001 出会い 2003年 冬/関東
そう、出会いは突然だった。
『私』は仕事が忙しく、女性との付き合いに時間が取れなかった。
家に帰ると留守電に、20件以上のメッセージが残っていてうんざりした。
夜中、寝る間際の女性への電話も精神を削っていった。
「めんどくさい」
「休ませてくれ」
積極的な好意に疲れていた。
気持ちは伝わるのか、女性とは疎遠になっていった。
そんな頃、ネットでアダルトサイトを徘徊していた。
偶然アダルトチャットを発見した。
「こういうのがあるんだ。面白そう」
すぐに入会した。
数ヵ月、チャットして遊んでいた。
適度な距離感、そこが良かった。
そこに『彼女』が現れた。
童顔で、可愛い感じ。
気になってチャットを始めた。
知的で、気が強く、話好き。
好みのタイプだった。
それから何回もチャットしてるうちに、仲良くなっていった。
「私さん、すごく話しやすいね。他の人とはたまに気まずくなったりするの」
「気が強い人が好みなんだ。正直な感じでいいと思うけど」
「そんなこと言われたの初めて。もっと色々話したいな」
『彼女』以外とは、話さなくなっていた。
次回のチャットする時間も決めて話し続けた。
「わたしは関東に住んでるの。私さんは?」
「関東に住んでるよ」
「そうなんだ。すごく近いね」
「そうだね。近いね」
『彼女』に会ってみたい。
だけど普通に会ってくれるのかな?
冗談で聞いた。
「……3万円で会ってエッチしない?」
お金と引き換えなんて本当に酷い事を言ったものだ。
「……どうしようかな。お金に困ってるし」
「えっ?」
驚きながら返事を待っていた。
「私さんだったらいいかな。優しそうだし。メルアド教えるね」
『彼女』とメールの遣り取りをしながら逢う日を決めた。
『私』の写真を彼女へ送ったりもした。
それから『彼女』と逢えると思うと楽しかった。
だけど、騙されるかもしれないと思うのも楽しかった。
新鮮な日々だった。
そして逢う日がやって来た。