025 添削 2006年 秋/関東
家に帰ってパソコンを立ち上げる。
気は進まないが約束は守ろう。
『彼女』が送ってきたメールを読む。
添付資料を見てほしいのか。
添付資料を開いた。
労働基準監督署宛の書類ですか。
しかたがない、ざっと読むか。
30ページ程の大作だ。
これまでの会社での出来事、上司、同僚との遣り取りが書いてある。
『彼女』の行動が全て分かるな。
この中からパワハラを探すのか?
めんどくさいな。
他にも協力者がいるみたいだ。
ICレコーダー持ち込ませているのか。
関東に来た直後からの感じだな。
男じゃないと『彼女』の相手は無理だな。
その人に見てもらえばいいんじゃない?
なぜ『私』なんだ?
しかし、時系列に書いてないね。
途中で回想入るのか?
斬新な手法だ。
主語が無いぞ。
ここの文章は、どこを修飾しているんだ。
意味が分からないぞ。
結論が無いぞ。
日記か?
メモを書き込む。
文書を修正する時は第一印象を大切にしないと。
「あ~~。会社では叫ばないように」
妊娠発覚時の『彼女』の叫びを思い出す。
全力でその記憶をスルーだ。
そのまま会社から帰ったのか。
職場放棄だろ。
「あっ。この日はあれだな」
この直後に『私』をクアハウスに誘ったんだ。
知りたくなかった。
関東の人間関係、全部清算するつもりだったんだな。
がっかりだ。
協力者に被害が行ってない事を祈ろう。
心療内科に通院しながら書いていると思うと上出来かな?
上出来と褒めて『彼女』に返信しよう。
読んだ結論をざっくりとまとめよう。
「朝の職場の掃除が彼女の分担になった」
「それも始業前」
「やってないと、上司、同僚から文句を言われる」
「なぜ自分なのか分からない。他の人は手伝ってくれない」
訴えるほどの事か?
色々書いていない事情や原因がありそうだ。
なんだか釈然としないな。
『彼女』が訴える理由が解らない。
ただの嫌がらせか?
だけど掃除婦として会社に入った訳じゃない。
上司の落ち度だな。
同僚もアホだ。
ただのイジメだろ。
この会社、やられた方がいいかもね。
しかし『彼女』みたいなタイプ見たことないのか?
人間関係ぶっこわすの得意だぞ。
イジメる相手が悪すぎるだろ。
しょうがない。
やる気スイッチでも入れるか。
日付で整理し直す。
日付の下にその日の登場人物と立場を書く。
遣り取りを中心に、主語、述語を、整理し直す。
『彼女』が、パワハラと思う点を『私』視点でさらに強調する。
書きっぱなしで終わっていた最後に、
パワハラ部分を抜き出し、整理して記載する。
最後の部分は、別建てしても問題無い様に工夫する。
多分、これで十分だ。
後は『彼女』に全て引継ごう。
裁判は負けると思うが、会社に突き付ける意義は十二分にある。
次の犠牲者は防げるはずだ。
これ以上の手助けは、現場を知らない『私』には無理だ。
公的な資格も持たないし。
『彼女』に言われるまま手を入れるのは捏造だから断ろう。
「そこそこ出来ていたと思うよ。
だから、すこししか手は入れていないよ。
それと、資料の修正はここまでしか手伝えないよ」
メールに資料を付けて送った。
返事が来た。
「すごい、すごい、すごく分かりやすくなってるよ。
気分爽快だね。ありがとう」
叫んでる所もあるけど気分爽快ですか?
そうですか?
「お金が取れたらあなたにも渡すから。これからもお願いね」
お金なんか欲しくない。
返事を出すのはやめよう。
敵対者は許さないのか?
色々な不足があるから、弁護士はそこを突いてくるだろう。
そもそも、訴えでる程の期間パワハラは受けていないしね。
10年務めているとかなら分かるが不充分だろう。
『彼女』に疲れた。




