031 会社の回答 2006年 秋/関東
月曜日の午後に、『彼女』からメールが来た。
そりゃ来るよね。
「会社に電話したら、面会はしない。告訴状も受け取れない。
正規の手続きにてお願いしたいって言われた。どうすればいいの?」
『私』の手を離したのに。
頼りすぎ。
溜息が出る。
会社は大変だっただろう。
朝から上司や同僚は経営層に色々聞かれて、青くなっただろう。
昇進や昇給に影響が出るな。
同じ目には合いたくない。
『彼女』は怖すぎる。
仕方ない電話しよう。
階段へ移動した。
「もしもし」
「仕事中にごめんね。電話かけてくれると思わなかった。
だけど声が聴きたかったんだ。すごくうれしい」
「メールの方が時間かかるから。手早く話すよ。
刑事告訴のために、被害届は出したの? 民事告訴は、裁判所だっけ?
何かやってるの?」
「被害届はなんか無理っぽい。警察行ったけど、受けてもらえなかったの。
民事告訴は、後は裁判所に出すだけかな。
だけど、1200万だと印紙代も高くなるから悩み中」
「そっか、ちゃんと正規の手続きやってるんだね。行動力あるよね」
「うふっ。そうかな?」
「後は、警察と裁判所を上手く使って手続きを進めれば良いよ。
時間が掛かると思うから、新しい会社探しながら進めればいいし、
会社が決まったら裁判止めちゃう手もあるよ」
「そうだね。ありがとね」
「今日、中部に帰るんだよね?」
「そのつもり。仕事頑張ってね」
やっと落ち着いて仕事ができる。
これから、『彼女』は裁判にかかりっきりかな。
もう、連絡はそんなに来ないだろう。
家で寛いでいると、21時くらいに『彼女』から電話が来た。
家に着いたのかな?
お礼の電話?
土曜日は大変だったし。
「もしもし」
「…………あなた。……えっえっ」
「えっ? ……どうしたの? 何かあったの?」
「声を聴いたら涙が出たの。えっえっ。
……さっき警察から釈放されて、警察署の前なの」
「は?」




