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再会


 結局ボクは、遭遇したレンさんのお父さんの事を、皆に話した。ディセンターを操って、ボクに襲い掛かってきた事を、ね。それと、この町を滅ぼすとかなんとか言っていた事と、魔族と繋がっている可能性の事も。そうなると、やっぱり聖女様が、狙われているとみて間違いない。

 そんな訳で、ボク達は中央教会に急ぐことになった。レンさんの頭の治療を、ラスタナ教会の人に手早くしてもらってから、すぐに向かう。

 町の方は、オルクルさんや、ギルドの人達がなんとかしてくれるようなので、なんとかなると思う。ディセンターは、まだ動いているようだけど、ボクがけっこうな数を倒したからね。


「あと少しで、教会だよ。イリス、平気?」

「はぁはぁ、ひぃはぁふぅ」


 走るボク達に、必死についてくるイリスだけど、もうダメそう。ここまで頑張ったんだけどね。仕方ないので、ボクはいつも通り、腕にイリスを抱いて運ぶことにした。

 教会の方に来るにつれて、人影はなくなっていった。周囲の人達はもう逃げたか、地面で息絶えているかのどちらかとなる。


「……」


 その、死んでしまっている人達。それをしたのは、レンさんのお父さんだ。ディセンターを操り、間接的に人々を殺している。

 レンさんが、守ろうとしている物を、レンさんのお父さんが壊していという事になる。それは、凄く嫌な事だと思う。


「レンさん」

「……?」


 元気のなさそうなレンさんに話しかけたのは、ユウリちゃんだった。下手な励ましは、今のレンさんのおかれた状況をみたら、逆効果になってしまうかもしれない。それでも話しかけたという事は、何か秘策があるのかな。


「男なんて所詮、そんなものですよ。それは、身内も同じです。これからは、女の子だけを信用していきましょう!」

「……」


 ボク達は全員、あきれ返りました。


「……そうですね。私もこれからは、ユウリさんのように女の子だけを愛していくのも、悪くないかもです」

「れ、レン様が、女の子だけを……!」

「じょ、冗談ですよ」


 鼻血を出しそうなネルさんを見て、レンさんは慌てて否定した。

 結果として、レンさんに笑顔が戻った事に安心をする。ユウリちゃんの、励まし……?の、おかげです。


「……でも、私にとっての一番はやはり、ネモ様である事に違いはありませんから、あながち間違いではありませんね。私の全ては、ネモ様の物ですから」

「……」


 そう言われて、嬉しいけどボクの気持ちは複雑だった。ボクは、レンさんの意に反して、人々を殺そうとした事は事実だ。イリスが止めてくれなかったら、ボクはレンさんに嫌われていたと思う。そう考えると、レンさんの気持ちにどう答えたらいいのか、ボクには全く分かりません。どうすればいいですか。

 そんな事を考えていたら、空から突然、人が降ってきて、ボク達の行く手に着地した。フードで、顔がよく見えない。だけど、すぐにそれが、誰なのか分かった。


「メルテ!」


 いち早くそれが分かったのは、ネルさんだった。まるで、ご主人様を見つけた犬のように、尻尾を振ってメルテさんに駆け寄る。実際、尻尾はないし、ご主人様はレンさんなんだけどね。そう見えてしまった。


「どこ行ってたのよ、夜には帰るって言ってたのに!」

「悪いね。ちょっと忙しくて、帰れなかったんだよ」

「……まぁいいわ。でも、コレは借りよ」

「はいはい……とりあえず、今はその話は置いておこう。あんた達は今、どこへ向かってるんだい?」

「中央教会です。ラクランシュ様の身が危ないと、踏んでいます」


 レンさんが答えて、メルテさんはキリっとした顔で頷いた。その姿は、いつもの飲兵衛なメルテさんではなく、洞窟の時のような、頼りになるメルテさんでした。


「分かった。あたしも行くよ。急ごう」

「そうね!」


 気合の入ったネルさんは、一味違う。ボク達を先導し、先を急ごうとするので、慌てて追った。


「はしゃぐネルさん、可愛いです。イタズラしたくなっちゃいます」

「だ、ダメだからね」


 ネルさんを、輝きながらも、貪欲そうな目で見守るユウリちゃんに、ボクは釘を刺しておいた。

 ペースアップしたボク達は、それからまもなく、中央教会に辿り着いた。そこはさすがに、凄い数の騎士が集結していて、施設を守っていた。敷地の中には避難してきている人を匿っているみたいで、大勢の一般の人たちの姿を見ることもできる。


「ネモさん!」


 教会を守っている騎士の一人に突然話しかけられて、驚いたボクはユウリちゃんの後ろに隠れた。


「やめてください、変質者。お姉さまが驚いてしまっているじゃないですか」

「す、すみません……て、ただ話しかけただけなのに。でも、そういう所も可愛いなぁ」


 話しかけてきたのは、エクスさんだった。ユウリちゃんが叱ってくれるけど、そんな事意に介さずに、デレデレとした表情を見せてきて、気持ちが悪いです。


「本当にやめてください。気持ちが悪すぎます」

「あの……もっと離れてください。ネモ様が、可愛そうです」

「お二人とも、昼間よりもオレの扱い酷くありませんか!?」


 エクスさんは、あまりにも冷たい2人の態度に、涙目だ。


「知り合いなの……?」


 不安げなネルさんが、レンさんにそう尋ねた。ボク達も、今日知り合ったばかりだけどね。悪い人ではないと思うけど……ボクはちょっと、生理的に受け付けない人だ。


「はい。一応、そうです」

「こんなの相手にしてないで、早く聖女の下へいきますよ」


 ボクが腕に抱いたままのイリスは、こんなの扱いだ。これじゃあ、あまりにも可愛そうすぎるよ。確かに大きな声でいきなり話しかけられたおかげで驚かされ、その上顔が気持ちが悪かったけど、もうちょっとだけオブラートに包んであげようよ。


「ちょ、ちょっと待ってください。中に入る事はできますが、聖女様の下へは、行けません」

「はぁ?何でですか?聖女は、ここにいるんですよね?」


 イリスが、イラだった様子でボクの腕から抜け出すと、エクスさんに近づきながら理由を尋ねた。やけに距離が近いなと思ったら、よく見るとエクスさんの足を踏みつけている。あと、ユウリちゃんとレンさんもエクスさんを一緒になって、睨みつけている。その光景は、なんだろう……まるで、普通の人に絡む、不良みたいだ。


「確かに聖女様は中にいます。が、攻撃にさらされる危険が高まった時、聖女様は塔のてっぺんにこもり、何人たりとも上へ登れぬよう、魔法で封印を施す決まりになっているのです」

「そういう事ですか。なら、最初からそう言ってください。いちいち回りくどい言い方をするから、イラつくんですよ」

「……つまり、聖女様は無事という事ですね。封印なんてなくとも、さすがにこの警備では手の出しようもなさそうですが」

「いえ。油断大敵です。いつ、どのような不測の事態がおこるか分かりませんので、万全を期さねばいけません」

「まぁ、無事ならいいでしょう。では、私たちはちょっと休ませてもらいましょうか。少し疲れました。あと、喉が乾いたので飲み物をください」


 図々しくも、イリスはそう言いながら、エクスさんの横を通り過ぎて歩き出した。向かったのは、兵士達に守られている、中央教会の敷地の中だ。大勢の人がいるけど、スペースはまだまだあいている。


「それなら、オレの水筒をどうぞ」

「……」


 たぶん、悪気はないんだと思う。だけど、イリスは物凄く嫌そうな顔で、エクスさんを睨み付けた。そして、無視して歩いていきました。


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