002 初めて 2003年 冬/関東
逢ったのは寒い日の夜だった。
『彼女』のアルバイトが終わる時間に合わせて、車で1時間程走り待ち合わせ場所へ。
約束の時間になっても、『彼女』はなかなか現れなかった。
メールを出しても返事は来ない。
「ダマされて、お疲れっ」
帰ろうとした。
「こんばんは。私さん?」
「えっ?」
隠れていたのか?
「ごめんなさい。怖い人だと困るからしばらく見てました」
そうなんだ。
緊張してきた。
メールで教えてくれた服の、ピンクのダウンジャケットとスカートを着いていた。
チャットで話している時と同じ、セミロングで可愛い感じだ。
逢ってみて分かった。
背が低くスリムな体形なんだ。
胸がどきどきした。
「こんばんは。初めて会う感じしないね」
「そうかも。緊張して損しちゃった」
『彼女』を車に乗せた。
すごく緊張していた。
3万円を渡した。
「ありがとう」
ますます緊張した。
「このあたり、初めて来たんだ。ホテルの場所知ってる?」
「ホテルの場所は行ったこと無いから分からないよ。
それより、一緒にごはんが食べたいな」
子供の頃から食べることに興味がなかった。
緊張すると食欲が無くなり、緊張の原因を直視したい『私』だ。
夜遅くに食べるの?って、すごく困惑した。
アルバイトが終わってから食べていないのかな?
「なにが食べたいの?」
「美味しいものが食べたい」
「ファミレスでもいいかな? 私は食べないけどいい?」
「えっ食べないの? ……じゃあ、コンビニで買ってホテルで食べよう」
コンビニはすぐ見つかり『彼女』は色々選んでいた。
お金は『私』が払った。
主要幹線道路に出るとホテルが複数あった。
「どのホテルがいいかな?」
「あの綺麗なホテルがいい。新しいみたいだし」
車で乗り入れた。
『私』は、お茶を飲み、『彼女』は、おにぎり、サラダ、デザートと色々食べていた。
「おにぎり食べる?」
一つ貰って食べる。
「お金が無くて、美味しいものあんまり食べてないの」
そうなんだ。
「車にお菓子あるけど、持って帰る?」
「食べないの?」
「コンビニでトイレ借りた時に、申し訳なくて買うんだ。
結局食べないけど」
「ありがとう。持って帰るね」
「私さん。彼女いるの?」
「いないよ」
そういう関係の女性は今いなかった。
「彼女は?」
名は教えて貰っていた。
「いないよ。私さんが3人目でそんなに経験ないから優しくしてね」
「わかった。優しくするね」
出逢い方はおかしいが『彼女』を大事にしようと思った。
そして事に及んだ。
『彼女』は初体験なことが多かったのか、大騒ぎだった。
家の近くまで車で送る。
『私』は聞いた。
「また会えるかな?」
「チャットかメールで決めようよ」
それからもチャットでは話していた。
数ヵ月後にチャットで『彼女』は言った。
「また会ってお願いしたいの」