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成長


 服屋さんに入ったボク達は、出迎えたたくさんの服に、圧倒された。店内はただでさえあまり広くないのに、服のせいで更に狭くなって、人が一人、ようやく通れるだけの道しかない。


「こんにちはー、アジェットさんいますかー?」

「……」


 ユウリちゃんが、お店の中に声をかけるけど、返事がない。どうやら、留守みたい?お店をほったらかしで?ちょっと、不思議です。


「たぶん、すぐに戻ってくると思います。服を適当に選んで、似合いそうな物を試着させてもらいましょう」

「そうですね」

「私は、適当にその辺に座っています」


 イリスは、小さいことを活かし、狭い空間をなんなくすり抜けて、会計用のカウンターの奥へと入っていくと、そこに置いてあったイスに腰かけた。


「……」

「ロガフィさんは、こっちです」


 そんなイリスを追いかけようとしたロガフィさんを、ユウリちゃんが止めた。腕を引っ張り、連れていかれました。そのユウリちゃんの目は、怪しく光り輝いています。たぶん、色々と触られて変なことをされちゃうと思うけど、我慢してください。大丈夫。行き過ぎたと判断したら、ボクが止めるので。

 さて。残ったボクは、適当にその辺の服に手をかけてみます。


「うわ……」


 自分では、女の子になってから、女の子の服を選んだことないけど、なんか恥ずかしい。適当に手にとったコレなんて、背中が大胆に出てるし、こっちは胸が凄くはだけている。こっちなんて、お尻がほとんど見えちゃってるような、ミニスカートだ。


「貴方のような貧相な体じゃ、そんな服似合いませんよ」


 そんな様子を、カウンターの奥から見守っていたイリスが、そう言ってきた。

 分かってるよ。見てるだけだもん。それに、今のイリスに、そんな事は言われたくない。イリスのほうがチビで、胸も……いや、胸はそんなに変わらないけど……とにかく貧相です。


「ボク達もちゃんと、成長するのかな……?」

「は?」


 ボクは、自分の胸を見て、そんな事を思った。だって、全然大きくなったりしてないから。成長の気配が見えないんだよね。いや、男だった勇者の頃も、あんまり成長しなかったけど、女の子ってどうなのかわからないから、不安になってしまった。


「するに決まってるでしょう。貴方の体は、ただ女に変化しただけですから。貴方が女として生まれていたら、今の状態になっていたと考えてください。その他基本的には、男だった時とあまり変わりません」


 そう考えると、今の方が背が高くて、成長している気がしてきて、なんだか複雑な気持ちです。男の時より、女の子の方が背が高く、たくましく思えます。


「じゃあ、イリスは?」

「私は……女神の力を奪われ、成熟する前の姿にされた上で、エルフに種族を変化させられた姿ですね。エルフは非常に成長が遅いので、恐らくはあと百年はこの姿のままです……」

「そ、そうなんだ……」


 後半は元気なく俯いて呟いたイリスに、かける言葉もありません。でも、イリスは今のままで十分可愛いから、それはそれで良いと思います。

 それにしても、ちゃんと成長はするんだね。ちょっとだけ、安心しました。という事は、ボクもいつか胸が大きくなって、こういう胸が大胆に開いた服も、似合う女の子になったりするのかな。こういう服を着て、大胆なポーズをしてみたり……想像して、ちょっと恥ずかしくなってきました。


「言っておきますが、現段階では絶望的にありえない事を想像するのは、むなしくなるだけですよ」

「わ、分かってるよ。というか、想像なんて別にしてないし」

「そうですか。てっきり、胸が大きくなった自分の姿でも想像して、やらしい事でも考えてるのかと思ったんですが、思い違いだったようですね」


 考えてましたよ。なんでそんなに分かるのさ。ボクは、心の中で文句を言いながら、手に持っていた服を元の場所へと戻した。


「さぁーロガフィさん、ぬぎぬぎしましょうねー」

「まずは、こちらのちょっと大胆な、レザーの服なんてどうでしょう」

「いいですね!」


 はしゃぐ、ユウリちゃんとレンさんの声が聞こえてくる。レンさんまでノリノリで、ロガフィさんを着替えさせるつもりのようだ。

 でも、いったいどんな服なのだろう。気になる。


「ぼ、ボク、ちょっと様子を見てくるね」

「……」


 そう言ったボクを見るイリスは、ボクの本心を見破っているみたいで、ジトっとした目で見てきた。でも、気になるので気にしません。ボクは、ロガフィさんの姿を拝めるため、服の道をかきわけて、そちらの方へと向かいます。


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