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おー


 ボクは、登場したシスターさんのステータスを、開いてみた。


 名前:メリウス・ハーパー

 Lv :5

 種族:人間

 職業:シスター


 メリウスさん、か。特に、怪しいところのない、普通の人みたい。

 ステータスを開いて思ったんだけど、ボクの方がよっぽど、個人情報盗みまくりのヤバイ人だったね。急に、名前を聞かれただけで怪しい人扱いしていた、怪しい男の人に、罪悪感が生まれてしまった。

 ボクは、そんな怪しい男の人に向かい、目を向けて心の中で謝罪。これからは、名前で呼んであげようと思って、ステータス画面を開いてみる。


 名前:エクス・バッハルト

 Lv :40

 種族:人間

 職業:聖騎士


「私は、メリウス・ハーパーと申します。どうぞ、メリウスとお呼びください。クエストの件に関して、私が責任者となりますので、どうぞよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。こちらが、依頼書です。ちなみに、私はユウリと申します」


 ユウリちゃんは、自己紹介をしてくれたシスターさんに、依頼書を渡しながら、名乗った。続いて、ボク達にも自己紹介をするように促すため、視線を向けてくる。


「ぼ、ボクは、ネモ、です……」

「……イリス」

「レン、と申します」

「ユウリさんと、ネモさんと、イリスさんと、レンさんですね。よろしくお願いします」


 頭を深く下げてくるメリウスさんに、ボクも思わずお辞儀をして返した。


「ネモさん……ネモさんかー……良い名前だなー……」


 ボクが頭を上げると、そんな呟き声が聞こえて、その声の主の方に全員の視線が集まっていた。ボクも、ボクの名前を連呼している怪しい男の人の方を見ると、その顔はだらしなく鼻の下を伸ばし、イケメン台無しの残念な顔になっている。


「あ……ゴホン。申し遅れました。自分は、エクス・バッハルトと申します。よろしくお願いします!」


 だらしのない顔を誤魔化すように、元気に挨拶をして頭を下げてくる、怪しい男の人。そんな彼を、ユウリちゃんはまるで、ゴミでも見るかのような目で見下していて、今にも腰にさした剣で、襲い掛かりそう。不安なので、ボクはユウリちゃんの手を取って、手を繋いでおくことにした。

 すると、ユウリちゃんは凄く嬉しそうにして、繋いだボクの腕に抱きついてくる。ま、まぁいいよ。こうしてれば、襲い掛かれないだろうし。


「では、バッハルト君。あとは、私が受け継ぎます。貴方は、持ち場に戻ってください」

「は、はい……。では、失礼します。お仕事、頑張ってください!」


 怪しい人改め、エクスさんは、名残惜しそうにしながらも、最後にボクたちに向かってキレイに気をつけをし、そして去っていった。


「ふふ」


 そんなエクスさんの様子を、メリウスさんは優しく笑って見送り、ユウリちゃんとレンさんは、殺気のこもった目で見送り、イリスは面白い物を見るような目で見送りました。


「早速、お仕事の内容ですが、貴方達にお願いしたいのは、この三女神様の像の、お掃除です。必要になりそうな道具は、全てこちらで用意しています。それらを使い、可能な限り、今日一日で像をキレイにして欲しいのです」

「……お言葉ですが、あんな大切な物の掃除を、私達のような冒険者に任せても良いのですか?」


 確かに、ユウリちゃんの言うとおりだ。いくら掃除をするだけと言っても、もしかしたら傷つけてしまう可能性だってある。ボクなら、大切な物の掃除を冒険者に任せるなんて、絶対に嫌だよ。


「コレは、女神様のありがたさを知ってもらうための、一種の布教のような物です。女神様と縁もない方に、女神様の像を掃除していただくことで、その心を癒し、女神様のありがたさを知っていただく事が目的なのです。もちろん、女神様を信仰している方でも問題ありませんよ」


 メリウスさんはそう言うと、チラリとレンさんの方を見た。レンさんは、慌ててフードを深く被って顔を隠すけど、なんだろう。


「また、先に言っておきますと、あの三女神様の像は、魔法で特殊な加工が施されています。なので、傷つけたり、ましてや破損させる事など、不可能に近いので、ご安心を」

「それなら、安心ですね」

「う、うん。掃除し甲斐がありそうだね」

「うへぇ……」


 気合を入れるボク達だけど、イリスだけが、凄く嫌そうな顔をして、元気がない。


「それでは、私は他のお仕事があるので、ここを離れますが……」

「お任せください!気合を入れて、行きましょう!おー」

「お、おー」

「おー」

「……」


 ユウリちゃんに合わせて、拳を突き上げるボクとレンさんだけど、イリスだけがそれをしない。ボクは、そんなイリスの手を取って手を挙げさせるけど、本人に気合が全く感じられないので、ボクが手を離したらポトリと落ちてしまう。


「明日あたりに、たまには外食で、お肉でも食べに行きましょうか。当然、働かざる者食うべからず。今日の仕事で、サボってるような子はお留守番ですが」

「気合いれて、行きましょう」


 相変わらず、お肉で簡単に釣れて、イリスは単純だなぁ。でも、あんまりお肉で釣りすぎるのも、栄養バランスが崩れてしまいそうで、ダメだよね。お肉を食べるなら、きちんと、野菜も食べるようにさせないと。


「では、私は失礼します」

「はい!」


 ボク達は、女神様の像に向かい、メリウスさんは、広場隅の扉へ向かって歩き出す。


「ほら、早く行きますよ!」

「あーもう、気合入れすぎです。もう少し、力を抜いてください」


 やる気が爆発したイリスは、ユウリちゃんの手を引っ張って、早く像の方へと行こうとしている。そんなユウリちゃんと手を繋いでいるボクも、引っ張られる訳で、3人仲良く、連なって歩く。


「……ご無事で、何よりです」


 ボクの耳に届いたその声は、小さな物だった。その声の主は、ボク達に背を向けて去っていく、メリウスさんの声だ。声に気づいたのは、ボクだけではなく、レンさんも気づいて振り返っている。

 やっぱり、2人は知り合いだったんだなと、ボクはそこで確信した。


「レンさん」


 ボクは、メリウスさんの背中を見送るレンさんに、声を掛けて手を伸ばした。


「……はい!」


 レンさんは、そんなボクの手を取って、ボク達は4人仲良く、手を繋いで像に向かって歩いていく。


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