タラテクト?
翌日、エリックは森の中にいた。
まあ、依頼ではなく、毎日のジョギングみたいな狩りである。
ゴブリン、オーク、ギガントデビュア(デカイゴキブリの魔物)、たいした運動にもならなかったが、準備運動程度にはなった。
1匹のホーンラビットを見つけ、アッサリ倒すと、
「昼飯はこいつにしよう。」
1人呟き、角と毛皮を取り除き、内臓を抜き取り、火を起こす。
いい匂いがしてきたときに、藪から小さな魔物がこちらを見ている事に気がついた。
掌ほどの大きさのハエトリ蜘蛛のような魔物。
「スモールレッドタラテクト?にしては、少し違うし、何だこいつ?肉食うか?」
タラテクト種は、蜘蛛の魔物で、何種類か存在する。大きさや色も多数あるが、弱い毒を持っていて、獣や虫をとって食べる魔物だ。人を襲うことは稀である。
ホーンラビットの肉を少しむしって、タラテクトの方に投げてやると、
ササッと動き、肉を両腕?で、挟みこみ齧りだす。
「腹減ってたのか。でも人前に出てくるとは、用心がなってないぞ。蜘蛛嫌いな奴なら、殺されてるから、注意しろよ。」
理解出来ないだろうがと思いながら言うと、コクコクと頭を縦に揺らす。
「ん?理解した?案外知能高いのか?もっと食うか?」
食べ終わったタラテクト?に、また話しかけると、タラテクト?は、さらに近づいてきて、頭部を縦に揺らした。
ホーンラビットの肉を腰の短剣で半分に切り、片方をタラテクトに投げてやる。
サササッとタラテクトは肉を掴み、食べ始める。エリックも肉に齧りつきながら、
「蜘蛛と一緒に飯食う吸血鬼とか、俺ぐらいだろうなぁ〜」
と、笑いながら呟いた。
肉を食い終わったタラテクトは、逃げるどころか、エリックに近づいてきて、ピョンっと、エリックの肩に飛び乗り、寝始めた。
「何だこいつ?ここで寝るのかよ?」
エリックは、呆れた声をあげた。




