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犯罪の臭い


 建物よりも高く舞い上がったボクは、周囲の状況を確認する。まず、目に入ったのは、通りで人々に向かい、目からビームのような物を放つ、ディセンターの大群。それが、あちらこちらで確認でき、その数はとてもじゃないけど、ボク1人で対処できるような物じゃない。けど、出来る限りの事はしないとね。

 空から降りてきたボクは、まず、今まさに人々に向けて、ビームを放とうとしているディセンターの上に着地。それから、隣り合っていた2体のディセンターを、剣できりつけた。2体のディセンターは、それにより跡形もなく吹き飛ぶことになり、最後にボクが上にのっていたディセンターも、飛び降りながら斬って、消滅。


「へ?」

「な、何が、起こったんだ……?」


 ここまで、あっという間の出来事だ。周囲の人達は、何が起きたのかも分からずに、呆然としている。

 ボーっとしてないで、さっさと逃げてほしいんだけどな。


「よっと」

「……」


 なるべく目立たないよう、人ごみに紛れて地面に着地したボクだけど、小さな女の子と、目があってしまった。馬のぬいぐるみを抱いた、髪が長く、目がくりくりした女の子だった。そのくりくりの目が、ボクを完全に捉えていて、瞬きを繰り返している。


「ま、ママ……」

「しぃー!」


 手を繋いでいるお母さんを呼ぼうとする女の子に、ボクは人差し指をさして、静かにするようにお願いをした。すると、女の子はコクリと頷き、分かってくれたみたい。い、いい子だ。


「キャリー!レイラ!」


 そこへやってきた、大きな大きな、男の人。スキンヘッドで、目つきが悪い上に、太い腕には腕に竜の刺青をしている、いかにもその道の人みたいな風貌のその人は、見覚えがあった。近所の野菜屋さんの、店長さんだ。ボク達はよく、買い物に行かせてもらっているので、すぐに分かった。まぁ、常連じゃなくても、分かりやすい見た目だけどね。


「パパー!」

「ぶっ!」


 ボクと目が合っていた女の子が、店長さんを見てパパと呼び、ボクは思わず噴き出してしまった。

 こんなにいかついおじさんの遺伝子から、こんなに可愛い女の子が生まれるの?この世界、どうなってるの?あと、だとするとこの女の子と手を繋いでいるのが、奥さん?随分と若い。美女と野獣って感じ。犯罪の臭いがただよってきます。ユウリちゃんが見たら、絶対に騒ぎ出します。


「ん?」


 思わず、見つめてしまっていたものだから、店長さんが視線に気づいてこちらを見てきた。ボクは慌てて背を向けて立ち去ったけど、どうだろう。もしかしたら、見つかったかもしれない。


「お前らぁ!ボケっとしてねぇで、死にたくなかったらキャロットファミリーに行けー!」

「キャロットファミリー……」

「そこに行けば、助かるのか!」

「こ、こっちだ!こっちに行けば、近道だぞ!」


 人ごみに隠れた直後に、店長さんの大きな声が響き渡った。その大きな声により、呆然としていた人たちが、一斉に動き出す。

 確かに、ギルドにいけば、守ってもらえるだろう。

 人々の先導は店長に任せておくとして、ボクは再び地を蹴り、空高く舞い上がった。向かったのは、こちらに向かってきていた、ディセンターの群れ。ボクは正面から突っ込むと、剣で一瞬にして切り刻み、その追撃を阻止した。

 の、だけど……。

 建物の屋上に着地したボクに、四方からディセンターが向かってくるのが見える。それまで、逃げ惑う人々を襲っていた周囲のディセンターが、急に方向転換したのだ。

 ボクが、たくさんのディセンターを一気に倒したもんだから、先にボクを倒そうとしているみたい。仲間がやられて、怒ってるのかな。……いや、ディセンターにそんな意識はないはずだ。明らかに、誰かが操って、意図した行動をとっている。ボクは周囲を見渡し、ディセンターを操っていると思われる人物を探した。でも、怪しい人物は見当たらない。


「わっ!?」


 そこへ、ボクに向かってきていたディセンターがビームを放ってきた。他の方を見ていたボクは、ギリギリでそれに気づいて、頭を伏せて回避。

 そちらから向かってきてくれるのなら、その方がボクとしても助かる。ボクは建物から建物へとジャンプして移って駆け出すと、ディセンター達もビームを放ちながら付いてきた。このまま、人気の無い所にいって、一網打尽にしよう。そうすれば、目立たなくて済んで、しかも人を巻き込まなくて済む。ボクって頭良い。


「こ、こっち、こっち」


 それからボクは、町中の建物の上を飛び回り、人々を襲っているディセンターをかき集めた。彼らはボクが近づくと、対象をボクに変更してくれるので、いつの間にかボクの後ろは、大量のディセンターで埋め尽くされていた。


「そろそろ、いいかな……」


 ボクは、人気のなくなった広場に降り立つと、剣を構えて振り返った。そこには、数十ものディセンターが、怪しく目を光らせ、ボクに狙いをしぼっている。

 そんなディセンターの群れに向かって、ボクは駆け出した。一瞬にして、先頭のディセンターの前に移動したボクは、横一閃に剣を振りぬく。それだけで、数体のディセンターが跡形も無く吹き飛び、大きな風を巻き起こした。残ったディセンターが一斉に、そんなボクに向かってビームを放ってきた。そこら中から飛んでくるビームが、地面を抉り、破壊する。でも、ボクは既にそこにはいなくて、空中に浮遊するディセンターの上にいる。ここまで来る間に、3体のディセンターを、かなり加減して倒してある。目玉を、ちょっとだけ斬りつけて来たのだ。そのディセンターが爆発を起こし、周囲のディセンターを破壊し、破壊された何体かのディセンターが、また爆発を起こすという、連鎖を起こした。


「うわっと」


 ボクが乗っていたディセンターが、いきなりひっくり返り、ボクを振り落としてきた。落とされたボクは、真っ逆さまで、地面に向かって落ちていく。そんなボクに向かって、生き残っているディセンターが、ビームを放ってきた。

 ボクは、そのビームを全て剣で斬り、霧散させた。

 地面に着地したボクは、すぐに近くのディセンターを斬って、破壊。更に、別のディセンターに襲い掛かろうとする。そんなボクを囲うように、ディセンターが八方から迫っていた。

 都合よく集まってくれているので、また爆発の連鎖をおこさせようと思ったんだけど、彼らには彼らの狙いがあった。ディセンターの赤い目玉の部分が、いきなり青く光ったと思った瞬間だった。ボクを囲っていたディセンターが、一斉に爆発を起こしたのだ。不意をつかれたボクは、その自爆攻撃に巻き込まれてしまった。


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