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第30話  4月 5日(火) 少女革命ニャンゾイ

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②清愛先輩の愛が力

③狙撃手の狙撃能力

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


 ピンポーンと音が鳴り、俺達の行方を阻んでいたシャッターがガラガラと上昇し始めた。


「意外だな」


 絶対に出してくれないと予想してリーナマリーのスキルの更新と先輩のスキルをコピーしておいたんだが……いや、それ以上に意外なのは……


「行コ」


 階段に向かって歩き始めたコッキーが簡潔な言葉で俺達を促す。


「あ、あぁ」「う、うん」「……」


 いつもと違う雰囲気のコッキーに引っ張られるように俺達は階段へと歩き始めた。


◆◆◆◆◆◆


 俺達は階段を登っている。西園寺姉妹が先頭でその後ろにコッキー、最後尾に俺と燕さんが並んでいる。前を進む三人の背中で、コッキーの背中だけ元気が無いように見えるのは、気のせいではないだろう。


「こういう事だったんですね?」


 俺はコッキーには聞こえないように、小声で燕さんに話しかけた。


『まーねー』


 燕さんは頭の後ろで両手を組んで答える。


 俺の言っている「こういう事」とは三男ビッグマウスをコッキーが目撃した時に燕さんが『ま、故郷で色々あったのさ』と言っていたことを指している。


 正直『故郷で色々あった』ってレベルじゃないと思うのだが、そういうツッコミは置いといて、俺はハンニャコッタ共和国について気になっていたことを聞いてみた。


「ハンニャコッタ共和国ってたしか革命で滅ぼされたんですよね?」


 俺はハンニャコッタ共和国について大した知識は持っていない。だが、数年前のニュースで「中東の小国だったハンニャコッタ共和国が革命によって政権が打倒され、近くの大国に併呑された」と連日報道されていたことは覚えていた。


『そうだよ。そしてお察しの通り大統領はコッキーの父親さ』


「なるほどなぁ」


 コッキーは既にそういう場面を遭遇したことがあったんだな。どおりでビッグマウスを見た時の反応が薄かったわけだ。


 一人納得している俺を見て、燕さんが複雑な表情で聞いてきた。


『……信じてやってくれるかい?』


 どうやら、俺がコッキーに対して良からぬ感情を持つのではないかと心配しているらしい。優しい人だな。俺はフッと笑って答えた。


「信じるも信じないもねぇさ。コッキーはあそこで間違えることもできたんだ。それに」


『それに?』


「俺はコッキーの育ての親のことは信頼してるんでな」


 コッキーがクイズに答えている時の燕さんの表情は本当に辛そうだった。それを見て『この人物は信頼に足る』と俺の直感が判断したのだ。俺のこういう直感は外れたことがない。


『……そうかい』


 燕さんはホッと息を吐いて。暖かい笑顔を見せた。


「階段が終わるわ、いきなり攻撃してくるかもしれないから気をつけなさいよ!?」


 先頭を行くリーナマリーの声が聞こえる。俺は空気を切り替えるために道化ける。


「おう、そっちこそいきなりスリーサイズ聞かれても良いように準備しとけよー?」


「ばかきらいさいてー信じらんない!」


 階段が終わり、俺達は63階に到着する。


◆◆◆◆◆◆


「ここは、研究室かしら?」


 辺りを見渡したリーナマリーが誰とはなしに呟く。63階は62階と同じく1つの大きなフロアで構成されていた。


『病的なくらい真っ白だねー。壁も白一色、照明も強い白色で目がチカチカするよ』


 燕さんの感想に俺も同意する。


「一応白を基調とした部屋ってのは清潔感を出すのに有効だが……ここまで『まっしろわーるど』だと無機質すぎだよなぁ」


 天井からは電源供給のためだろうか、これまた白いコンセントがぶら下がっており、それにつながれたコードはどこかで見たような光線銃に接続されている。


「……ロボット?」


 先輩が部屋の隅に乱雑に積まれていた金属の山を見て呟く。


「どれです?」


 俺もそこに近づいてしゃがみ、1つの棒状の物体を拾い上げた。


「確かに先輩の言うとおり、これはロボットの腕ですね」


 幹部の連中もここで作られたのだろうか?


「ウワァ……」


 いつの間にか俺の横まで来ていたコッキーが小さく悲鳴のような声を上げた。俺はポンとコッキーの頭に手を置いて菩薩の様な笑顔で言い放つ。


「辛かったら目をつぶっていても良いんだぞ? その間にエロいことするけどなァッ!?」


「エェーッ!?」


 優しい表情から一転、一匹のウルフルンとなって襲いかかろうとした俺を見てコッキーが今度は普通の悲鳴を上げる。


(ブオンッ!)


「おおっとぉ!?」


 俺の頭があった場所を、これまたどこかで見たような光線が飛んで行く。場を和ませるための軽いボケに対してこんな激しいツッコミを入れてくるのは一人しかいない。


「……外しちゃったか」


 舌打ちをしている犯人のいる方に俺はゆっくりと振り向き、捲し立てる。


「へいへーい! 当たったらどうするつもりだリーナマリー?」


「私が恋華ちゃんのお姉ちゃんになるだけよ!」


「……三姉妹?」


「ダメだ! カーチャンはやるけど恋華はやらん!」


 ワンワンギャーギャーと馬鹿なことを叫んでいる俺、ツーンとしているリーナマリー、横で小首を傾げている先輩。そんな三人の様子を見たコッキーがクスリと笑った。


 よーし、今泣いた烏がもう笑ったぞ。それをチラリと横目で確認した俺は元気よく宣言した。


「さて、それじゃあ次の階に行くとしますかね!」


◆◆◆◆◆◆


「楽シイネー!」


 64階に到着。すっかり元気を取り戻したコッキーが走りまわる。


「おーい見失っちまうからあんまり遠くに行かないようにしろよー?」


「大丈夫ダヨー!」


 言ってるそばからコッキーの姿が壁に隠れて見えなくなってしまった。


「おーいどこだー!?」


「コッチコッチー!」


 まあ声は聞こえるから追うことはできるが……俺は前後左右にある壁・壁・壁を見渡してため息をついた。


「クイズの次はグッジョバじみた工場見学で、今度は『コレ』か。万象ビルはいつの間によみうりランドになったのかねぇ?」


「……戦慄迷宮?」


「それはちょっと西に行ったところの遊園地ね」


 そう、万象ビルの64階は幾つもの壁によって仕切られた迷路だったのだ。


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「最近流行ってるお化け屋敷の要素をかけ合わせたのじゃなけりゃ良いんだがなぁ」

コッキー・ニャンゾイ

「キミト マイフレンド」


「イヤ、モットソレ以上ノ?」

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