指名
実家に戻り、武器の制作をしていると、
「坊ちゃん、お客様です。」
使用人が呼びに来た。
客?そんな予定は無かったがと思いつつ、
「わかった、応接間に通してくれ。」
そう言って、腰を上げる。
「承知しました。」
使用人がさがっていく。
「お待たせしました。」
そう言って扉を開けるとそこには、体格のよい竜人族がいた。
「突然の訪問、申し訳ない。」
男は詫びた。
「いえいえ、お久しぶりですね、マスター。」
そこにはキョウ帝国ギルド本部の、ギルドマスターが居た。
「ナニワで活躍してたみたいだな。」
少し砕けた口調になった。
キョウ帝国で、俺は冒険者の仕事が無かった。元々魔族は強いほうだし、周辺の魔物には余裕で勝てる。だから依頼は少ない。有っても採取系や手伝い系だ。だからと言って冒険者がいないわけではない。ギルドももちろんある。ドラクロア領にも支部はある。
「なぜ本部のマスターが?」
そう、本部のマスターが来たのだ、何か有ったからこそだろう。
「先日の帝都での魔獣の件だ。」
要約すると、今回の魔獣の騒ぎ、これは明らかに人為的であるが、魔獣をこれほど捕縛して帝都まで運ぶとなると、目立つはず。だいたい普通捕縛出来ない。
魔獣を操れる存在が動いている、協力してくれないか?という事だ。
確かに魔獣を倒せる存在で、フリーな冒険者など、この国では俺くらいだろう。他は軍や国の重要ポストにいる。
「協力は良いが、アテがあるのか?」
帝国ですら情報を集めている段階だ。ギルドの情報網が優れているからといって、そんなに差があるとは思えない。
「いや、情報の方はまだだが、君には戦力として、さらに強くなって貰いたい。」
ん?さらに?
「それはどういう意味で?」
「神龍様が、君を指名だ!」




