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第35話  4月 5日(火) 三面楚歌

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②清愛先輩の愛が力

③狙撃手の狙撃能力

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


 階段を登りきった俺達を待っていたのはガラーンとした部屋だった。照明は今までと違って抑えめになっており薄暗い。


「さーて65階に来たわけだが。今度は何をさせられるんだ?」


 ロボット専用エリアに来てから既にクイズを解いて迷路を走っている。「今度はツイスターゲームでもさせられるのかな?」などと軽口を叩きながら俺は部屋を見渡した。


「ネーネー燕、アノ穴ッテ何ダト思ウー?」


『ん? そうだねぇ……ビー玉なんて平和な物が出てくるとは到底思えないねぇ』


 コッキー達がこの部屋の異変に気づいたようだ。俺はコッキーが指差していた方向、俺達から見て右側の壁を見る。


「これは……ずっと見てると気持ち悪くなってくるな」


 その壁には、ほぼ等間隔に●が開けられていた。イメージとしては音楽室の防音壁の穴を少し大きくした感じである。


「ア、左ニモアルヨ!」


 反対側の壁を見ると確かに壁に●が開けられている。


『何が出て来る穴なんだろうね?』


 燕さんの言葉に俺は肩をすくめる。


「ジョン・マルコヴィッチとか出て来るかもしれませんね」


「いやそれは有名俳優の頭に通じている穴を見つけた一般人の話だから。出てくるのはそこら辺のオバサンとかでしょ」


「……『ホラー』?」


 リーナマリーの映画『マルコヴィッチの穴』の説明を聞いたコッキーが頭に?マークを浮かべている。俺はその頭をポムポム叩きながら笑った。


「ジャンルはこの穴の意味と同じだよ」


「ドーイウ意味?」


「『意味不明』ってこった」


◆◆◆◆◆◆


「ドヤ顔でくっだらないこと言ってる暇があったら前に進みましょ」


 リーナマリーが3歩前に足を踏み出す。すると……


 ヒュッ!


「危ない!」


 リーナマリーは大きく二歩後ずさった! 


 ズザザッドスン!


「オポッ!?」


 そして俺の腹にはリーナマリーの肘がががが……


「て、てめえ何の恨みが……?」


 俺はうずくまって西野カナの歌のようにピクピク震えはじめた。


「ご、ごめんなさいキミト! 大丈夫!?」


「いや、まあ大丈夫……だけどちょっと……待ってくれぇ……」


 リーナマリーは滅茶苦茶心配そうに俺の背中をさする。しかし、不意の一撃を食らった俺は言葉を絞り出すことすら難儀していた。


「このままじゃキミトが死んじゃう!?」


 リーナマリーがアワアワしている。様子から察するに本当にわざとではないらしい。それにしてもこれくらいで「死んじゃう」とか頭の中でどんな方程式を辿ったのやら。


「……リリーどうして後ずさったの?」


 なおもアワアワしていたリーナマリーを落ち着かせるためなのか先輩がポンと肩に手を乗せた。


「そ、それが」


『ビー玉じゃなくて銃弾が飛んで来るとは、驚いたね』


「シカモ凄イ速カッタネー!」


  リーナマリーの説明よりも速く、燕さんとコッキーの会話で真相が明らかになった。燕さんとコッキーを「そ、そう、それよ!」っと指差すリーナマリー。


 そんなこんなで痛みが収まってきた俺は一息ついて立ち上がった。


「ふぅ……」


「……賢者タイム?」


「違います。ってか俺が死にかけの魚みたいにピクピクしてたの見えてたでしょ」


 先輩とのボケツッコミを終えて、俺は改めて部屋の状況を観察する。


「ん? 向かいの壁にスイッチが有るな」


 解りやすく壁に下方向の矢印が書いてある。その下には学校に置いてあるような机があり、赤色のスイッチが乗っていた。


『今度はアレを押すのかねぇ?』


「凄イ怪シイ!」


「お、賢いな、コッキー」


 コッキーでもわかるくらい怪しさ爆発なスイッチだが、他にあてもない。


「とりあえず先輩、さっきの銃をゴム弾にしたものもらえます?」


「……ん」


「ちょ、ちょっとキミト、自分で怪しいって思ってるのにスイッチ押すの!?」


 俺の意図をいち早く察知した西園寺姉妹の妹が騒いだ。


「そらもうそれ(この狙撃銃からゴム弾を撃ってスイッチを押す)よ。見ての通りよ」


 それに対して俺は今世紀始史上最高レベルの適当な返事をしつつ、姉の方から狙撃銃を受け取る。


 そして間髪入れずゴム弾を発射した。


◆◆◆◆◆◆


 ゴム弾はまっすぐスイッチに向かって飛ぶ! すると部屋の照明が赤く点滅しはじめる。そして機械音声も流れはじめた!


『ピピッ! 迎撃モード起動』


 部屋に「ゴゥン!」っと轟音が響く。壁の穴から一斉に銃弾が発射されたのだ。銃弾は本当にほぼ同時に発射されており一枚の壁のような弾幕を形成する。それを見たコッキーから抗議の声が上がる。


「ズルイヨー!」


「なぁに虫姫さまの弾幕に比べたら温い温い」


 そう言って俺は狙撃手を倒した時のようにゴム弾に付けていた糸を操作する。


『おお、ゴム弾が動いたよ!?』


 ゴム弾はスイスイと銃弾の壁をすり抜けた。


「よっしゃトドメだ!」


 俺が調子に乗った所で、ガシャンっと音がした。


『迎撃モードレベル2!』


「げっ!?」


 見るとスイッチの置いてある側の壁に無数の●が現れている。つまり今度は前の壁から銃弾が俺達の方に向けて発射されるわけ……か?


 固まっている俺をよそに、リーナマリーは危険を察知した野生動物のように動き出していた。


「ワワッ!?」


 コッキーを脇に抱きかかえたリーナマリーが先輩に確認を取る。


「清愛は自分でなんとかできるわね!?」


「……うん」


 そう言いながら先輩は自分の前に盾を作り始めていた。


「お、俺は!?」


 スイッチを押すべくゴム弾を操ってる俺に対して、リーナマリーはヒョイッと手を上げて応えた。


「キミトは強く生きてね!」


 そう言ってリーナマリーWITHコッキーは階段の方に走って行った。


「LINAMALLYYYYYYY!!!!?」「ゴゥン!」


 俺の叫びと、前の壁から銃弾が発射されたのは、ほぼ同時のタイミングだった。


◆◆◆◆◆◆


「いやーさすがキミト、よくあの場面から生還したわね」


「俺に掛ける言葉はそれだけか!?」


 俺は逃げ込んだ先の階段室でリーナマリーに対して食って掛かっていた。すると俺の頭に後ろからポンと手が乗せられた。


「……えらいえらい」


 なでなで、先輩が俺の頭を愛おしそうに撫でる。


「いや先輩そういう意味じゃなくてですね……」


「キミト頑張ッタ感動シタ!」


 わしわし! コッキーが俺の頭を雑に撫でる。


「はぁ……もういいよ」


 なでなで攻撃に俺は屈する。そして俺の後ろにいた燕さんにお礼を言った。


「燕さん、力を貸してくれてありがとうございました」


『お安い御用さ』


「ソーナノ?」


「そうだよ」


 銃弾が目前に迫った時、俺の頭の中には2つの選択肢があった。そこで俺は一瞬の間により確実性の高い方法を判断し、すぐさま範囲の広くなったコッキーのシャーマン能力を発動した。そして無事に燕さんの力を引き出し時を止め、命からがら階段の所まで逃げてきたというわけである。


『それにしても三方向から銃弾が飛んで来るなんて思いもしなかったねぇ』


「全くだ。垓下の項羽かっての」


「四面楚歌ね、ならあと一面くらい行けるかしら」


 そう言って銃弾が散乱している部屋へと進んだのはリーナマリーだった。


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「やったー! 項羽と呂布を足して2で割らない感じの頼もしさだーっ!」

ロイヤルスイッチ

『ドーモ。皆=サン。この部屋の守護を担当しているロイヤルスイッチでス。』


『名乗るタイミングが本編では無いのでここでしましタ。アイサツは決しておろそかにできなイ。古事記にもそう書かれていル』

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