表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/37

017 親子 2005年 秋/中部

「お金は渡すけど誓約書は書いてほしい」

「分かった。便箋でもいいかな?」

「いいよ」

「コンビニで買ってくる。帰らないでね」

「帰ると思う?」

「そうだね。行ってくる」


子供連れの母親はこちらを気にしているようだ。

2歳くらいの子供を見る。

溜息がでた。


『彼女』が戻ってきた。

誓約書を書いてハンコを押している。


「これでいいかな?」


文面を読む。


「金銭の追加請求はしないと書いて。

 それと、処置した日に、私に連絡すると書いて」

「分かった」


出逢ってから3年くらい経つのか。

色々振り回されたな。

書いている『彼女』の顔をじっと見る。

もう見ることはないだろう。


喫茶店を出て銀行へ一緒に歩いた。


「喫茶店にいた母親、聞き耳たててたよね。

 どう思われてたのかな?

 すごく嫌だったの」

「あまり気にはならなかったけど」

「そうなの?」


子供が気になっていたけどね。



公園があったので二人で入った。

誰もいないな。

『彼女』にお金を渡し誓約書を受取った。


「こんなことになるとは思わなかったの。

 病院で終わったらメールするね。

 関東でも元気で。

 さよなら」


「体に気をつけて。

 さようなら」


帰るのをずっと見ていた。


子供のことは実感がない。

悲しくならない。

罪悪感があるだけだ。


公園を後にした。



週末の雨の中、自問自答しながら車で関東に帰った。

明日は誕生日か。

最悪の気分だな。




十日ほどすぎ『彼女』からメールが来た。


「今日すませました。体調は悪くありません。

 あなたは心配して電話やメールしたいと思うけど、もう連絡しな」



メールを削除した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ