訓練
連携の練習をしていた。
ティスティアの攻撃は、基本的にショットガン、ハンドガン、弓矢。
全部距離のある攻撃だ。
「近接戦闘は出来ないの?」
エリックが聞くと、
「斧や槍は、重くて使えないし、剣も振ると体制が崩れちゃって。」
申し訳なさげに言う。
一応解体用のナイフは持っているが、戦える様なものでは無いらしい。
そこは後々考えることにして、エリックは、普段近接戦闘だ。魔法が使えるのに、斬りつける方が好みだからだ。飛び散る血しぶきに快感を得てる変態では決して違う。
と言うことで、前衛エリック、後衛ティスティアとなるのは、自然な流れである。
訓練していて問題になったのが、ティスティアの体力である。
エルフは華奢である。
スピードは申し分無いのだが、体力が少し不安である。
「特訓だ!」
エリックの一言。
「最後は体力!」
ここ1番の場面、攻撃するにも、逃げるにしても、動けないと話にならない。
森の中を歩き回って疲れたとか、言い訳にもならない。
鬼教官の誕生だ。
短距離ダッシュさせて、そのままスクワットと腕立て伏せ。またダッシュ。それを1時間、休憩無しで、五分休憩を挟み、また1時間訓練。
「もう動けない…」
ティスティアが力無く呟いたのは、日が傾き、夕焼けの赤い空の時刻であった。
「だから背負ってやってるだろう。宿に着いたら飯食って風呂入って寝るぞ。」
「寝る?!いやらしい!」
「お前、何考えてんだ?このエロフが!」
「エロフってなによ!わたしはエ!ル!フ!」
「はいはい、いいから、風呂入った時に、筋肉ほぐしとけよ。まあ、明日は動けないだろうけどな。」
「痛い〜もうあちこち痛い。だいたいか弱い女性にあの訓練とかあり得ない。ムキムキになったら、どうしてくれるのよ!」
風呂場で、愚痴るティスティア。
エリックは、部屋でルビーに肉を食べさせていた。
訓練の間、森で勝手に動き回って狩りしてたはずなのだが、まだ食うらしい。
「お前、自分の体積と餌の量の比率、おかしくない?」
ルビーに聞くと、
「食べれるんだから、問題ない。」
らしい。
そんなこんなで、数日が過ぎていく。
「ガン爺できたかー!」
扉を開いて声をかける。
「出来とるぞ!」
そう言い奥から二振りの短剣を出してきた。
銀色に輝く鞘に収まった、銀色の柄も持ち、スッと抜く。
刃には曇り1つなく、歪みも無い。
「魔石は、柄の中に入っておる。その効果により、腐食し難く、剛性も高く、多少の刃こぼれをしても、数日で修復される。」説明を聞き頷く。
感謝の言葉を言い、料金を渡す。
「ティスティアには、俺が今まで使ってた短剣を1本渡しておく。」
帰り道で、エリックが言い、ティスティアに1本、銀の短剣を渡す。
「アースタイガーの首でも落とせた剣だ。そこらの安物とは、比べ物にならないハズだ。明日から短剣の訓練も追加だな。」
「鬼だ。」
「吸血鬼だからな〜ハッハッハッ〜」
エリックの意地悪い笑い声が響いた。




