作戦
姿を現したレンさんの服装は、ボク達とお揃いの、白のワンピースだった。それも、一回り小さな物で、身体のラインがくっくりだし、下は少しめくれただけで下着が見えてしまいそうなほど、短い。
それに、お風呂上りのせいで身体が蒸れていて、肌は赤く染まっているのが、また色っぽい。
「どうですか、お姉さま。私の予備を着てもらったんですけど、似合ってるでしょう?」
自慢げに言ってくるユウリちゃんも、白のワンピース姿だ。全員お揃いなんだけど、レンさんだけ凄い事になっている。
「に、似合ってるけど……」
正直、たまりません。ただでさえ色っぽいのに、こんな格好、反則です。ボクが男だったら、こんなレンさんの姿を前にしたら、耐えられない。きっと、襲ってしまうだろう。
……見栄を張ったけど、そんな度胸、ボクにはありません。忘れてください。
「それじゃあ、少し髪の毛のお手入れをして、それから眠りましょうか」
「はい」
皆で髪の毛を櫛でとかしあい、髪の毛が乾くのを待ってから、眠ることになった。その時間はあっという間で、ボクは色っぽい服装のレンさんを前に、心を落ちつかせる暇もない。すぐに、その時は訪れた。
「それでは、お姉さま。どうぞ」
「う、うん……」
部屋の灯りを消して、薄暗い中、ボクはユウリちゃんに促されて、布団の中に入る。ベッドの真ん中。いつもの場所に、仰向けに横になると、左右でボクを見下ろしている二人の熱い視線が、突き刺さる。
「はぁはぁ。お姉さま……可愛いおっぱい」
「はぁはぁ。太もも、ちょっとめくれて、見えています。すべすべで、柔らかそう」
息を荒くしている2人に、早くも不安が強くなってくる。ボクは、助けを求めるように、寝室を出て行こうとするイリスに目を向けるけど、怪しく笑って返されてしまった。
「それでは、私は隣の部屋で寝ますので、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい、イリスさん」
イリスはそう言って、本当に部屋を出て行ってしまった。
「さて……では、失礼して」
まず、ボクの隣に横になってきたのは、ユウリちゃんだ。隣で横になると、いつも通り身体を寄せてきて、ボクの腕を抱き、手を脚で挟んでくる。顎は、ボクの肩に乗せられて、ユウリちゃんの暖かな息が、ボクの頬にかかる。
完全に密着した状態で、ユウリちゃんのボクよりも大きな胸が、腕に押し当てられている。それに、いつも通り凄く良い香りで、その香りがボクを安心させてくれる。
「レンさんも、どうぞ」
「では、失礼します」
しかし、今日に限って安心させてくれる作用は、少ない。
ベッドに体重をかけてきたレンさんに、ボクの心臓は跳ね上がった。五月蝿いくらいに心臓が鳴っている。もしかしたら、レンさんとユウリちゃんにも、心臓の音が聞こえているのかもしれないと思うくらいだ。
目を閉じて、何も見ないようにするけど、布が擦れる音が逆に色っぽく聞こえてしまい、落ち着かない。
そう思い、目を開いたら、すぐ横にレンさんの胸が迫っていた。丁度、身体を寄せてきた所のようで、目の前にそれがあるタイミングで、開いてしまったのだ。
「えいっ」
「ひゃ」
そんなレンさんの胸が、ボクの腕に押し当てられた。柔らかい。すごく、柔らかい。というか、この感触……もしかして、下に何もつけてない?ということは、レンさんの胸を隠しているのは、薄いワンピースの生地だけという事になる。そんなの、ほぼ全裸みたいな物じゃないか。
ボクの心臓は、更に鼓動を強め、大きな音を鳴らす。
そんなのお構いなしに、レンさんもボクの手を脚で挟んできて、2人に両手を塞がれた。更に、レンが手を、ボクの胸の上に乗せてくる。
「心臓が、凄く鳴っています。ネモ様、緊張しているのですか……?」
「っ……!」
尋ねて来たレンさんの息が、ボクの耳を撫でてきた。
その問いに答える余裕は、ボクにはない。レンさんから送られてくる感触が、凄すぎてたまらない。しかし、反対側のユウリちゃんに意識を集中させる事も、できない。レンさんに触発されて、慣れているはずのユウリちゃんですら、色っぽく感じるからだ。
「大丈夫ですよ、お姉さま。緊張しないで、リラックス……」
「ひゃふ!?」
ユウリちゃんの手が、ボクの太もも撫でてきて、変な声を出してしまった。
「そうですよ、ネモ様。力を抜きましょう。ね?」
「ひぅ!」
今度は、レンさんからの、耳への息攻撃だ。息を吹きかれられて、くすぐったいような、気持ち良いような……。くわえて、胸に置かれたレンさんの手が、ボクの胸を軽くなでなでしてくる。
「ネモ様……」
「お姉さま……」
そんな状態で、2人息を合わせて両耳から囁かれると、もうたまらない。全身が熱くなり、頭が沸騰して沸きあがりそう。
「ぐぅ……ぐぅ……」
「あ、あれ?」
心地良さそうな寝息が聞こえ、横を向くと、レンさんが眠っていた。その寝顔は、とても幸せそうで、ニコやかだ。
「レンさん……?ね、寝ちゃったんですか?」
「そ、そうみたい……」
ユウリちゃんと一緒に、レンさんの顔を覗き込むようにして見て、レンさんの突然の睡眠に、戸惑いを隠せない。だって、さっきまで、ボクは襲われる雰囲気だったのに、コレだもん。そりゃ、戸惑うよ。
それにしても、凄く可愛い寝顔だ。あまりに幸せそうな寝顔に、思わず微笑んでしまう。そんなレンさんの寝顔を見て、急激に色々な熱が冷めていくのを、感じる。ただ、密着したレンさんの身体はやっぱり凄くて、色々と柔らかくて凄いです。
「もう。せっかく、お風呂でお姉さまを篭絡する作戦をたてたのに、台無しじゃないですか」
「作戦?ユウリちゃん、その話をちょっと詳しく」
「あ。い、いえ。そんなお姉様のお耳にいれるようなお話では……」
「さっきのは、ユウリちゃんとレンさんが考えた、作戦だったんだね?」
「え、えと……」
「ユウリちゃん?」
「……はい。二人で、お姉さまに色々とやっちゃおうと思ってました」
この子は、本当に恐ろしいです。油断したら、すぐにこういう事をしようとしてくる。レンさんもレンさんで、こんな事に乗ったらダメだよ。
「ぐぅ……」
……でも、悪戯っぽく笑うユウリちゃんは可愛いし、レンさんの寝顔も可愛いから、許してあげる事にします。




