007 疲れ 2005年 春/中部
『彼女』と中部で逢ってから2ヵ月後に上司から突然呼ばれた。
『私』が勤めている会社は世界的な規模で展開しており、
中部で人が見つからず、来週から中部へ行く事になった。
着任後しばらくはホテルから会社へ通い、引っ越し時期については一任された。
会社は半年をメドに中部で人を探し『私』から引き継ぐ方針だった。
『私』がそのまま中部で続けたい場合は、転勤を含め考慮すると告げられた。
断る事は出来ない。
なぜ中部なんだ?
『彼女』に引き寄せられる。
運命なのか?
とりあえず中部に新しく部屋を借りて、関東との2重生活を選んだ。
1ヵ月はあっという間に過ぎた。
仕事に忙殺されている。
トラブルプロジェクトだ。
力量が解らないプロジェクトメンバ。
課題が山積み。
追い詰められていった。
人が時間が知識が足りない。
一息入れたい。
切実に思った。
『彼女』を警戒していたが、中部に来た事で流れに身を任せる事に決めた。
疲れで思考力が落ちていた。
仕事中に『彼女』からメールが来た。
「最近チャットに来てくれないよね。嫌われちゃったのかな?
チャットに来てほしいな」
それを見て『私』は、疲れているからと定時で帰ることにした。
会社を出ると『彼女』へ電話した。
出てくれなかったら、帰ってすぐ寝よう。
「もしもし」
「えっ? 私さんどうしたの? 電話好きじゃないよね?」
「今から話しても平気?」
「平気だよ。」
「驚かそうと思って黙っていたんだけど、1ヵ月くらい前から中部に引っ越したんだ。
また会えないかな?」
「すっごい驚いたよ。心臓がばくばくしてる。……今からでもいいの?
またお願いしたいの」
「今日?……いいよ。会おうよ」
『彼女』のマンションがある最寄駅で待ち合わせた。
「スーツ姿初めて見ちゃった。かっこいいね」
「ごめん。ちょっとくたびれた姿だけど」
「そうなんだ。仕事大変なの?」
「応援に呼ばれたけど正直キツイ。疲れ切ってるんだ。
だけど『彼女』の顔見たら元気になったよ。ありがとう」
「食べて元気にならないとね。食べに行きたいレストランがあるの」
手首を掴まれて引かれて行った。