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警告


 それにしても、レヴォールさんの言い方が、気になる。まるで、人を物としか見ていないような、言い方だ。


「断る」


 それに対して、Gランクマスターは、当たり前のようにそう答えた。むしろ、そんな失礼な提案と言い方に、ちょっと怒っている。筋肉が盛り上がって力が入っている様子から、そう感じる。


「アレを売っていただけるなら……そうですね。一億Gをお支払いします。どうでしょうか」

「い、いち……!?」


 あまりにも大きな値段に、ボクは驚きました。エルフという希少種であるイリスでさえ、980万Gだったのに、その10倍近い1億って。


「いくら高値を突き出しても、無駄だ。そんな交渉には、一切応じるつもりはない。それよりも早く、キャリーを返せ。さもなくば、この筋肉がお前に襲い掛かることになるぞ」


 Gランクマスターは、ボクとは違い、そんな値段に動じることなく、レヴォールさんを尚も突っぱねました。

 筋肉が襲い掛かるとかはよく分からないけど、その断りっぷりは清々しい。


「ああ、あの、可愛らしいお子さんですね。母に似て、可愛らしい子です。成長すれば、レイラさんによく似た女の子になるでしょう」

「早く、キャリーを返せ。私は、あまり我慢がきく方ではない。命が欲しくば、今すぐに、キャリーを差し出すのだ」


 イラだった様子のGランクマスターが、怒りの炎を宿した目で、レヴォールさんを睨みつける。今にも殴り掛かりそうな殺気を放ち、威嚇しています。

 でも、そんなGランクマスターの傍には、赤狼が立っている。レヴォールさんに痛みつけられた後にも関わらず、レヴォールさんを守るために立ち上がり、Gランクマスターの動きを警戒をしているのだ。

 レヴォールさんが余裕を見せているのは、たぶん赤狼というカードがあるからだ。赤狼のレベルは、確かにずば抜けているからね。その力に、絶対の信頼を置いているんだと思う。しかも、そんな高レベルの赤狼は、彼の奴隷のようだから、裏切る心配もない。


「……なるほど。そういう訳ですか」


 ユウリちゃんが、静かに呟きました。その目は冷たく、レヴォールさんを睨みつけている。


「ど、どういう事?」

「つまり、レイラさんを売ってくれないのなら、代わりにキャリーちゃんをいただくと言いたいんですよ、この男は」

「なに……!?」


 ユウリちゃんの解説に、Gランクマスターは驚き、レヴォールさんは笑顔で頷いた。


「話が早くて、助かります。薄汚い奴隷の割に、それなりの知恵があるようだ」

「むぅ」


 ユウリちゃんを薄汚い奴隷と言われて、ボクはちょっと、不機嫌になります。


「キャリーちゃんは、ここにいるんですか?」

「さぁ。私には、分かりかねます。いるかもしれませんし、いないかもしれません。ですが、無事に返ってくるかどうかは、貴方の返答次第という事になりますね。正直に言うと、私は待つのが嫌いです。アレが育ち、母親に似る頃まで待つ……それには、最低でも数年を要しますからね。できれば今すぐに、現物が欲しいんですよ」

「どうして、そこまでレイラさんに拘るんです?貴方なら、いくらでも奴隷が手に入るでしょう」

「レイラ・ガレア……。アレは、美しい。町中で偶然見かけたとき、一目惚れしてしまいました。こんな経験、初めてでしたよ。子供の時、たまたま見かけた玩具がどうしても欲しくなり、親に駄々をこね、地面を転げ回ってでも、手に入れたくなった時のような気持ちです。ですが、力で攫うのには、失敗しました。でも、何がどうあっても、欲しい。アレが、どうしても!手に入れたら時間をかけ、じっくりと壊して、遊んで、最後は……ああ、どうしよう。最後は、最後は……楽しみで、たまりません!」


 レヴォールさんは、そう語るにつれて、様子がおかしくなっていった。途中から、瞳孔を開き、涎を撒き散らし、熱くなり、狂っていく。コレが、素のレヴォールさんの姿だ。

 一目惚れをしたのなら、まずは話しかけて、仲良くなって……そういう考えは、最初から全くないようだ。基本的に、女の人を玩具としか見ていないから、そういう考えが浮かばないのだろう。


「一応、警告しておきます。貴方のような人間を、私は何人か知っています。女性を玩具としか見ておらず、自分勝手に欲望をぶつけ、面白がる。ハッキリ言って、心の底から軽蔑する類の人種です。そんな彼らは、全員死にました。自らの行いのせいで、ある人の怒りを買ったんです」


 ユウリちゃんの目は、暗闇に染まっていた。ボクは、そんなユウリちゃんの手を強く握り、ボクの気持ちを伝えます。それを応援するように、反対側のレンさんも、ボクの手を強く握ってきてくれた。


「私も、死ぬと?貴女が、殺すのですか?」

「それは、分かりません。なにぶん、私のご主人様はお優しいので……個人的にはそうしたい所なのですが、ご主人様次第といった所です」


 ユウリちゃんが、ため息を吐きながら、ボクの腕に、再び思いきり抱き着いてきました。そんな、ユウリちゃんの体が、ちょっと震えてる……?


「ご忠告、ありがとうございます。それで、Gランクマスター。返事は、どうでしょう」

「……」


 Gランクマスターは、黙り込んでしまった。もしかして、迷っているんじゃないかと思ったけど、違った。歯を食いしばり、盛り上がった筋肉からは湯気が出始めて、膨張している。そして、レヴォールさんを睨みつけるその目は、理性を失った獣の物のようだった。


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