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010 電話 2005年 夏/中部

2ヵ月間仕事に集中した。

トラブルも収束へ向かい、プロジェクトは軌道へ乗り始めた。


ひどい目に合ったが怒りを仕事へ叩きつけた。

結果オーライだ。

『彼女』への怒りも収まり関心も無くなっていた。


関東の上司へ状況報告に帰った。

上司から言われた。


「後任が見つかった」

「3ヵ月後から後任へ引継ぎをしてほしい」

「中部へ残りたいか?」


『彼女』のいる中部はゴメンだ。


「関東へ戻ります。引継ぎは2週間で良いですか?」


了承された。



中部へ戻ると『彼女』からメールが来た。

今更なんだ?

とうぜん無視だな。


最近は仕事での深夜帰宅は無くなった。

家でビール飲んで寝よう。


中部での生活は落ち着いてきた。


翌週の夜に『彼女』から電話がかかって来た。

関東へ戻ることを伝え最後にしよう。


「もしもし」

「私さんこの前はごめんなさい。メール読んでくれた?」


「読んでないよ。しばらくしたら関東へ戻るから。これが最後だね」

「待って、待って、切らないで。話を聞いてほしいの」

「あんな事しておいて、聞いてもらえると思ってるの?」

「どうしていいのか分からないの。もうあなたしかいないの。えっえっ」


『彼女』が泣きはじめた。


『彼女』の捨て台詞を聞いて、気持ち良く別れるつもりだったのに。

自信家で、気が強く、引く事を知らない『彼女』が泣いている。


「……泣いてるの?」


「助けてよ! えっえっえっ」


「……話がまったく解らないよ。きちんと説明して」


『彼女』は泣きながら話はじめた。


「……あの日はヘルパンギーナで熱が出てたの。

 だけど病気の事を話せば、あなたは絶対に会わないと思ったの」

「そうだね。なにか食べ物買って家まで届けたかな」

「なぜ、わたしみたいな女に優しくするの?」

「……きっと彼女のことが知りたいだけだよ。多分好きになりかけてたんだと思う」

「…………」

「だけど関東へ帰るね」


「……いつまで中部にいられるの?」

「あと3ヵ月くらいかな。

 だけどあの時にきちんと説明してくれたら、途中でもやめて一緒に帰ったのに」

「仕事で疲れているあなたに、うつしたかもと思ったら急に怖くなったの。

 病気になっても会社休めないよね。言えなかったの」


「う~~ん。解りたくないけど分かった。あの時のことはもういいや。

 それで助けてほしいって、またしたいの?」


「お願い。また会ってほしいの。

 あの後病気でアルバイト休んでたらクビになったの。

 チャットもあなたが来てくれたら謝ろうとずっと待ってたのに来てくれないし、

 他の人もほとんど来なくなったの」


収入源が断たれたのか。

断ったら会社に乗り込んで来るかもしれない。

『彼女』の行動力は侮れない。


「関東に帰るまでだからね」


「許してくれてありがとう。もう、あなただけだったの。今週会いたいな」



なぜこうなった?



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