014 帰京直前 2005年 秋/中部
あれから2度逢った。
不本意だがお互いにキスマークをつけ合い、レストランで食事をする。
そして『彼女』は、図書館へ。
『私』は、関東への引越し準備を。
関東へ帰る日が、別れが近づいていた。
『彼女』から電話が来た。
「もしもし」
「来週誕生日だよね。今週末会う時にケーキ買っていくね」
「覚えてたんだ。ありがとう」
「多分大丈夫だと思うけど、生理遅れてるの」
「えっ?」
「それでね。薬局で検査器具買ってからホテルへ行こうよ」
「……分かった」
「来週帰るんだよね。最後にいっぱいしたいな」
土曜日の午前中。
いつもの様に待ち合わせ『彼女』と手を繋いでホテルへ入った。
3万円を渡す。
「ありがとう」
「このケーキ美味しいんだ。楽しみ」
「先に検査するね」
『彼女』はトイレで検査器具を使っていた。
『私』はソファーでお茶を飲む。
トイレから出て来て検査器具を『私』に見せた。
「子供できたみたい。……気持ち悪い」
「ええっ。」
「……産みたくない。産みたくない。産みたくないの!」
突然叫んだ。
『私』は落ち着かせようと『彼女』に近づいた。
「さわらないで!」
『私』から離れた。
どうすればいいんだ?
「産んでほしい。結婚しよう」
睨んだ。
顔つきが変わっている。
「産みたくない! 産みたくないの!!」
どうしよう。
どうすればいい?
「……分かったから。……産婦人科に行ってちゃんと調べよう。
……月曜日に一緒に行くから」
少し落ち着いたか。
ほっとした。
「……産婦人科調べたらメールで教えて。
産みたくないの。
もう話したくない。
電話しないで。
テーブルのケーキは一人で食べてね。
帰るよ。
さよなら」
何を話せばいい?
声が出ない。
『彼女』は帰った。
部屋を出るときに『彼女』は言った。
「自業自得」
どうすればよかったんだろう?
ソファーに座り込んだ。
ここには居たくないな。
初めて『彼女』から買って貰ったケーキをゴミ箱に捨て、ホテルを出た。