018 関東に戻って 2006年 春/関東
季節は変わり春になっていた。
ふとした瞬間『彼女』のことを思い出す。
体調を崩して困ってはいないだろうか?
一人で産もうとしてはいないだろうか?
終わったはずなのに考えることをやめられない。
なぜだろう?
ずっと気がかりだ。
会社へ向かう途中でベビーカーを押す母親を見かけた。
『私』の子供のことを思った。
満員電車の中、突然思い立ち『彼女』へメールを出した。
『彼女』が「二度と連絡しないで」と言っていたのを思い出す。
心を慰めるためにメールを出した。
返事など、どうでもいいんだ。
最初で最後にしよう。
「元気ですか?
体は大丈夫ですか?
心配しています。
元気ならいいんです」
メールは『彼女』へ届いた。
ほっとした。
電車の窓から流れる景色をぼんやり見ていた。
メールが来た。
誰だろう?
見ると『彼女』だ。
「ええっ」
声が出た。
横にいた女性がこちらを見て、くすっと笑った。
「元気です。あの事は忘れました。
中部の会社に入ったの。
そしたら関東で働く事になっちゃった。
今月から関東にいるよ」
信じられない。
関東に来ている?
こんな事があるのか?
あんなに連絡される事を嫌がっていたのに、なぜメールの返事を?




