022 欲しいもの 2006年 夏/関東/中部
『彼女』が心配で、次の日も電話で話した。
「みんな、わたしに冷たいの。えっえっ。
嘘つきだって言うの。えっえっ」
心療内科に通院している『彼女』へ言うことじゃないな。
周りの人は無理解なのか。
環境が悪すぎる。
「そんなに泣かないで。そばにいてあげたいけど遠いから無理だよね」
「えっえっ。
あなただけだよ。
優しいのは。
えっえっ。
わたしの話を聞いてくれるのは。
…………お願いがあるんだけど。いい?」
「なに?」
「……身に付ける物が欲しいの」
指輪とかネックレス、イヤリングのことかな?
指輪は贈りたくないな。
なぜほしいのかな?
「ネックレスとかかな? アマゾンで選んでいいよ。あまり高いのはダメだけど」
「あなたが選んでくれた物が欲しいの。それだけなの」
「そうなの? ……似合いそうなの選んで送るから待ってて」
「うん。待ってる」
2万円くらいで次の日に届くのを選んで送った。
翌日の終業間際に『彼女』からメールが来た。
「トップのクローバーかわいくて、ありがとう。
大事にするね。
不安な時にぎゅってすると安心できるの」
早く良くなってほしいな。
返事をメールした。
「気に入ってもらえて安心したかな。
こんなのいらないって言われなくて良かったよ」
「そんな事言わないよ。夜に電話するね」
不安になるとネックレスを握っているらしく、少しずつ良くなっていった。
それから2週間程で『彼女』はかなり落ち着いた。
電話からメールへと変わり『私』は、ほっとした。




