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漆黒の調教師


 レイラさんに、頬にキスをされたユウリちゃんは、そのままレイラさんに抱きしめられ、頭をなでなでとされ始める。その豊満な胸に包まれながらのなでなでは、凄く気持ち良さそうです。


「よしよし。ユウリさんは甘えん坊さんで、可愛いですね。いっぱい甘えていいですよ」


 レイラさんの様子から察するに、ユウリちゃんをどうにかするつもりは全く感じられない。ユウリちゃんやメイヤさんが同じ事をしたら、それは己の欲を解消するための行動だけど、レイラさんはそうじゃない。

 そう。コレは、母性だ。年上の女の人が、ユウリちゃんを甘えさせてあやしている、とても神聖な儀式である。そこに、邪な心など存在しない。その母性を受け止めているユウリちゃんも、穢れた心を浄化され……ていなかった。

 ユウリちゃんは、レイラさんの胸を、下卑た表情を浮かべて堪能している。

 でも、ちょっと羨ましい。ボクも、あんな風にレイラさんに甘えてみたい。


「羨ましいとか、思っているでしょう」

「お、おも、思ってないよ……」

「無理しないでください。顔に出ていますよ。でも別に、隠す必要もないです。そう感じるのなら、やはり貴方はノーマルだと言う事で、安心できます。押し倒して、欲望のまま犯してしまってはどうですか」

「……」


 おじさんが、こちらを見ている。幼女とは思えないような発言に、イリスに対する怒りよりも、信じられないと言う顔をしている。


「ユウリお姉ちゃん、ママに甘えて赤ちゃんみたい。私もしたい!」


 そんなユウリちゃんとレイラさんに気付いたキャリーちゃんが、2人に駆け寄って行って、レイラさんに向かってダイブ。その胸に飛び込んで、隣にずれてくれたユウリちゃんと一緒に、レイラさんの胸の中に捕らわれた。

 レイラさんは、困った顔をしながらも、2人の頭をなでなで。

 ユウリちゃんは、更にもう1人の女の子と密着する形となり、先ほどよりも更に幸せそうな顔をしている。


「……私だって、元に戻ったら……いえ、この身体も、成長する可能性だって……」


 イリスがそう呟いたけど、ボクは、イリスは今のままがいいと思うな。イリスティリア様の姿のイリスも、そりゃあ凄く魅力的だけど……もう、イリスはイリスのままでいいと思います。

 だって、今のままで十分可愛いから。





 その後、ユウリちゃんをレイラさんから引き剥がすと、ボク達は、キャリーちゃんとレイラさんを家に送ってから、おじさんと一緒に、本来の目的である買出しへと出かけた。


「はぁ……レイラさん、とてもいいです。こんな筋肉と結婚していなければ、もっと良かったのに。女の子の良さをその体に刻み付けて、男では満足できないようにして私がいただきたいくらいです。でも、あんなに可憐で可愛らしい方なのに、男に穢されているんですよね……しかも、相手はこんな筋肉……最悪です……」

「でも、いいですね、それ。その時の筋肉の顔を、見てみたいです。妻にも娘にも見捨てられ、路頭に迷った筋肉はどうするんでしょう」

「……」


 先導して歩いている筋肉……じゃなくて、おじさんに聞こえるくらいの声量で、ユウリちゃんとイリスはそんな会話を繰り広げている。

 おじさんの後頭部には、血管が浮き出ていて、イラっとしている様子がよく分かるんだけど、聞こえないフリをしているみたい。

 イリスだけがこんな事を言っていたのなら、すぐに突っかかってくると思うけど、どうやらおじさんは、ユウリちゃんに対して遠慮しているようだ。

 あの時の、ユウリちゃんの冷たい態度が、余程堪えているらしい。


「ところで、その安くお野菜を売ってくれるというお店は、どこですか?まさかと思いますが、私達に対して発情して、変なところに連れて行くつもりではないですよね?」


 ユウリちゃんの発言に、周囲の人の目が、こちらを向いた。ここは、人通りの多い通りの真ん中だ。そんな発言をしたら、注目を浴びてしまうのも無理はない。特に、ボク達を先導しているおじさんはそういう風に見える風貌だから、周囲の目は尚更厳しい物になる。


「頼むから、少しでいいから、オレの体裁ってヤツを考えてもらえないかなぁ?」


 おじさんが、振り返ってそう訴えかけてきた。額には血管が浮かび上がっていて、怒りを必死に抑制している様子が伝わってくる。


「はいはい。いいから、ちゃんと前を見て歩いてください」

「……おい、あれ。モンスター使いの、漆黒の調教師だ」

「はぁ?あの女の子が、噂の?冗談だろ?」

「間違いない。オレは、この目で見てるんだ。アイツが、嘘みたいに強いモンスターを意のままに操って、戦っている所をな」

「つーことは……あの大男も、もしかして調教されてるのか……?」

「ああ、間違いない。あの目を見てみろ。相当すげぇ事されてるぞ……」


 周囲の人ごみから、そんな会話が聞こえてきた。彼等は、ボク達の方を見てそんな事を話していて、漆黒の調教師とは、ユウリちゃんの事を指しているみたい。先日の騒ぎから、ぎゅーちゃんの事は周知されていて、そのぎゅーちゃんを調教したのはユウリちゃんという事になってしまっているので、彼等がそれを知っていても、不思議ではない。だけど、漆黒の調教師って……そんなの、初めて聞いたけど、どうやらそんなあだ名が広まっているようだ。


「す、少し急ぐぞ!ついて来い!」


 そんな注目を振り払うように、おじさんは早足で歩き出した。ボク達は慌てて後を追うけど、おじさんは背が高くて目立つので、はぐれる事はなさそうです。

 そこからまたしばらく歩いて、おじさんは一件のお店の前で立ち止まった。通りに並んだ出店の中の一店で、おじさんのお店とは立地条件が全然違う。おじさんのお店は、通りの中でもお家の前に出された出店で、周囲のお家の人くらいしか訪れない寂れたお店なんだけど、こちらはそれ以外の人たちも訪れるような、大きなお店だ。大きなテントの下で、所狭しと野菜が立ち並んでいて、目移りしてしまう。


「よう、グレイル!」

「……アルフか。相変わらず、声がでけぇ男だ」


 おじさんが話しかけたのは、お店のテントの下でイスに座ってタバコをくわえている、こちらもおじさんだ。エプロン姿のおじさんで、こちらはそれほど大きくなく、筋肉もあまりない。年は……40歳くらい?髪が少し薄くて、オデコがとても広い。それ以外は、至って普通のおじさんだ。


「それで?ライバル店に、何の用だ?まさか、家の野菜を買いに来た訳じゃねぇだろうな」

「オレじゃなくて、こいつらに、安く野菜を売ってやってほしい」

「……まさかと思うが、隠し子じゃねぇだろうな?」

「ちげぇよ。どうして、どいつもこいつも、オレを悪人に仕立て上げようとすんだ……」


 そういう顔だから、仕方ないと思います。でも、隠し子というのは、ボク達に対しても失礼だ。だって、ボク達とおじさんは、全く似てないもの。


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