012 自由 2005年 夏/中部
あれから2週間後『彼女』と逢うことになっていた。
土曜日の午前中『彼女』のマンション近くのホテルへ行った。
『私』は何をしたいんだろう?
『彼女』は何を考えているんだろう?
「ぼーっとして、どうしたの?」
「彼女のこと考えてたんだ」
「ほんとに?」
「じゃあ入ろう」
手を繋いでホテルへ入った。
3万円を渡す。
「ありがとう」
抱き着いてきた。
『彼女』からキスした。
シャワーを浴びてベッドに座った。
『彼女』が背中へ抱き着いてきた。
「ちょっとだけ残ってるね。うれしいかも」
「うれしいの? ほんとSだよね」
キスマークをつけはじめた。
二人でベットに横たわり話していた。
『彼女』は『私』の腕を抱いて手を繋いだ。
「わたしにもキスマークつけてほしいな」
「えっ、嫌だ」
「つけていいって言ってるのに、なぜなの?」
「他の男に殴られるから」
「…………」
「痛い、痛い、痛い、本気で噛まないで」
腕を噛まれた。
「あなただけなのにさ。失礼だよね」
「暴力振るった跡みたいに見えるから嫌なんだ」
「優しいからね。噛んでも怒らないし」
「昔、猫を飼ってたんだ。
引っかかれたり噛まれたりしてたから、わりと平気」
「今もいるの?」
「昔だよ。学校から家に帰ったら母親から車にって言われたんだ。
6年くらい一緒に育ったから泣いたな~。
思い出すと泣ける。話してるだけでも泣きそうだし」
『彼女』が抱きついてきた。
「わたしにもつけて!」
「もう分かったよ。どこがいいの?」
『彼女』は起き上がった。
「ここと、ここ」
「そんなところに。……いいの?」
「あなただけだから。問題ないよ」
そこはダメだろう?
つけてあげると、うれしそうに跡を見ていた。
幸せそうだった。
前回と同じレストランに手を繋いで行った。
「この前デパートで店員さんに「可愛い鞄ですね」って言われたの。
すごく嬉しくて「彼に買って貰ったの」って言っちゃった」
「今日もすっごく気持ちよかった。どんどん気持ちよくなるの」
「そうだよね。見ててそう思ったから」
「あなたになら話せるんだ。もっとしたいの。ごはん食べたらまたしたいの」
「えっ? 戻るの?」
「お金はもう貰ったからいいけど。…………だめ?」
『彼女』に押し切られた。
中部に何しに来たんだろう。
『彼女』は満足して帰っていった。
全力を出し切った。
体のあちこちが悲鳴をあげていた。
無事に関東へ帰れるのか心配になった。