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第34話  4月 5日(火) 竜王半端ないって 自分のスキルめっちゃレベルアップするもん。そんなんできひんやん普通

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②清愛先輩の愛が力

③狙撃手の狙撃能力

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


「くそぅ、中学時代はボッチでスキルについて教えてくれる奴いなかったもんなぁ……」


 俺はレイプ目で迷路から出る。そんな俺の隣でリーナマリーが必死にフォローを試みる。


「ま、まあスキルがレベルアップするなんて優秀なヒーローぐらいしか知らないんだからしかたないわよ。それにワタシだって中学時代は一人だったしね」


「マリオ姉チャン、ボッチダッタノ?」


「あっ」


 しかし自爆した。いや、これはもはや爆死と言ったほうがいいかもしれない。


「ちちち違うわよワタシがボッチだなんて!」


 顔を真っ赤にして両手を振るリーナマリー。迷路から出てきた俺達を見て、事情を知らない先輩が話についていけず小首をかしげている。


「……楽しそう」


「ソウナノ?」


 コッキーも先輩の真似をして小首をかしげる。


「ぐぬぬ」


 およそ美少女らしくないうめき声を出していたリーナマリーがボッチ仲間の俺に話を振ってきた。


「お、お楽しみだなんて冗談じゃないわ! ねぇキミト、あなたもそう思うでs」


 だが俺はここでリーナマリーの質問をスルー、燕さんにパスを出す。


「どう思います燕さん?」


『少なくともアタシは楽しいねぇ』


 ゴールである。俺は「Me too」と親指を立てる。


「KIMITOOOOOO!」


 梯子を外されたリーナマリーの怨嗟の声が64階に響いた。


◆◆◆◆◆◆


「悪かったって」


「ほんとーに悪いと思ってるの?」


 65階へと続く階段を後ろ向きに登りながら俺は手を合わせてリーナマリーに謝っていた。


 64階の扉はカードキーで開くことができたのだが、リーナマリーの心の扉は固く閉ざされてしまったようだ。リーナマリーは解りやすく頬をふくらませている。


「キミトってばさっきからワタシの扱い雑じゃない?」


 俺はその態度を見て口には出さなかったが「良かった。それほど怒ってないな」と思いながら謝り続ける。


「いやはや申し訳ない。瀬戸内海のような広い心を持ったリーナマリーの優しさに頼ってしまって……」


「微妙に狭いような気がするけど、まあいいわ許してあげる」


 リーナマリーは何だかんだ言っても優しいので予想通りあっさり許してくれた。


「おお瀬戸内寂聴のように穢れなきお言葉」


「それは嫌」


「……瀬戸口隆之ガンパレ?」


「その人の昔の名前デクだからヒーローものとしては危険なネタね。ってか清愛、ネタが古いわよ」


◆◆◆◆◆◆


『それでさリーナマリーちゃん。さっきアタシとコッキーに起きたスキルのレベルアップについてなんだけど……』


 一段落ついた所で燕さんが話しかけてきた。


「ああごめんねツバメ」


 そう言ってリーナマリーがスキルのレベルアップについて説明を始める。


「もうすぐ次の階に着くから簡単に説明するわよ。まず1つ目、スキルはレベルアップすると範囲が広がったり強力になったりするの」


 俺はリーナマリーの言葉を心の中で反芻しながら考える。


「えーっと、さっき燕さんが言ってた『コッキーは燕さんの能力を引き出せるようになって、燕さんはテニス以外でも時間を止められるようになった』ってやつがそれか?」


「ウン、イツモヨリ速ク動ケタ!」


 ワーイと両手を上げるコッキー。その後ろで燕さんが腕を組んでその時のことを思い出していた。


『あの時は無我夢中だったけど、テニス以外でも時が止められるとは思わなかったねぇ』


 二人の言葉にリーナマリーが頷く。


「そうね。説明の2つ目になるんだけど、スキルはピンチの時にレベルアップすると言われてるわ」


『あーなるほど。確かにあの時はピンチだったねぇ』


 リーナマリーの言葉に燕さんがポンっと手をたたく。


「そんなにピンチだったのか?」


「ソーダヨー」


 脳天気なコッキーの返事、しかし次に出た言葉はまさに九死に一生レベルだった。


「Ratノ前歯デ首チョンパ寸前ダッタンダヨー」


「!?」「!?」


 その場にいなかった俺と先輩が固まった。リーナマリーはその時の事を思い出しているらしく深く息をはいた。


「ホント危なかったわ、まさかあのネズミにあんなに高い戦闘能力があったなんてね……」


『まさに窮鼠猫を噛むって感じだったねぇ!』


 燕さんがカッカッカと笑う。コッキーも熟語の意味が解らなかったのかとりあえず「噛ムー」と喜んでいる。そんな様子を俺と先輩は呆れた顔で眺めていた。


「ま、まあ無事で何よりだったな……」


『それじゃあ、スキルについての説明はそれで終わりかい?』


「あ、最後に大事な説明があるわ」


『おや、そうなのかい?』


 俺は会話を聞きながら「1つ目がスキルが強化、2つ目がピンチでレベルアップだったな」と再度頭の中で整理した。


「これが一番大事なんだけど、レベルアップの上限というものは今のところ解っていないのよ」


「……ドウイウコトー?」


『今まででスキルのレベルアップ上限に達した人物がいないってことかい?』


「そうね」


 燕さんの言葉にリーナマリーが頷く。


「あれ? ってことはまさか竜王も?」


 再度リーナマリーが頷いた。


「ええ、パ……竜王は未だにレベルアップしてるわ」


「……415411」


「…………………………へ?」


 先輩が言った数字に思わず俺はマヌケな声で聞き返してしまった。


「じょ、冗談ですよね先輩?」


 俺の言葉に先輩は首をフルフルと横に降った。そして驚愕の事実を言い放った。


「……竜王のレベル」


「マ、マジかよ」


 俺はそれしか言えなかった。しかし、リーナマリーは動じていない。むしろ「あ、またレベルに上がってるんだ?」などと言っている。


「スゴーイ!」


 純粋なコッキーは竜王のレベルの高さにキャッキャと喜んでいる。その後ろで燕さんがしみじみとつぶやいた。


『何というか、今のこの国は物凄い人物が治めてるんだねぇ』


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「竜王の能力が『大根の桂剥きを1メートルできる』って能力だったら面白いのにな」

佐藤野辺 燕

『この歳……というか霊になっても成長するとはね』


『いやはやこの世は奥が深い』

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