033 理由 2006年 秋/関東
「もうそんな時間になるんだ。中部には帰れないしホテル探さないと。
あなたに会いたいけど無理かな? ……家に行ってもいいかな?」
家に来るとか、すでにありえないだろ。
「明日も仕事あるし。……いきなり来られても困るよ。
ホテルに行くのも寝れなくなりそうだから行けないよ」
「……そう。仕方ないね。ホテルに着いたら、また電話するね。
不安だから出てね? お願い」
「分かったよ」
中部で警察に連行されたのは、本当みたいだな。
話半分だと思っていた。
これが離婚の原因か?
そうかもしれないな。
しかし、『彼女』は『私』との約束は忘れてしまったみたいだ。
本当に残念だ。
電話は中々掛かって来なかった。
なぜ、『彼女』が気になるんだろう?
子供への贖罪は終わったはずだ。
『私』なりに納得もしている。
色々理由を考えてみよう。
推理小説や探偵小説が好きでよく読んでいる。
その中に出て来る突飛な人達。
「目が離せない女性」って書いてあっても、今まで意味が良く分からなかった。
今なら良く解る。
『彼女』がいる。
推理小説が現実になったみたいで、ワクワクするのだ。
『好奇心は猫をも殺す』
目が離せない。
しかし、強引な理由付けだな。
小説でこんな記述があれば、クソだと思うだろう。
結局、『彼女』みたいな女性は初めてて、どうしていいのか解らないだけだな。
風呂にも入らずに待っていたが、疲れて寝てしまったのか?
明日電話来るな。23時過ぎたし風呂に入って寝よう。
ん?
『彼女』から電話だ。
「もしもし」
「あなた。ごめんね。お風呂入ってたの」
相変わらず自由過ぎる。
潔癖症だから仕方ないか。
「一緒に入りたかったな~」
お約束だ。
「今から来てもいいよ? うふっ」
「いや話進まないから、会社の人に囲まれてどうなったの?」
「そのままだとビラ配れないよね。
だから、パワハラにあった会社の人に取り囲まれてます。
助けてくださいって、叫んだの」
あ~あ~あ~やり過ぎだ。
通行人が警察に通報するぞ。
自爆だろう。
溜息が出る。
『私』が会社側だったら速攻警察に電話して、威力業務妨害に遭ってるから来てくれって言うぞ。
「……警察に通報行ったんだよね?」
「そうなの。すぐ警察来ちゃった」
「……野次馬、集まったんじゃないの?」
「そうだね。結構いたよ。だけどね、みんな見てるだけでビラ貰ってくれないの。
ひどいよね。
やっと貰ってくれた人から、会社の人が頭下げてすぐ取り上げてるの。
許せないよね」
『彼女』らしい感性だ。
感心する。
「……それで?」
「わたしと会社の人、別々に事情を聴かれたの。
そしたら、本当にひどいんだよ。
わたしだけ威力業務妨害で話を聞きたいって、警察署に連れていかれたの」
それはひどい事なのかな?
警察署の人ごめんね。
迷惑かけました。




