悲鳴
ボク達が、急いで駆け付けたのはラメダさんの奴隷商館だ。お店の中に入ると、色々な奴隷が、悲壮な表情を浮かべて、檻にいれられたり、枷で繋がれたりしている。お店の中には、そんな奴隷の品定めをしている人が、数人いるようだ。
ボク達が用があるのは、この奴隷商館の主である、ラメダさんだ。お店の中を突っ切って、奥へと行こうとした時、ボクの服を掴んでくる人がいた。
「……レンさん?」
「ご、ごめんなさい、ネモ様。私、奴隷商館って、苦手なんです」
目を伏せて、気分が悪そうなレンさんが、犯人でした。
「……奴隷」
イリスと手を繋いでいるロガフィさんも、ふとそんな事を呟いた。相変わらず無表情だけど、優しいロガフィさんには、ちょっと刺激が強すぎたかもしれない。
「レンさんと、ロガフィさんとイリスは、外で待っていてください」
それを見かねたユウリちゃんが、そう言った。
「そ、そうだね。イリス。いいよね」
「はぁ……。分かりました。ほら、レン。行きますよ」
イリスが、ロガフィさんとは繋いでいない方の手で、レンさんの手を掴んで、連れていく。
ボクの服から離れるレンさんの手が、ちょっと名残惜しそうだったのが、とても印象的でした。
「大丈夫、なのか?」
「あちらは、心配無用です」
Gランクマスターが、心配そうにそんな3人を見ているけど、ユウリちゃんの言う通り。心配はいらない。イリスが上手い事言ってくれるだろうし、ロガフィさんは強いので、何かあっても2人を守ってくれるはずだ。
「あら?貴方たちはたしかー」
そこへ、店員さんが、ボク達に話しかけてきた。この間延びした語尾には、聞き覚えがある。
スーツに、膝元まで隠れたタイトスカートという、いかにも仕事ができそうな、女の人。種族は人で、その首には重厚な首枷が装着されている。奴隷、なんだろうけど、凄くキレイな身なりだ。茶色の髪はサラサラだし、顔には化粧も、施されているようだ。
「前に、イリス……エルフの女の子を買ったときに、お世話になりましたよね」
「あ、はいー。その節は、どうもー」
さすがは、ユウリちゃん。女の子の事は、忘れない。向こうも向こうで、ボク達の事を覚えていてくれたようだ。
「それで、本日はどういうご用件でしょうかー」
「ラメダさんに、用事があってきました。いるなら、会わせてもらえないでしょうか」
「あー、いるには、いるんですがー……」
歯切れの悪そうな、奴隷の店員さんに、ボク達は首を傾げる。
「まー、お二人なら、別にいっかー」
「……」
そう言いながら、Gランクマスターを見た。大きくて目立つのに、今その存在に気づいたのかな。
「……こちらは?」
「じ、Gランクマスターだ」
「んー……こちらの方は、ダメですー。代わりに、お楽しみ部屋でくつろいでもらいましょうー。みなさーん。お楽しみ部屋に、お一人ご案内ですー」
「はーい!」
奴隷の店員さんの掛け声に、数人の店員さんが集まってきて、Gランクマスターを囲った。その腕や体に妖艶にまとわりついた彼女たちは、そのままGランクマスターお店の奥へと誘っていく。
その様子が、あまりにも刺激的で、ボクは思わず目を逸らしてしまいました。
「ま、待て、私には妻子がいてだな……!」
「いいの、そんなの」
「関係ない、関係ない。私たちとは、身体だけの関係なんだから、気にしないの」
「そうですよー。そのたくましい腕や、ココで、欲望の限りをぶつけてください」
「いや、そういう訳には、いかな……変な所を触るな!」
女の子に対して、その強すぎる力を発揮する訳にもいかない。Gランクマスターは、心ばかりの抵抗をみせるも、あえなく連れていかれました。
「……よく、あんなのにくっつけますね。信じられません」
ユウリちゃんが、ボクの腕を強く抱きしめてくっついてきて、そう呟きました。
「さぁさぁ。お二人は、こちらへどうぞー」
Gランクマスターが連れられて行った方とは、別の通路に、奴隷の店員さんが先導して、通してくれた。そして、通っていく道は、前にラメダさんに会いに来た時と、同じ道筋だね。うろ覚えだけど、そうかそうじゃないかくらいは、分かります。
「つきましたー」
奴隷の店員さんが、一つの扉の前で止まると、その扉をノックします。
「ひいぃ!?」
ただの、ノックです。遠慮がちで、小さな、可愛らしい。それだけなのに、扉の中の部屋からは、ラメダさんらしからぬ悲鳴が聞こえてきました。




