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第4話  4月 1日(金) レベル1勇者が玄関の扉を開けたらキラーマシン2にお出迎えされたような状況だな

現在の所持スキル

①リーナマリーの身体能力

②そこそこの学者の知能

③そこそこのアイドルのメイク技能

④そこそこの料理人の調理

⑤そこそこの魔法使いの魔法

●目標「入学式に出よう」

●詳細「新入生代表挨拶というものがあるらしいので、それを手伝えとのこと」


「あんな立派な体育館があるのに外で入学式やるんだな」


「体育館に入りきれない生徒が入学したのかもね」


「あー、そう言えば3年くらい前に話題になってたな。あの『ジュワッ』としか喋らないヒーロー……ジュワワワジュワワ、ジュワジュワジュジュワワワワワ?」


「ジュワジュワうるさいわね、地上に出てきたセミ並の寿命にされたいの?」


 俺とリーナマリーはお喋りをしながら誘導員の後ろを歩いていた。入学式の場所が急遽変更になったと言うのだ。


 皇樹高校は広い。なにしろ色々なヒーローに対応するために、球技だけでも野球・サッカー・陸上はもちのロン、セパタクローやペタンクの専用コートも完備しているのだ。俺達が入ったのがその中でもひときわ大きい皇樹高校サッカースタジアム、別名『竜王の巣』である。


『ウワァァァァ!』『来たぞ! 西園寺リーナマリーと村主公人だ!』『生意気な新入生なんざやっちまえー!』『うぜぇ先輩ぶっつぶせー!』『リーナマリーちゃんブヒイイイイイイイ!』『パラッパラッパアアアアアア!』


 グラウンドに出た俺達を迎えたのは客席を埋め尽くした生徒の大歓声だった。上級生も新入生もいる。


「おいおい、何だこりゃドッキリか? 今から落とし穴にでも落とされるのか?」


「落とし穴なら千尋の谷じゃない分まだラッキーかもしれないわね……」


 ふと横を見ると隣のリーナマリーの様子がおかしい。スタジアムのある一点を険しい表情で睨みつけている。その視線を追うと、そこにはカイゼルヒゲが立派なオッサンの姿があった。そのオッサンはスタジアムの1番高い位置から俺の事を……いやリーナマリーの事を見下ろしている。


 俺はそのオッサンの顔に見覚えがあった。というか日本でこのオッサンの名前を知らない人間はモグリだろう。


「いきなり『世界最高のヒーロー 西園寺さいおんじ 竜王どらごんきんぐ』の登場とは驚いたねぇ」


「……『殺すつもりで育てよ』」


「あん?」


 俺の横でリーナマリーがポツリと物騒な事を言いはじめた。おいおいやめてくれよ、この世界には竜王はいても竜玉は無いんだぜ?


「私の家の家訓よ」


「へぇ、物騒なこって……ってちょっと待てよ?」


「キミト、強く生きてね?」


 リーナマリーが子供を守って死ぬカーチャン系の言葉をはいた。俺は「どういう意味だ?」と目で問いかける。リーナマリーは無言でグラウンドの中央、センターマークを指差した。


「やぁやぁ君達が今年の特待生かい?」


 そこにいたのは七三分けにグルグルメガネをかけた男だった。制服のバッジから三年であることがわかる。その七三は近づいてくる俺達に向かってペラペラと喋りはじめた。その喋り方は早口で、声の響きから神経質な雰囲気を漂わせている。


「二人のことは調べさせてもらったよ。戦闘以外全カテゴリートップの西園寺リーナマリー君、そして戦闘カテゴリートップで他のカテゴリーも優秀な村主公人君。いやはやとてもとーーーーっても優秀だ。まさに万能型」


 センターサークルの線上に到着した俺がリーナマリーに確認をする。


「おい、コイツから殺しても良いのか?」


「死にたいんならどうぞ、私は止めないわ」


「……お前がそんなに言うってことは、ただの頭の堅いやつじゃないってことか」


「そうね、頭だけじゃないわ……いや見る場所が違うわよ、なんで下半身見てるのよ」


「お、そうかもっと違う場所か」


 見た目は完全に奇天烈な発明小学生の隣に住んでる人なのだが、リーナマリーの言葉から察するに勉強カテゴリーのみが得意な人間というわけでは無いようだ。


 七三の外郎売りじみた喋りはますます興が乗ってきたようだ。どんどん早く、そして声もでかくなる。


「一学年に1人はいるんだよねぇ君達みたいに自分をなんでもできる天才だと思いこむやつ。そんな万能感なんて中学二年までにしとけっての!」


 七三の体がピシっと音を立てた。


「まあ僕のように溢れる才能を持っているというのであればその高慢も良しとしよう。だが僕のような素晴らしい才能を持つものですら皇樹高校入学後はカテゴリーを一本に絞った。それはなぜかっ!」


 ピシピシピシピキィっと七三の体が裂け、黒い鱗で全身が覆われた竜がズルリと現れた。


「それはお前らみたいな調子こいたビチクソをブッ殺すのが楽しいからだよ!」


「3年A組『魔王』カサルティリオ エウテュス……いきなり酷いのが出てきたわね」


 それを見上げながら俺は指をポキポキ鳴らして笑う。


「魔王か、いいね。皇樹高校に来た甲斐があったってもんだ」


『さあ始まりました皇樹高校入学式! 新入生代表挨拶は3つのカテゴリーでトップを取った【進撃の女帝】西園寺リーナマリーさんと戦闘カテゴリートップの【完璧なる模倣者】村主公人くん!』


 エウテュスの後ろの空に飛んでいるヘリから実況が聞こえてきた。その横にテレビカメラも視認できる。どうやらこの戦いはテレビ中継されるようだ。俺の二つ名は【完璧なる模倣者】かぁ……いいね、ジャンプのバスケかハンターの漫画っぽいね。


「それにしても入学式から自分の娘を宣伝しようだなんて、なんだかんだで学園長も優しいんだな」


「それは勝てればの話でしょ」


 ヘラヘラ笑う俺にリーナマリーが苦々しげな視線を向けてくる。俺はその視線を受け流してエウテュスを見上げた。


「安心しろよ。俺は『お前以外のやつに負ける気がしない』んでな」


 俺の言いたいことはどうやら通じたようだ、リーナマリーがコクリと頷いた。


「……わかったわ、必要なのは三分だったわね?」


「いいや、エウテュスが姿を現した時点でカウントを開始してたからあと2分だ」


 俺の答えを聞いたリーナマリーは満足気に微笑んだ。一方俺は内心で「なんで必要な時間が三分だってバレてんだよ」と苦笑する。


「さすが、抜かり無いわね」


「別に倒してしまっても構わねぇぞ?」


「考えとくわ」


 そう言ってリーナマリーは魔王に向かっていった。それを見送った俺はポツリと呟く。


「それにしてもいきなり魔王決戦とはね……次は原始時代にでも飛ばされるのかぁ?」


■目標「入学式に出よう」

■経過「『魔王』カサルティリオ エウテュス(読みにくい)との対決だ」

村主公人

「黒い風をワンワン泣かせてグランドリオンの錆にしてやる! 持ってないけどな!」


「あのセリフの時にEMIYAが流れれば勝ち確だったんだがなぁ」


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