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同罪です


 3人揃っての買い物は、ボクは嫌いじゃない。可愛い女の子に挟まれて、むしろ幸せだ。

 でも、人ごみには未だに慣れない。昼間の買い物は、人が多いから嫌なんだよね。特に今日は、あんまり調子が良くないみたい。大通りの、人でごった返す風景を目にしたら、吐き気がこみあげてきた。


「うぷっ」

「お姉さま!?だ、大丈夫ですか……?」


 ユウリちゃんが、口を押さえて壁に手をついたボクの背中を、心配してさすってくれる。


「う、うん。ごめんね。ちょっと、人ごみに酔ったみたい……」

「まだ、人ごみが苦手なんですか。いい加減、慣れたらどうです?それとも、考え方を変えて、ゴミがたくさんいると思ったらどうですか。私みたいに」

「私、イリスは女神じゃなくなって、良かったと思います」

「どうしてですか!?」


 それが、分からない所だよね。イリスの考えって、女神様じゃなくて、悪魔だもん。こんな素の姿を隠して、あんなに美しく優しい女神様を演じてたなんて、未だにちょっと信じられません。

 なんだか、ボクは純情な心を弄ばれてたみたいで、騙された気分なんだよね。


「とにかく、大通りはやめて、裏通りへ行きましょう」


 ユウリちゃんは、ボクの肩を支えながら、歩き出した。それに従い、ボクもフラついた足で、なんとか歩き出す。


「……」


 ユウリちゃんが支えてくれている、反対側のボクの手を、イリスが黙って肩に担ぎ、身体を支えて来てくれた。

 そのあまりに非力で、小さな身体には、あまり負担はかけられない。でも、イリスのその行動が、嬉しかった。


「ありがとう、イリス」

「……まったく、いつまで経っても世話が焼けます」


 本当に、自分よりも小さな女の子2人に担がれて、面目ない。でも、なんだか凄く心が温まって、落ち着く。

 そんな2人に担がれて、ボクは裏通りの、人通りの少ない路地に、連れられてきた。やっぱり、裏道は落ち着くなぁ。建物に囲まれて、日の光が届かない、じめじめとした地面に座り込みながら、そう思った。


「少し、顔色が良くなりましたね」

「うん。ちょっと、気持ち悪いのが治ってきたよ」

「……別に、裏道を使うなとは言いませんよ。ですが、こういった道に入ると、私達に課せられた運命的に、何が待ち受けているのか、分かっていますよね?」


 イリスは、周囲を警戒しながら、そう言った。

 分かっている。この世界に飛ばされた人は、ボクもやったことのあるエロゲ──モンスタフラッシュのキャラクターのように、凄い目に合わせられる運命にある。具体的に言えば、えっちな目に合わされる。その運命のレールの上にいる限り、ボク達は様々なハプニングに見舞われ続け、脱線してはレールに戻るという繰り返しを強いられている。

 そんなボク達が、裏の人通りの少ない、ただでさえ治安の悪そうな道に入ると、ほぼ100パーセント、知らない男の人から話しかけられる事になるのだ。


「へへ。どうしたの、君達。気分でも、悪いのかな?」


 ほら、言ったとおり、こうやって話しかけられる事になるのだ。

 見ると、3人組の男の人が、ボク達に話しかけてきていた。一人は、小太りな男で、もう一人は、筋肉質な男の人。最後にもう一人、痩せた男の人。刺青やピアスの目立つ、いかにも悪そうな3人組だった。


「あ、あれ。こいつら、なんか見覚えが……」

「……ひぃ!」


 小太りな男の人が、ボクを見て何かに気づいたようで、腰を抜かした。

 なんだろう。ボクは、覚えがないんだけど、知り合いなのかな。えーと、えーと……考えてみたけど、全く思い出せません。


「おい。あ、あの時の女だ……上等な服を着てるから、気づかなかったけど、間違いねぇ……!」

「逃げるぞ、立て!」


 筋肉の男の人が、小太りの男の人の手を引っ張って立たせると、3人とも慌てて去っていった。よく分からないけど、手を煩わされないで済んで、ラッキーです。


「きゃっ」


 そう思ったんだけど、走り去っていく男の人たちが、女の人にぶつかり、女の人が地面に転んでしまった。


「邪魔なんだよ、ババァ!」

「……」


 自分からぶつかっておいて、女の人に謝るどころか、罵る男の人たちを見て、ユウリちゃんが黙っていられる訳がなかった。

 静かに怒りを燃やすユウリちゃんが、地面を蹴ると、左右の壁を蹴って宙を飛び、男の人たちの行く先に着地した。

 ユウリちゃんの身体能力は、飛躍的に伸び続けている。そのレベルは、40を示すようになっていて、彼等のようなゴロツキでは、相手にならないと思う。


「しっ!」

「ごふっ!」


 事実、女の人にぶつかった痩せ型の男の人は、ユウリちゃんが繰り出した拳が全く見えていなかった。見事にみぞおちの辺りに命中して、男の人はその場にうずくまり、身動きしなくなってしまった。


「ひぃ!お、俺達はまだ、何もしてない!なんで、こんな酷い事をするんだ!」

「あぁ?何もしてない?酷い?よく言いますよ。話しかけたのが、私達じゃなければ、どうするつもりだったのか、教えてくれませんか?いえ、それよりも、この人は今、そちらの女性に自分からぶつかっておいて、謝罪をするどころか、何と言いました?」

「お、俺達は、してない!それは、コイツが勝手にやったことで……」

「この人の仲間だという時点で、同罪です。謝罪していただきたいのですが、でも、本人はこの通りピクピクしてるので、できそうにありません。さて、どうします?」

「──も、申し訳ありませんでしたぁ!」

「──ごめんなさい、お怪我はありませんかぁ!?」

「は、はい。大丈夫です……」


 筋肉の男の人と、小太りの男の人は、ユウリちゃんの脅しに屈した。うずくまった男の人の代わりに、女の人に土下座をして、必死の謝罪を見せる。

 そして、自然と女の人に手を伸ばして、立ち上がれるように補助しようとしたんだけど、その手をユウリちゃんがはたき、乾いた音が響いた。


「お触りは、厳禁です。謝罪したのなら、さっさと失せてください。そこのゴミも、一緒に連れて行ってくださいね」


 ユウリちゃんから、行っていいという許可を得た3人は、今度こそ去っていった。お腹にパンチをくらった男の人は、結局最後まで意識が戻らなかったみたいで、2人に肩で担がれて行きました。


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