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第33・5話 時間停止の1番の利点は思考時間の延長だと思う

「次ハコッキーダヨ! エッ!? メインダト読ミヅラソウ? 大丈夫、心情ノ部分ハ普通ダヨ!」

挿絵(By みてみん)


『ハハッ! その首モーライ♪』


「キャッ!?」


『コッキー!?』


 向こうの角から出てきた燕が手を伸ばしている。しかしもう遅かった。「動ケ!」と強く願っても、ジブンの喉に迫って来る刃への恐怖からか身体は思うように動いてくれない。


 これは……もうだめかもしれない。『クッソオオオオ!』という燕の叫びが遠くから聞こえてくる。


 ごめんね……燕とジブンのグランドスラム制覇の夢……叶えられそうにないよ……


 テレレ テッテッテー


 人間というものは死を悟ると幻聴まで聞こえるものらしい。そんな事を考えながらジブンは目を閉じてネズミの刃が喉に到達する時を待った。


◆◆◆◆◆◆


「…………………………………………アレ?」


 いつまでたっても攻撃が来ないので薄っすらと目を開ける。するとジブンの首の前、数ミリの場所で静止している刃が見えた。


「ヒエー」


 足が竦み上がった。どうしよう、動きたいけど下手に動いたら……


『コッキー!』


「ウェ!?」


 横からいきなり声をかけられ、尻もちをついてしまう。お尻は痛かったが、切っ先が喉にかすらなかったのは不幸中の幸いだろう。


『だ、大丈夫かい!?』


 動くようになった身体で見上げると燕が心配そうな顔でこちらを見ていた。


「ウ、ウン大丈夫ダヨ」


『良かった……』


 燕が安堵の表情を見せた。それを見てジブンはフフッと笑い、改めて周りを見渡した。ネズミだけではない、向こう側の通路にいるマリオ姉チャンも止まっている。


「コレッテ?」


 燕は首を左右に振った。


『解らない……けどこれはアタシの能力みたいだね』


「ヘー! テニス以外デモデキタンダー!」


 燕は苦笑いを浮かべる。


『そんなのができたらあんな必死に叫びゃしないよぉ』


「ア、ソッカナルホドー」


『それにコッキーも今までできなかった事をできるようになってんじゃないのさ』


「ヘ? オ、オ漏ラシノ我慢トカ!?」


 燕の指摘にお間抜けな声が出る。刃を怖がって目を瞑っているだけだったジブンが何を成長したと言うんだろうか?……いや本当にお漏らしは無いよ……最近は。


『誰もそんなこと言っちゃいないよ……えーっと、まず始めに時間停止した世界でコッキーが動けてるのは何でだい?』


「エーット、燕ガ憑依シテルカラ?」


 燕が一人で発動した時間停止だとジブンは動けない。だからこれはジブンに燕を憑依させたことによる時間停止だ。


『そう、そして今までのコッキーだったらあの距離でアタシを憑依させられないでしょ?』


「……アー、ソウ言エバソウダッタネ!」


 言われてみると、背後にいるくらいの距離でないとジブンは燕を憑依させることができない。


『やれやれ……』


 燕は呆れた口調とは裏腹に微笑む。ジブンは燕のこの表情が大好きだ。遠い昔に知ることができなかった温もりを感じることができるから……


『さて、自体の把握が済んだところで……コレどうする?』


 燕がそう言いいながら歩いてネズミの横まで行きその頭をポンポンと叩く。


「ウーン、燕ハ勝テルト思ウ?」


『ちょっと無理だね。何しろアタシ達は戦闘に関してはからっきしだからねぇ』


「ソーダネー」


 燕の言うことはもっともだ。格闘家の霊でも近くにいれば別だが、そんな都合よく格闘家の霊がいるわけが無い。


『かと言ってこのまま走らせると先程からズゴゴゴゴゴとお腹を鳴らせていた公人ちゃんの方に進んじゃうからマズイねぇ。っとなると……まずは距離と速さを元に……リーナマリーちゃんの理解力も考えて……』


 燕が何やら考え始めた。普段の様子からは想像できないが。燕の状況把握能力と作戦立案能力は非常に高い。テニスの試合でも彼我の状況から絶対に返せないコースを見つけるのが得意なのだ。


『よし、コッキーちょっと……』


「ハーイ」


 燕が手招きをする。近づくと燕が小さな声で耳打ちしてきた。


『こんなのどうかな? コショコショ』


「……ウン、解ッタ!」


 こうしてジブン達は準備に取り掛かったのである。

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