃんやイリスに、その……色々できちゃうよ。エロゲで鍛えた知識が、ボクにはあるんだから。

 ……すみません、無理です。そんな事、とてもじゃないけどできません。


「……」


 落ち込むボクの頭を、優しく撫でてくれる人がいた。顔をあげると、ロガフィさんがボクの頭を黙って撫でてくれていました。

 ロガフィさんは、本当に優しい。元魔王なんかじゃなくて、天使なんじゃないのかな。


「そういえば、名乗り忘れていた。私の事は、赤狼ではなく、ディゼルトと呼んでくれ」

「それが、貴女のお名前なのですね。私は、レンファエル。レンとお呼びください」

「……ロガフィ」

「アンリだよ」

「……よろしく頼む」


 赤狼改め、ディゼルトはボク達に向かい、深々と頭を下げてきた。ボク達は全員、笑顔でそれを受け入れます。ロガフィさんは無表情だけど、心はきっと笑ってるから、笑顔です。


「さぁ、それでは、次の人はさっさとお風呂に入っちゃってください」

「では、私が」


 遠慮なく名乗り出たのは、イリスだ。


「分かりました。では、もう一人は?」

「はい?」

「二人ずつ、入るに決まってるでしょう?私とディゼルトさんだけ二人で入るとか、不公平じゃないですか。それに、一人ずつ入ってたらお湯が冷めてしまいます。という訳で、二人ずつ入ってもらいます」


 ユウリちゃんが、ニヤリと笑いながら、そんな事を言い出しました。こうなったユウリちゃんは、もう止まりません。


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