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第3.5話 それはきっと誰かの思い出

過去バナ!

 俺は街を走っていた。


 誰かのためじゃなく自分のためだ。


 幼い頃に「ぜったいにシュジンコウになろう」そう決意してから俺は毎日欠かさず街を走り、心技体を鍛えている。それはどんなスキルが発現しても良いように、どんな相手にも勝てるように……


 いや、嘘だ。走らなければ怖かったのだ。ヒーローの素質のある者は遅くとも15歳までにその力が発現する。だが小学校を卒業し中学に入学、そして中学二年を迎え、俺に残された時間はあと1日となっていた。


 俺は足を速める。急いでもスキルが発現するわけではない。これは完全に素質の問題だ。更に足を速める。もはや全力疾走だ。


 前から走ってきていた少女とすれ違う。顔は見ていない。そんな余裕はなかった。


◆◆◆◆◆◆


 私は街を走っていた。


 自分のためではなく誰かのためだ。


 西園寺竜王の娘として幼い頃からヒーローであること義務付けられていた私は、生まれた時から『成長』のスキルが発現していた。それ以来、休むこと無くパパに決められた訓練をこなしプロのヒーローとして活躍している。誰にも負ける気はしなかった……


 どんな人間でも置いてきぼりにしてしまうこのスキル、このスキルのせいで友人という名だった他人は離れていった。


 たった今すれ違った少年すら顔を伏せている。私の顔を知っているからかしら。私は自嘲気味に笑う。


 私は世界にたった1人だ。


◆◆◆◆◆◆


 長い全力疾走を終えた俺はゼーハー言いながら公園のベンチに腰を下ろした。空を見上げる。曇天だ。あぁ最悪だ。雨でも降りそうじゃねぇか。


 俺は「あー……」と声を出す。阿呆のように声を出す。遠く離れたベンチに誰かが座っていたが、そんなのは気にしてられなかった。ただただ残酷な現実に対して「あぁー……」と声を出していた。


◆◆◆◆◆◆


 パパの寄越した迎えのリムジンが公園の入口に到着した。俯いていた私はベンチを立って歩きはじめる。ドアが自動で開き、乗り込む。執事に「出して」と伝えるとスーッと走り始めた。


 その時、公園の中から新たなスキル発現の波動を感じた。スキルが既に発現している者は新たなヒーローの誕生が分かるのだ。だが私は「行って」と執事に告げた。


 どんなヒーローが生まれようと関係ないわ。どうせ一瞬だって私に追いつける人なんていないのだから……

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