第33・2話 テレレ テッテッテー
『どうやってネズミを捕まえたのか、三人の視点から話していくよ。まずはアタシこと佐藤野辺 燕からだね』
『ハハッ僕を捕まえようったってそうは行かないでチュウ!』
2つ向こうの曲がり角で声が聞こえる。眼鏡による透視によって赤い洋服に身を包んだ二足歩行の黒いネズミがアタシの方向に走ってくるのが見えた。
『想像以上にマズイ姿だねぇ……おや? でも顔は水木しげるテイストかい』
そう言いながらネズミの進行方向を塞ぐ。
「待テー!」
目で確認する暇はないが声で判断するにコッキーもこのネズミを追ってきているようだ。
『ゲロマズなのは君たちさ! 何しろ僕を捕まえなければ上の階にはいけないんだからネ!』
そう言ってネズミはアタシの1つ前の角を曲って消えた。なるほど、先程ネズミを追っていたリーナマリーちゃんが肩で息をしていただけあって結構なスピードだ。
「燕! ドッチ!?」
追ってきたコッキーに指で方向を教えた。コッキーは頷いてネズミの進んだ曲がり角から後を追う。
『ネズミはアタシを人間だと誤認して方角を西に変えたよ!』
皆に報告した後、アタシは自分のすぐ横の道を走り始めた。
◆◆◆◆◆◆
「もうすぐそっちと合流するわ!」
「……もうすぐ北側通路閉鎖」
リーナマリーちゃんと清愛ちゃんの通信が入ってくる。着々と包囲網が形成されているようだ。
『あれれ~おかしいゾ~? コッチには壁はなかったはずなんだけど……どこのビチクソの仕業DIE?』
壁の向こうからそんな声が聞こえてきた。こういう芸当ができるのは清愛ちゃんと、あと一人しかいない。
『抜け道を塞いだのかい。公人ちゃんは本当に高1かってくらい的確な仕事するねぇ』
これは千載一遇の好機ってやつだ。アタシはコッキーと皆に通信を送った。
『ネズミと壁を挟んで平行に移動、コッキーと挟み撃ちするよ!』
「オッケー任セテ燕!」
アタシの声はネズミにも聞こえたらしい。不敵な言葉が聞こえた。
『そんなに僕を捕まえたいのカイ!? 全くスーパースターも楽じゃないネ!』
◆◆◆◆◆◆
数秒後、壁の向こうでコッキーがネズミに追いついたようだ。会話が聞こえてくる。
『おや? リロ・ペレカイ?』
「違ウヨ! コッキー・ニャンゾイダヨ!?」
『ハハッ君が誰かなんてどうでもいいさ! グッバイアリス! 僕は逃げる! 時計を持ったウサギのようにネ!』
ネズミが再びアタシの方に走ってくる!
『ハッハッハ どこへ行こうというんだい?』
アタシは『久しぶりだね』とばかりに立ちふさがった。
だがしかし、笑ってられたのもここまでだった。
『……ハハッ』
絶体絶命なはずのネズミが笑った。いや、嗤った。
『どこへ行くかだって? 面白い冗談ダネ』
ネズミの歯が伸びて、日本刀のようになる。それをアタシは苦笑いを浮かべる。
『ッ!? いい顔になったじゃないのさ。完全に狩る側の顔だねぇ』
『本気狩ソード、ウォールト……違った創造主につけてもらった猛毒の刃サ!』
『子供が見たら泣くねぇ』
『ハハッ僕はスーパースター、つまり子供に夢を与えるのが仕事サ……』
そう言ってネズミは踵を返して走り出した!
『しまった!?』
アタシも必死に追いかける! しかし、致命的な反応の遅れだった。
『つまり子供が「DIE」好きなのサ!』
その曲がり角の先にはっ!?
『ハハッ! その首モーライ♪』
「キャッ!?」
『コッキー!?』
アタシが角を曲った先には、絶望的な光景が広がっていた。
コッキーに刃を振りかざして襲いかかるネズミの姿……全速力で走ってきたコッキーは角から飛び出してきたネズミに驚き、反応することができない!
『クッソオオオオ!』
絶体絶命だった。それでもアタシは諦めずに足を踏み出し! 手を伸ばす!
冗談じゃない! 二人の夢をこんなところで……手放してたまるもんかああああああああ!
テレレ テッテッテー
『え?』
その時、アタシの中で変な音が鳴り響き、世界が無音となった。




