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二人目の奴隷ができました


「あ、あれ?」


 一旦は怪しくニヤリと笑ったラメダさんが、慌て始めた。すると、今しがたボクが名前を書いた契約書が、突然発火して、あっという間に燃え尽きてしまった。

 それを、ラメダさんは手に持って呆然と見守っていたけど、熱くなかったのか?


「なっ……」

「……?」


 ボクとユウリちゃんは、何が起こったのかわからず、並んで首を傾げる。


「あ、あはは。えーと……契約は、成立したから……ちゃんと、お金返してね」


 ラメダさんの様子が、明らかにおかしい。何かを隠しているというか、慌てているというか……。


「今、契約書が燃えた気がしましたけど」


 と、ユウリちゃんが尋ねた。


「そ、そうだね。でも、なくても問題はないわ。だって、私達はもう、約束をした訳でしょ?約束って、大事よね。ちゃんと、守らないといけないわ」

「はぁ。でも、今何かしようとしてませんでした?」

「してないわよー。ユウリちゃんってば、適当な事ばっかり言ってー。変な事ばかり言ってると、ぶっ殺すわよ?そんな事より、エルフの子を、連れて行っていいわよ。今呼ぶから」

「ぶ、ぶっころ……」


 ラメダさんはそう言うと、部屋の扉を開けて大きな声で人を呼んだ。すぐに人が来て、イリスティリア様を連れてくるように頼んでから、数分。イリスティリア様が、首輪に繋がれて連れて来られた。その口には、相変わらず口枷が嵌められている上に、手は後ろ手に縛られている。服装は、ボクがこの世界に来て最初に着ていたような、布と布を張り合わせて紐で繋げたような、簡単な奴隷らしい服装。ただ、その服の布はキレイで、清潔だ。

 そんなイリスティリア様は、最初は首輪のリードを引っ張る従業員さんを、ゲシゲシと蹴っていたが、ボクの姿を見てその目の色を変えた。


「んんー!」


 ただ、ボクを見るイリスティリア様の目は、相変わらず怖い。憎悪で、ボクを射殺さんとばかりに、睨みつけている。


「解放する前に、奴隷紋の所有者を、貴女に設定するわね」


 ラメダさんがそう言うと、従業員さんがイリスティリア様を背後から羽交い絞めにし、動けないように固定。ラメダさんは、そんなイリスティリア様の服をめくり、お腹を露出させると、奴隷紋を露出させて、そこに手をかざした。

 そこにあった奴隷紋は、ユウリちゃんの物と違って、羽根がないハートの紋様だった。それが、輝き始める。


「んー!んんー!」


 イリスティリア様が、暴れて抵抗するけど、大した力にはならない。ラメダさんは、構わずに、怪しげな液体を、イリスティリア様のお腹にかけた。


「ネモちゃん。私の手の上に、手を」


 それは、ユウリちゃんを奴隷にした時と、同じだ。ボクは、言われたとおりに、手を重ねる。すると、ハートの周りに、羽根が現れた始めた。


「んー!んー!んうぅぅぅ!」


 イリスティリア様の抵抗が激しくなるけど、浮かび上がった奴隷紋は、少しして完全に定着。ユウリちゃんの物と同じ物となり、ラメダさんは手を離した。それと同時に、羽交い絞めにしていた従業員の人も、イリスティリア様から手を離す。


「はい。奴隷ちゃんのできあがり。二人目の奴隷ちゃん、おめでとう」


 ラメダさんはそう言いながら、イリスティリア様の口枷を外した。


「クソ勇者ああぁぁぁぁ!私を奴隷なんかにしやがって、絶対に許さない!殺してやる!拘束をとけ!今すぐに殺す!殺して、細切れにしてやる!」

「ひぃ」


 ボクは、ユウリちゃんの後ろに隠れて耳を塞ぐ。イリスティリア様は、相変わらずの迫力だ。何で、こんな人を助けようとしていたのか、分からなくなってしまうよ。

 あ、そうだ。


「イリスティリア様、何も喋っちゃダメ、です!」

「~~~~!」


 奴隷紋に命じたその瞬間、イリスティリア様の声が聞こえなくなった。様子を見ると、何かを怒鳴っているようだけど、何も声が出ていない。

 ボクは、安心してユウリちゃんの影から出た。


「あはは。必死に口パクパクしてて、金魚みたい」


 イリスティリア様が怒って殴りかかってこようとするけど、拘束されている上に、従業員さんに止められて、それは叶わない。これなら、全然怖くないよ。……目は怖いけど。


「……お姉さまって、たまに素でSですよね。そんな所が最高です」


 ユウリちゃんに、そんな事を言われてしまった。


「ところで、そのイリスティリア様って、止めたほうがいいよ。イリスティリア様の名前は、簡単に使っていい名前じゃない。そもそも、奴隷に様付けは、ダメ。ネモちゃんがご主人様なんだから」

「は、はい……でもどうすれば」

「好きな名前をつけてあげなさい」


 と、急にそんな事を言われてもなぁ。うーん……エルフで金髪で、目が怖いから……


「エルフキンパツメガコワイ、とかどうかな?」

「……」

「……」


 その場に、なんとも言えない空気が流れました。


「じゃ、じゃあ、メガコワイキンパツエルフ!とか……?」

「……」

「……」


 更に、空気が悪くなった。これ以上に良い名前なんて、ないと思うんだけど、変だったかな?名前って、特徴を取ってつけるものだよね?クロとか、シロとか。あれ……でもボクの名前のネモって、なんだろう。ラメダさんは?ユウリちゃんも。何か、特徴を取ってつけられた名前なのかな?そもそも、生まれたその瞬間にその人の特徴って分かるの?深く考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく。ボクの頭の中は、宇宙。無限に広がっていく、黒い空間。星々が煌々と輝き、暗闇に光を作っている。星の上で、タコさんみたいな灰色の宇宙人が手を振っている。ボクは、それに手を振り返した。


「ちょっと長すぎるので、キンパツを並び替えて、パンツでいいんじゃないですか?」


 耳を小指で穿りながら言ったユウリちゃんの発案は、ボクを宇宙から引っ張り出してくれた。


「それだ!」

「いや、それだじゃない。ネモちゃんは素かもしれないけど、ユウリちゃんはわざとでしょ」

「てへ」


 イタズラっぽく笑うユウリちゃんは、可愛かったです。

 それにしても、素とか、わざととか、なんだろう。いい名前だと思うんだけどなぁ……。

 ボクは再び、宇宙に戻った。


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