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貸しておきます


 中央教会の敷地内へと突撃したボク達だけど、辺りは混乱していた。ズーカウは、兵士に、男の人や、女の人に、子供まで、様々な人を乗っ取っている。暴れるズーカウは、騎士の人たちが倒してくれるけど、でもそれまでおとなしくしていた人が、いきなり騎士の人に襲い掛かると対応できない。そのため、騎士達ですら疑心暗鬼となり、連携がまったくとれていない。


「あっちにも……あっちの人と、あの女の人と、あの男の人もそう。アレもそうだ」

「ちょ、ちょっと待った!どれだか、全く分からないよ!」


 ボクが、ズーカウを指差して皆に教えるけど、数が多すぎて追いつかない。オマケに、あたりは逃げ惑う人達で溢れかえっているので、ボク達は分断されないようにするだけで、必死だ。


「……」


 そんなボク達のスキをついて、イリスの背後に立ちはだかる男の人がいた。手には、ナイフを持っていて、それがイリスに向かって振り下ろされようとする。


「はぁ!」

「てやぁ!」


 そのナイフを弾き返したのは、ユウリちゃん。剣を抜いて、見事にイリスを刃から庇った。更に、その男の人に向かって、レンさんが拳を繰り出した。拳は、男の人の顔面に直撃。男の人はふらつき、そこへユウリちゃんが、止めの剣を、胸に突き刺した。


「……!」


 男の人は、灰になり、その姿を消していきました。2人の息のあったコンビに、ボクは感心させられてしまった。

 というか、ユウリちゃん、なんか動きが凄く良かったような……?よく見たら、ユウリちゃんのレベルが、25を示している。初めて会った時は1で、それ以降は確認していなかったけど、いつの間にかこんなにレベルが上がっていたのに、驚きが隠せない。

 ちなみにイリスは、レベル1のままでした。ボクもだけどね。


「今のは、お姉さまの指示を仰がなくても、分かりました」

「そうですね。分かりやすすぎましたね。大丈夫ですか、イリスさん」

「……平気です」


 イリスはレンさんに答えると、懐から魔法の杖を取り出した。それは、メイヤさんのメイドとして働き、苦労の末に手に入れた杖だ。

 イリスはそれを、溜息を吐きながら、ネルさんへと投げ渡した。


「貸しておきます。私が持っていても、役にはたたないので」


 本当に、そうだよね。手がちょっと冷たくなる魔法とか、小さな小さな火の玉を生み出したり、全く役に立ちません。……いや、手がちょっと冷たくなる魔法は、ユウリちゃんが熱を出した時、ちょっとだけ役にたったけどね。


「……知ってたの。私が、魔術師だって」

「魔力の感じ方で分かりますが、それ以前に、見れば分かりますよ。その体は、どう見ても前衛タイプじゃありませんから」


 確かに。ボクは、心の中で激しく同意した。


「別に、隠してた訳じゃないのよ。でも、私が使える魔法って、魔法の杖がないと使えない物ばかりなのよ。魔法の杖って、高いのよね。なくしたからといって、簡単に買える物じゃないし、メイヤさんに仕えるなんて、絶対に嫌」

「い、いいから、その杖でぱーっと景気の良い魔法を使って、さっさと敵を殲滅してください」

「そんな、景気の良い魔法は使えないんだけどね……カラミティホーク!」


 ネルさんが使った魔法により、魔法の杖が光り輝いたと思ったら、杖の形が変化した。変化した杖は、鳥の形となり、実際に羽ばたいて飛び、ネルさんの手に止まった。

 光り輝いたままの鳥は、それほど大きくはない。でも、目がちゃんとあって、その目つきが鋭くて、ちょっと怖そうだ。でも、そんな鳥を、ネルさんが優しく撫でると、気持ち良さそうに目を細めたのは、ちょっと可愛いかも。


「ネモ!どれがズーカウか教えて!」

「え、えと……あそこ。あそこの、女の人。髪の毛に、青いリボンが付いてる人です!」


 ボクの指示を聞き、ネルさんの鳥が飛び立った。そして、まず高く飛び上がったかと思うと、ボクが指し示した女の人に、急降下して突撃。その勢いが凄くて、女の人の上半身を、体当たりだけで吹き飛ばしてしまった。それをくらったズーカウは、ひとたまりもない。あっという間に灰になった。


「次!」

「は、はい!」


 ボクが指示を飛ばすと、ネルさんの鳥が、正確に倒してくれる。ボク達に襲い掛かってきたズーカウは、ボクと、メルテさんが中心となり、撃退。そうして行くうちに、少しずつ、人ごみに紛れているズーカウの数は、減っていく。


「ネモさん!」


 順調に、ズーカウを減らしていくボク達に気づいた、エクスさんが近づいてきた。一瞬、倒そうとしてしまったけど、彼はズーカウじゃない。なので、我慢我慢。


「コレは一体、どういう状況なんですか!?」

「落ち着きなさい。この中に、魔族に肉体を乗っ取られた人間がいただけです。貴方達は、暴れている人間を処分して回っていてください。潜んでいるのは、こちらでなんとかしますので」


 エクスさんの相手は、暇そうなイリスがしてくれた。おかげでボク達は引き続き、ズーカウに専念できる。


「ネルさん!あの、こっちを見てる男の人もそうです!」

「任せて!」

「待て!あちらを見ろ!」


 ネルさんが、また鳥を飛ばして攻撃を試みるけど、そのターゲットの男の人が、こちらへ向かって叫んで来た。待てと言って来たんだけど、鳥は止まらない。そのまま男の人に突撃して、灰にしてしまった。

 そんな、急に言われても仕方ないよね。


「待てと言われたら、待たぬかバカ者が!」


 灰になった男の人が指し示した方向は、塔の中だった。そちらにもズーカウがいて、塔の中から複数人のズーカウが、ゾロゾロと出てきた。ちなみに今喋ったズーカウは、女の人だった。茶髪のもじゃ髪のお姉さんが、ナイフを片手に、ボク達に向かって怒っている。


「……まぁいい。お前達には、それ以上暴れず、おとなしくしていてもらう」

「は?そんなお願い、私たちが聞くとでも思いますか?」

「悪い話ではない。お前達がおとなしくしていれば、今暴れている我も、人々を殺すのを止めよう。だが、もしまだ我の邪魔をするというのなら、こちらにも考えがある」

「ぐっ!」


 ズーカウ達の前に連れてこられたのは、メリウスさんだった。頭に被っていたヴェールは外され、茶髪のロングヘアーが、大きく乱れている。更には、抵抗したのか、修道服が所々破れていて、肌が露出している。大切な所は見えていないけど、ちょっと色っぽいです。


「メリウス!」


 それを見て、エクスさんが大きく取り乱した。

 どうやらボク達は、人質を取られてしまったみたい。中にはまだ、他のシスターさん達もいて、ズーカウもいっぱいだ。


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