016 絵 2005年 秋/中部
慰謝料だと。
解って言っているのか?
「だけど、わたしも悪かったと思うから30万円でいいよ」
『彼女』の顔は見たくない。
壁の絵を睨みつけた。
「ふ~~~ん。慰謝料? 取れると思ってるの?
私は、結婚して産んでほしいって言ってるんだよ。
分かってる?
慰謝料が欲しければ訴えればいい!
子供のことも一人で好きにすればいい!
もう面倒見切れない!」
席を立ちながら『彼女』を見た。
身をすくめ顔が白い。
怯えている。
なにをやっているんだ『私』は。
座り直しハーブティーをゆっくり飲む。
深く息をはいた。
ほっとした顔の『彼女』
「最後まで、私の言う事を聞いてほしい。いいね?」
『彼女』はうなずいた。
「病院への往復はタクシーを使ってほしい。
病院の費用と合わせて10万あれば足りるはず」
「えっ少ないよ?」
「いまアルバイトしていないよね?」
「してないけど?」
「分かった。1ヶ月間は働かないでほしい。
ゆっくり休んで体をいたわってほしい。
その費用として20万だすよ。
それでいい?」
「……えっえっ。さっきはすごく怖かったの。
あんなに怒ったあなたは初めてだし。
だけどいつもの優しいあなたに戻って安心したの」
『彼女』はうなずいた。