表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/492

それは困る


 イリスは何かに気がついたように言い、アンリちゃんはボクに必死な様子で、訴えかけてくる。


「た、大変って、どうしたの……?」

「実は──」

「お、おい、幽霊だ!」

「アンデッドか!?」

「か、カワイイ……」


 アンリちゃんは、とてもよく目立つ。びゅんびゅんボクの目の前を飛んで、訴えかけてくるからね。だから、騎士達の視線を浴びることになり、辺りはパニック状態だ。五月蝿くなって、アンリちゃんの声が全く聞こえなくなってしまった。


「そんなの、どうでもいいの!皆ちょっと静かにして!」


 あのアンリちゃんが、カワイイという言葉を、どうでもいいと言い捨てた。そして静かにしろと叫ぶと、地響きがして、恐れをなした騎士達は、言葉を飲み込んで静まり返りました。

 ポルターガイスト……?ボクも、ちょっと怖くなって、思わずイリスに抱きついてしまった。


「大変なんだよ!め、メルテさんがさっき、皆の目を盗んで上に上っていったから、面白そうだからついていったんだけど、宙に浮いて光ってる大きな石に、紋章を書き込んで変な魔法を発動させようとしてるんだよ!」

「っ!?」


 そういえば、メルテさんの姿が、先ほどからずっと見えなかった。アンリちゃんじゃあるまいし、姿を消せる訳ではないので、どこかにいるとは思っていたんだけど、まさかそんな所に行っていたなんて……。


「あ、あの魔法はヤバイよ!凄くヤバイと思う!止めさせようとしたんだけど、凄い形相で睨みつけてきて、我の邪魔をするなーって怒鳴られちゃった……」

「……我?」


 我って、ズーカウの一人称と同じだよね……。なんだか、凄く嫌な予感がしてきて、背筋に悪寒が走った。


「ネモ。少し、上手くいきすぎています。あの魔族には、絶対に聖女を殺すというな気合を感じられなかった。何か別の手があるのかもしれないと考えると、その場合考えられるのは……」

「結界を張るための、魔力大結晶そのものへの工作……!」

「そ、それが壊されると、どうなるんですか?」

「結界を張れなくなります。魔力大結晶に、私が定期的に、聖女の加護により授かった力で魔力を篭める事で、結界が維持されているのです。ですが、魔力大結晶の破壊は、ほぼ不可能と言われている代物です。アレは世界のエネルギーを結晶化させた、とてつもない魔力の塊ですので……物理的にも、魔法的にも破壊する事はできません。移動させる事も、無理です。アレは、あの空間に根付いている物なので」

「方法は分かりませんが、何か破壊する方法があるのだとしたら、止めないと!ネモ!」

「ま、待って、イリス……!」


 イリスは、ボクの手を引っ張って促してくるけど、ボクには一つ、引っかかってたまらない物がある。


「メルテさんが何かを、しようとしてるって言うの……?」

「分かりませんが、可能性は高いです。それを確かめるために、急がないと取り返しのつかない事になるかもしれない」

「……もし、もしもだけど、メルテさんがズーカウに乗っ取られているのだとしたら、メルテさんはどうなっちゃうの?」

「……」


 イリスは、黙った。珍しく、ハッキリと物を言ってくれない。


「その時は、私達の手で止めるのよ」


 そう言ったのは、ネルさんだった。ユウリちゃんと、レンさんも、一緒にいる。


「違和感は、ずっとあった。メルテの言う事が、細かい所でメルテらしくなかったから……さして驚きはないわ。やっぱりなという感じよ」

「……まだ、確定した訳ではありません。ですが、私も同じく、メルテには違和感を感じていました」


 2人共、どうしてそんなに平気そうに言うの……?もし、本当にメルテさんがズーカウに乗っ取られているのだとしたら、メルテさんを倒したら、灰になって消えてなくなっちゃうんだよ?ボクは、そんなの絶対に嫌だよ。


「とにかく、急いだ方がいいよ。ボクの杞憂なら、それでいいんだけど、あのメルテさんは普通じゃなかったし、メルテさんが使おうとしてた魔法も、普通じゃないと思う」

「……ところで、何ですか、コレ。アンデッド?いえ、それにしては、魂の強さが違いますね」


 そういえば、イリスとアンリちゃんは、会った事なかったんだっけ。アンリちゃんがいる時は、いつもイリスが寝てたり、いなかったりするから、イリスが直接アンリちゃんを見たのは、コレが初めてのはず。後で話そうなんて思っていて、忘れていました。……それにしても、初めてアンリちゃんを見た割りに、リアクションが薄い。まるで、普通の人と接するかのように言うイリスは、さすがだなと思いました。


「紹介は後です!今すぐメルテさんの所へ行きましょう!」

「それは困る」


 その時感じた気配は、納豆だ。ボクは急いでストレージから剣を取り出すと、剣を構えて攻撃に備えた。


「ズーカウが、ようやくまともに成功したと思えば、また失敗か。詰めが甘いから、そうなるのだ。その尻拭いの役割が、この老体に回ってくるとは……やはり、所詮は下等な魔族。アレは使えんな」


 颯爽と歩いて現れたのは、レンさんのお父さんだ。ボクが斬りつけた傷が、左肩から胸の辺りまで残っていて、未だに血が止まっていない。それなのに関わらず、気にする素振りも見せないのは、ちょっと怖いです。


「へ、ヘンケル様……!」

「邪魔だ」


 レンさんのお父さんの行く手を塞いだ騎士を、レンさんのお父さんは何の躊躇いも無く、そのアスラ様に貰ったという細い剣で斬りつけた。のだけど、ボクがそれを受け止めた。

 ほんの挨拶代わりのような、軽い攻撃だったので、受け止めるのは容易だ。


「さ、下がっていてください……!」


 ボクが剣を受け止めている間に、周りの騎士達にそう指示をした。この人たちと、レンさんのお父さんとでは、レベルが違すぎる。近くにいられると、邪魔でしかない。

 彼等らが離れたのを見てから、ボクも一旦距離を置くことにした。


「父上!」

「レンか……よく、生きていたな。とっくに死んだ物と思っていたが、お前の従者が生きていたので、まさかとは思っていた」


 レンさんを見る、この人の目は、本当にゴミを見るような目で、正気を感じられない。たぶん、この人はレンさんですら、本当に躊躇い無く殺してしまうと思う。


「メルテの事ですか!?」

「そうだ。確か、そんな名前だったな。私の周辺を嗅ぎ回っていたいたので、捕えて驚いた。拷問してお前の情報を吐かせようとしたが、面倒になって途中で止めた。かわりに、魂を引き剥がし、ズーカウの魂を肉体にいれさせる事にしたのだ。おかげで、曖昧ながらお前達に関しての記憶も手に入れる事ができたよ」

「何故、そのような事を……!」

「何故?この世界の、全ての人たちのためだ。レンよ。この町は、この悪魔のせいで、穢れてしまったのだ。アスラ様は、それを憂い、心配していらっしゃる。だから、私が何とかしなければ……私が、この悪魔どもを殲滅し、この地を更地に戻すのだ!」


 レンさんのお父さんが、ボクを指差しながら、相変わらず悪魔だのと言ってくる。明らかに正気じゃないレンさんのお父さんの様子に、騎士の人たちも、レンさんも引いています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ