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交渉決裂


 Gランクマスターが、突然レヴォールさんに襲い掛かった。その巨大な拳を振り上げ、巨体の全体重をかけた拳を、レヴォールさんに向かって振り下ろそうとしている。

 その拳と、レヴォールさんの間に割って入ったのは、赤狼だ。両手に、一本ずつ手にした短剣をクロスさせ、拳を受け止めた。拳が、短剣とぶつかり合った瞬間、大きな音が響いた。同時に、衝撃波が生まれて、壁に掛けてあった人物画が、何枚か床に落ちました。


「残念ながら、交渉決裂のようですね。あの娘はいただきます。その上で、そうですね。貴方たちには、私の奴隷となってもらいましょう。ああ、Gランクマスターはいりません。殺せ」


 レヴォールさんの命令を聞き、赤狼の目が、怪しく光を放った。

 ボクは、レンさんとユウリちゃんを抱き寄せ、ソファから飛び下がり、2人を庇いながら、様子を見守ります。

 Gランクマスターの拳を防ぐ程のパワーを持ちながら、赤狼のそのスピードはGランクマスターを遥かに凌ぐ。目にも留まらぬ速さで、Gランクマスターの裏を取った赤狼は、手にした2本の短剣で、Gランクマスターを切り刻んだ。一瞬で、Gランクマスターのシャツは破れ、背中に無数の傷がつけられる事になり、血が噴き出した。


「……っ!?」


 赤狼の、予想外だったのは、2つ。Gランクマスターがそれに気にする事無く、再びレヴォールさんに殴り掛かろうとした事と、Gランクマスターの頑丈さだ。それくらいの傷では、Gランクマスターは怯まないし、今のGランクマスターには、レヴォールさんしか目に入っていない。赤狼なんて、どうでもいいんだね。


「ラオムスロウ」


 尚もソファに座り、足を組んだ余裕の体勢のまま、レヴォールさんが、魔法を発動させた。

 その魔法は、ただの魔法ではない。まるで、この空間そのものを包み込むような、大規模な魔法だ。でも、レヴォールさん自体に、そんな大規模な魔法を使えるほどの、魔力を感じない。となると、魔法の媒体になる、魔力結晶鉱石のような物が、どこかにあるのだろうか。

 とりあえず、その魔法で起こったことは、突然Gランクマスターの動きが、鈍くなったことだ。鈍くなったのは、Gランクマスターだけだ。とてもゆったりとしたスピードになったその様子は、ふざけているようには見えない。というか、噴き出ししている血ですら、ゆっくりになっているから、ふざけているとかそういう次元ではない。


「ネモ様!時間を操る、紋章魔法です!恐らくは、この地下空間全体に紋章が組み込まれており、術者である彼によって、自由に発動させられるようです!」

「そちらの玩具は、紋章魔法に詳しいのか……しかし、コレを一瞬で見破るとは、イイ。いいぞ、お前たち。奴隷になったら、たっぷり遊びながら、その知識を利用してやる」


 紋章魔法……なるほど。魔力結晶鉱石じゃなくて、どこかにある紋章が、魔法を発動させたのか。

 レンさんは、紋章魔法の使い手だから、同じ魔法だと分かったんだね。


「申し訳ありません、隙をつかれ──」

「手を、煩わせるな。やれ」

「……はい」


 顎で、Gランクマスターを指したレヴォールさんに、赤狼が頷き、短剣を構えた。動きが鈍くなったGランクマスターに、襲い掛かるつもりだ。

 この、対象の動きを鈍くさせる紋章魔法と、赤狼がいれば、無敵。レヴォールさんの余裕は、その考えから来ていたんだね。それが、分かりました。


「キャリーちゃんの所在が分からない以上、下手に手は出したくなかったんですけど、仕方ないですね。Gランクマスターが怒らなきゃ、私がキレる所でしたし」

「そうですね。私も、あの方の話を聞いていると、イライラしてきます」


 レンさんは、ユウリちゃんに同調しながら、懐から何枚かの紙を取り出した。その紙に描かれているのは……紋章だ。何かの魔法の、紋章が描かれている。


「フローカット!」


 レンさんが、紙に描かれた紋章魔法を発動させながら、それをGランクマスターに向かって投げつけた。紙は、紙とは思えないくらいまっすぐ飛び、そしてGランクマスターにぶつかる。

 その瞬間、Gランクマスターが、元のスピードに戻った。

 いきなり元のスピードに戻ったGランクマスターの拳が、レヴォールさんに襲い掛かる。惜しかったけど、レヴォールさんはそれを、ソファから飛び退いて避ける事に成功した。その動きは、意外にも機敏だ。

 代わりに、それまで座っていた高そうなソファは砕け散り、拳の威力に耐え切れなかった石の床までもが、砕けて盛り上がりました。


「ご主人様……!」

「ふはっ。お前は、Gランクマスターを相手にしていろ。私は、こちらの玩具を、相手にする」


 レヴォールさんは、そういってボク達を睨みつけてきた。その目を見開き、血走らせている。ふと思ったんだけど、この人のレベルは、いくつなんだろう。けっこう大規模な紋章魔法を使ってきたし、ちょっと気になったので、ステータス画面を、開いてみます。


 名前:レヴォール・レアド・ゲットル

 Lv :75

 職業:奴隷商会会長

 種族:人間


 わぁ。赤狼よりも、レベル高いや。 


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