037 知人 2006年 秋/関東
「これからも中部に住むんだよね」
「そのつもりだけど」
「関東と中部、離れるから裁判は多分手伝えない」
「電話やメールじゃダメかな?」
「弁護士じゃないから、その情報だと無理だと思う。
会って色々話さないと、会社側の出方が解らない。
それに、正解がなにかも解らない」
「それよりも一番重要なのは、ただの知人に頼むことだよ」
「あなただけしかいないのに、だめなの?」
「話は聞いてあげるよ。だけど力にはなれないと思う。
ここからは、弁護士や両親、兄弟に頼るべきだよ」
「弁護士に頼むお金なんかないよ。両親や妹とも疎遠なの」
「弁護士は無料相談やってるから、そこを頼ろう。
両親や妹との仲は、なんとか改善して行こうよ。
私が出来る事は、多分ここまでしかない」
「力が足りなくて、ごめんね」
「あやまらないで。……わたしが全部悪いの。……えっえっ」
「……あなたにすれば良かった。……えっえっ」
「…………」
「被害届の件は、まだ面倒見れると思うから。
明日、会社に電話したら話した内容教えてくれる?」
「……分かった。……ありがとう」
次の日、電話やメールも来なかった。
翌週メールが来た。
「被害届はお互い出さない事になりました。
だけど、パワハラの裁判は続けます。
これまで色々ありがとう。
感謝しています。
あなたはただの知人じゃないよ。
あなたはわたしの特別な人なの」
別れのメールだろう?
返事は出せなかった。
しばらく時が流れても、連絡はなかった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
思い立って、初めて書いた処女作となります。
楽しく、辛く、時間はあっと言う間に過ぎました。
気が熟したら続きを書くかもしれません。




