魑魅魍魎という存在
街の門が見えた辺りでエリックは、
「一緒に入ると、貴方達の素性が俺にバレるので、先に俺が入ります。その方が良いでしょう?」
と、問いかける。
「なんかバレてる気がするけど、気遣い感謝する。」
「助けて頂いたのに、正式な名乗りもせず、申し訳ありません。この恩は必ずお返しします。」
剣士と、おそらく高貴な血筋であろう女性が答える。
「気にしないで。では縁が有ればまた。」
そう言いエリックは先に門に向かった。
後ろで皆が頭下げているのは、気配で分かったが、あえて見ないことにした。
門を通り、ガン爺の店に向かう。
「よう、魔石は準備できたのかい?」
店に入るなり、ガン爺が声をかけてきた。
「ああ、地属性の魔石だがいいよな?」
「問題ない。地属性なら、武器の強度が上がる。」
そう言われてカウンターに、アースタイガーの魔石を2つ置いた。
「こいつはアースタイガーか?」
「ああ、よく分かるな。森で狩ってきた。」
「アースタイガーの毛皮とかは、持って帰ってきてないのか?」
「あるぞ?何かに使うのか?」
「武器の素材に使いたいのだが、なかなか手に入らなくてな。値段も高いし、良ければ譲ってくれないか?」
「1匹分で良いのか?」
「出来れば2匹分欲しい。その分、武器の値段を負けるから!」
「オッケー!じゃあこれを。」
2匹分の毛皮をダンプポーチから取り出し、ガン爺に渡す。
「スゴイな。首以外に傷が無い。お前さん腕が良いな。」
「まあ、この程度の奴なら、単独で出てくればそのくらい出来るよ。」
単独なら、1発で首を落とすのは可能だ。複数なら、牽制などで首だけ狙うのは不可能だが、ガン爺に渡したのは、2匹とも単独で出てきたアースタイガーだ。
「1人で倒したんだろう?普通もっと傷だらけだぞ。てか、倒せるだけスゴイんだがな。」
「一応それなりの実力という事で」
笑いながらエリックが言う。
「じゃあ二週後に来てくれ。完成させておくから。代金はその時に。」
「了解した。よろしく頼む。」
そう言って店を出ると、ギルドに向かう。
ギルドに到着して受付で、依頼達成の報告と、素材の買取をお願いする。
「マジですか…」
魔石とアースタイガーの毛皮の量を見て、受付が言葉を詰まらせる。
他のギルド職員や、後ろにいた冒険者も目が点になっていた。
ようやく1人、我を取り戻した受付が、
「すいません、少々お待ちを」
そう言って奥に走って行った。
後ろが、
「おい、あれ、アースタイガーだよな?」
「ああ、間違いない。あいつあんなに大量にどこで狩ってきたんだ?いや、その前に、アースタイガーを、単独で倒せるもんなのか?」
「あいつヤベェ、絶対関わらないようにしよう」
なんか外野がうるさい。
奥から、ギルドマスターを連れて、受付が帰ってくる。
「マジか〜エリック、ちょっと奥で話聞かせてくれるか?、その間に鑑定させとくから。」
ギルドマスターが言うので、頷いてついて行く。
ギルドマスターに、森の様子を伝え、あの森おかしいと言うと。
「それだけ魔獣が出るとなると、魑魅魍魎が居る思われる」
そう言った。
「魑魅魍魎?」
「人型魔獣の事だ。獣型と区別するために我々はそう呼ぶ。
獣型魔獣は、魔物が進化したものだか、普通そんなに大量に発生しない。
だか、例外がある。
魑魅魍魎と呼ぶ、人型魔獣は、魔物を魔獣に変化させることができる。」
「じゃあ、あのまま奥に向かっていたら?」
「間違いなく魑魅魍魎に遭遇しただろう。危なかったな。魑魅魍魎には、普通の武器のでは倒せないのだ。特殊な武器でないとね。やれやれ、また仕事だ。」
「仕事?」
「ああ、魑魅魍魎を倒すのが、ギルドマスターの仕事だからな。そもそもギルドは当初、魑魅魍魎の情報を探るために組織されたのだよ。このような情報を得るためにね」
ギルドマスターが笑いながら言う。
「そんな秘密、俺に言っていいのかい?聞いたこともないよ?」
「構わんさ、君は言いふらしたりしないだろうし、強さ的に魔獣を倒せるから、情報を持ってきてもらえる。普通の冒険者なら、魔獣に遭遇したら、まず帰れないからね。」
「いつもはどうやって情報を?」
「何組も帰らないパーティがあれば、怪しいと睨んで、見に行く感じだな。あと、特殊な探知方法もあるが、これは秘密だ。」
「まあ、何でもかんでも言えないよな。オッケー、何か有れば言いにくるよ。」
エリックが言うと、
「頼む。あと、秘密が知りたければ教えてもいいんだぞ?ただし、我々の仲間になって貰うけどな。」
「めんどくさそうだし、遠慮しとくよ。」
「つれないな〜気が変わったら言ってくれよ、歓迎するから。」
「気が変わったらね。」
そう言ってエリックは部屋を出る。
受付によって、金を受け取り、ギルドを出る。
「さて、久々にベッドで寝るか。」
呟き、宿に向かった。




