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報酬を要求します


 ボクの行動に反応した帽子の5人組が、一斉に、懐に差した剣を抜き、それを構えた。まぁ、1人は地面に転がってるから、そうしたのは4人だけどね。


「我々は、そちらの女性に用事がある。邪魔立てすると言うのなら、貴方達にもご同行願うことになります」

「私ですか……?」


 そう脅されて、レイラさんは戸惑いながら答えた。剣を向けられて、レイラさんが怖がってしまっているじゃないか。それがちょっと可愛くて、守ってあげたくなってしまう。

 一方で、チンピラの方も怖がって小太りの男の人の影に隠れているけど、全く可愛くない。なのに、どうしてボクはこんな人たちを助けに入ってしまったのだろうか。


「レイラさん。彼等と、お知り合いですか?」

「……いいえ。見覚えがありません」

「レイラさんは、こう言っています。知り合いでもなんでもない貴方達に、レイラさんを引き渡す訳にはいきません。そもそもですが、いきなり吹き矢で攻撃を仕掛けてくるような人に、渡すはずもありませんけどね」

「……」


 ユウリちゃんの返答に、帽子の人達は、一斉にボク達に向かって襲い掛かってきた。上から、2人。それは、ボク達を飛び越えて、背後を取るつもりのようだ。残りの2人は、正面から来る。


「っ……!」


 正面から来る2人には、ユウリちゃんが対応した。立ちはだかるユウリちゃんに、2人がかりで襲い掛かってくるんだけど、ユウリちゃんはそれに、余裕で対処する。1人目は、ユウリちゃんに向かって回転蹴りを繰り出してきたんだけど、ユウリちゃんはそれを、手で軽く受け流すと、蹴りを繰り出して来た人の背中を押して、バランスを崩させる。その崩れた方向には、もう1人の方がいて、それとぶつかる事になり、避けることも叶わずに、男同士で抱き合って動きが止まる。

 そこへ、ユウリちゃんが足払いを繰り出すと、2人共地面に倒れる事になった。


「がっはっ!」


 直後に、ユウリちゃんが倒れた1人に向かって、自分の体重を乗せた肘落としを繰り出すと、胃液を吐いて、動かなくなりました。それは、先程の3人組の1人に繰り出した、拳よりも重い一撃でした。凄く、痛そうで、苦しそう。

 もう1人は、すぐに立ち上がると、肘落としで地面に倒れこんだユウリちゃんに向けて、剣を振り下ろしてきた。

 最初は、使う気がないのかと思ったけど、ユウリちゃんが格上と判断したのか、武器を使う方向に変えたみたい。

 良い判断かもしれないけど、そんな中途半端で遅くて弱弱しい剣じゃ、今のユウリちゃんに掠りもしない。ユウリちゃんは地面を叩いて素早く起き上がって剣を回避。直後に、攻撃を避けられたことによって隙のできたその人の顔面に向かって、今度はユウリちゃんが回し蹴りを繰り出し、見事に命中。

 彼は鼻血を吹き出して、地面に膝をつきました。


「私は、ユウリが強くなるのを見ていると、凄く不安になるんです。というか、あの子はどうして、どんどん強くなっていくんですか。おかしいでしょう」

「う、うん。どうしてなんだろうね」


 未だに腕に抱いたままのイリスとボクは、同じ不安を抱いていた。このままユウリちゃんがどんどん強くなっていったら、いつかボクよりも強くなって、抵抗できなくなって、色々な事をされちゃうかもしれない。ユウリちゃんは変態だから、きっとそうなってしまうだろう。


「くっ……」


 ちなみに、ボク達の上を通り越して、背後を取ろうとした2人組みの方は、ボクがやっつけた。2人の着地のタイミングを見はかり、2人まとめて蹴り飛ばして建物の壁に激突。仲良く重なって、倒れている。


「ところで、いい加減降ろしてください。抱いたまま戦われると、さすがに酔います。吐きますよ?いいんですか?」

「わ、ご、ごめんね、イリス……」


 吐かれるのは嫌なので、ボクは慌ててイリスを降ろした。本当にちょっと気持ち悪そうで、顔を青くしているので、ボクはそんなイリスの背中をさすってあげる。


「す、凄い……」


 レイラさんが、そんなボクとユウリちゃんの活躍を目の前にして、呆然と呟いた。


「貴様達……我々に手をだして、タダで済むと思うなよ……」


 ユウリちゃんに顔を蹴られて、地面に膝をついている帽子の人が、負け惜しみとも取れるような台詞を言っている。正直いって、ちょっとカッコ悪い。完全にボク達の勝ちなのに、そりゃないよ。


「一応警告しておきますが、まだやる気なら、容赦しませんよ。私はお姉さまと違って、優しくないですし、短気で怒りっぽい性格なんです。次は思わず殺してしまうかも……」


 ユウリちゃんは、殺気をこめてそう言った。可憐な少女の、たったそれだけの言葉に、大の大人達が震えあがる。ユウリちゃんは、本気だ。悪い事は言わないから、素直に逃げた方が、身のためだよ。


「……」


 すると、帽子の男の人達の1人が、片手を挙げて、拳を作った。それを見た彼等は、行動を起こす。気絶した人を担いで回収すると、音も無く、素早く静かに去っていった。


「それで、一体奴等は何なんですか」


 イリスがいきなり復活して、倒れた小太りの男の人を介抱する2人に、そう尋ねた。


「わ、わからねぇよ……いきなり、女を見なかったか聞かれて、態度が生意気だったから、ちょっと痛めつけてやろうとしたら、この様だ……」

「ふぅん。まぁいいです。助けてあげたんですから、報酬を要求します」

「はぁ!?ふざけんな、金なんてねぇよ!」


 助けてあげたから、お金を要求って、イリスは本当にブレないなぁ。ちなみにイリスは、何もしてないからね。


「その、女というのは、多分レイラさんの事ですよね。彼等は、最初からレイラさんだけが目的のようでしたから。レイラさん。本当に、何か見覚えはないんですか?」

「……はい」


 レイラさんは、不安げに頷いた。理由もなく狙われてるんだとしたら、不安にもなるよね。今更だけど、見逃す前に、直接聞いてみればよかった。


「ネモ。ユウリ。このゴミ達、どうやら本当にお金がないみたいです。どうします?やっちゃいます?」

「あ、あんた達には、感謝してるっ。だけど、本当に金がない。勘弁してくれ」


 2人は、必死な様子で、イリスではなく、ボクとユウリちゃんに向かって頭を下げてきた。別に、ボクはお金を取るつもりなんてないんだけど、これじゃあまるで、ボクがお金を要求してるみたいになってくる。


「お金なんていりません。早く失せて、その肉団子をお医者さんに見せてあげてください。死にはしないでしょうが、治療は必要でしょう」

「すまねぇ……本当に、ありがとう」

「この恩は、忘れない」


 2人は、小太りの男の人を2人がかりで担いで、去っていった。その目には、涙を浮かべてお礼を言われたんだけど、ちょっと待って欲しい。

 イリスと、ユウリちゃん。ゴミとか、肉団子とか、ちょっと口が悪すぎるよ。そして、感謝して去っていく3人組だけど、怒ってもいいんだからね。

 ……まぁ、怒ってきたら返り討ちにするけど。


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