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「ところで、私はここにいていいのだろうか……?」


 夕飯を食べ終わった所で、赤狼がふと、そんな事を言いました。

 こうなってしまった以上、家に置いておくつもりで連れてきたんだけど、赤狼はそんなつもりではなかったらしい。


「お、落ち着くまでは、いていいよ」

「そういう訳にはいかないだろう。私は汚れた亜人種の身だぞ。一緒にいると、皆に迷惑がかかってしまう。私はスラムの路上で十分だ。先ほどの話をしに、また明日にでも訪れるので、その時また詳しく話を聞かせてくれ」


 ボクはいてもいいと言ったのに、席を立ち上がろうとした赤狼の肩を押さえ、立てないようにしたのはロガフィさんだった。


「な、なんだ?」

「……」


 ロガフィさんが黙って指さした先で、レンさんが頬を膨らませている。また、赤狼が自分の事を汚れていると言ったことに、腹を立てているようだ。


「赤狼さんが、どうしても、自分が汚れていると思うのならば、こちらにも考えがあります。ユウリさん。赤狼さんと、一緒にお風呂に入ってきてください」

「え、いいんですか!?」


 ユウリちゃんは、台所の夕飯の後片付けをしていたけど、当然のように喜び、目を輝かせてこちらに駆け寄って来た。


「レン。あ、貴女は鬼ですか……?」

「……」


 それを、イリスとボクは、怯えながら聞いていました。イリスも台所で、ユウリちゃんのお手伝いをしていた……いや、させられていた?ので、作業を中断してこちらへやってきて、青くなった顔を見せに来ました。

 ユウリちゃんとお風呂……考えるまでもない。きっと、凄い事が起きてしまう。過去にボクがユウリちゃんに、お風呂に侵入された時は、奴隷紋によって自衛した事もある。イリスも、ユウリちゃんとお風呂だなんて、メイヤさんと一緒にお風呂に入る事に等しい事が、分かっている。


「ふ、風呂?あ、貴女と、か?この、私が……?」

「そうですよー。着替えは、心配しなくて平気です。レンさんのワンピースがあるので、それを着ましょう。ぐふふ」

「いや、しかし、そういうのは……その、申し訳ないのだが……!」

「女の子同士なんだから、恥ずかしがる事なんて、ありませんよ」


 ユウリちゃんは、赤狼の手を掴むと、赤狼はユウリちゃんに引っ張られるように連れていかれてしまいます。普通なら、ユウリちゃんの言う通り、同性同士だし、お風呂に一緒に入る事は、おかしくもなんともない。でも、相手はあのユウリちゃんだ。

 顔を赤く染めて、初々しい反応を見せる赤狼は、もしかしたらこの後、本当の意味で汚されてしまうかもしれない。ボクは、そう思いながらも、2人を見送る事しかできませんでした。


「ところで、後片付けがまだなんですけど……」


 2人を見送ったイリスが、ふとそんな事を呟きました。この人数のお皿を、1人で洗うのはさすがに、可愛そうだ。


「ボクも手伝うから、一緒にやろ」

「……手伝う」

「私も、手伝いますね」


 ロガフィさんとレンさんも、そう名乗り出てくれたけど、家の台所は狭い。4人も台所に立ったら、身動きができなくなっちゃうよ。でも、仲間外れは嫌だと言うレンさんと、ロガフィさんによって、それは強行されて、互いの体が密着しながらも、いつもの倍以上の時間をかけて、どうにか後片付けは終わりました。


「いいお湯でしたー」


 そこへ、お風呂から上がって来たユウリちゃんがやってきます。いつもの白のワンピース姿に着替え、ほんのりと赤くなった肌から湯気が出ている、色気のある格好だ。

 その後ろには、同じくワンピース姿の、赤狼がいる。こうして薄着になった姿の赤狼の身体は、傷だらけだった。至る所に切り傷や火傷のような痕があり、とても痛々しい。それらの傷は、昨日今日につけられた傷ではなく、既に治っていて、ただ傷が酷すぎて、痕だけが残ってしまっている。

 まさか、全身にこんな酷い傷があるとは、思わなかった。コレをしたのは、きっとレヴォールさんだと思う。家族を人質にとられ、奴隷となり、酷い傷を負わされて……赤狼の過去を、その傷が物語っている。


「……」


 そんな赤狼は、手で顔を覆って隠している。耳と尻尾をぱたぱたと振って、嫌な事があった訳ではないと分かるけど、明らかに様子が変だ。

 傷の事を尋ねる前に、問題が発生しています。


「ゆ、ユウリちゃん。一体、何をしたの……?」

「え?ただ、汚れていないと証明するため、身体を洗う前に色んな所を撫でたり舐めたりしてあげてから、全身をくまなく洗ってあげただけですよ?」

「そ、そうですか。分かってもらえましたか、赤狼さん。貴女は、汚れてなんていないんですよ」

「……」


 赤狼は、若干引いているレンさんの問いかけに、答えようとしない。ただ、手で顔を覆い隠している。


「分かっていないのなら、もう一回行っときましょう!」

「わ、分かった!分かったから、もう、分かった!」


 そう言って、赤狼を連れて行こうと、ユウリちゃんが赤狼の手を掴んだ瞬間だった。赤狼はそれから逃れるために、慌ててレンさんの手を掴んで抵抗。露になった赤狼の顔は真っ赤に染まっていて、クールだった顔が崩れている。


「分かってもらえて、良かったです」


 レンさんが、満足げに笑顔で言うけど、赤狼が、別のトラウマを植え付けられていないか、心配です。


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