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第26話  4月 5日(火) 超スピードッ!?

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②そこそこの学者の知能

③狙撃手の狙撃能力

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


「『万象ビル』70階建ての高層ビル。10階から50階までが工場エリア、50階から60階までが人間エリア、そしてそれ以上の階は現在に至るまで鳩山雪夫以外の人間が足を踏み入れたことが無いロボット専用エリアと言われているわ」


 俺達は万象ビルに向かって歩いていた。その道すがらリーナマリーから万象ビルの説明を聞いている。


「人より機械のほうが上なのか?」


『あら、公人ちゃんは人間絶対主義なの? 幽霊とかイジメちゃうのかしら?』


 燕さんがウーラーメーシーヤーと笑顔で迫ってくる。


「いえ、俺は……まあ、博愛主義ですよ」


「ハクアイ?」


「……皆大好き」


 先輩の言葉に「オー」と感嘆の声を上げるコッキー。


「コッキーモキミト好キー!」


 そして俺の右腕に抱きついてきた。ウッ、体型に不釣り合いな双丘がムニュッと潰れてこれは……


「説明を続けてもいいかしら?」


 左腕にモニュっとした感触、顔を向けるとリーナマリーが頬を染めながら左腕をホールドしていた。


「あ、ああ」


 しどろもどろになる俺、しょうがないじゃん。男の子だもん。


「さっき説明した工場エリアなんだけど、鳩山エレクトロニクスのHPを見ると本社に工場機能があるなんて書いて無いのよね……」


「えーっと……つまり万象ビルで非合法なロボを作ってる可能性が高いわけか」


「……増援無限?」


 リーナマリーが真面目な顔で先輩の質問に頷く。


「そのとおり、工場はしっかり殲滅しておかないと挟み撃ちされる可能性が高いわね」


「まあ簡単に行かないって事はさっきの戦いで嫌ってほどわかったからなぁ」


 そうこう話している内に、俺達は万象ビルの芝生の前まで到着した。腰くらいの高さまで生い茂ったツツジに身を隠しながら俺達はビルの様子を伺う。


 するとコッキーがすぐさま異変を察知した。


「ネェキミト、アレ蜂?」


「……いや、れっきとした敵さんの見張りだよ」


 その物体を凝視する。蜂のように見えたのは小型の飛行ロボットだった。ビルの周りをせわしなく飛び回っている。


「数はざっと151匹ってところね。一々かまってたら日が明けちゃうわ。清愛、何とかできる?」


「……もうしてる」


 先輩がいつのまにか握っていた拡声器のボタンを押すと、『ゲットダゼ!』という音声が流れ、小型の飛行ロボットがボタボタと地面に落ちた。


「……電磁波」


「ラブオ姉チャン凄イ!」


 それを見たコッキーがまたまた感嘆の声を上げる。


「……もっと褒めて崇め奉ってもいいのよ?」


「ぶっ!?」


 先輩の意外な反撃にリーナマリーが噴き出す。


「ハッハッハ一本取られたなリーナマリー!……さぁて、10年未踏の引きこもりの部屋にズカズカ入るカーチャンのように襲撃をかけるとしましょうかね」


◆◆◆◆◆◆


『ロボット、人間を含めた社員の皆さん御機嫌よう。お気付きのとおり、本日は可愛いお嬢さんがいらっしゃっております。しかし、僕ちんは招いた覚えもなければ歓迎するつもりもございません。皆様の健康で健やかな業務に支障無きよう害虫駆除にご協力ください。もちろん貢献された社員の方には素晴らしいプレゼントを用意しておりますよ』


 建物内に鳩山雪夫の声が響き渡る。


『死にたい奴からかかってきなさい!』


 そしてリーナマリーの怒号も壁越しに響いてきた。


「俺が先輩を抱えて階段を昇るのとほぼ同じペースかよ……」


「マリオ姉チャン、皆殺シシテルノカナ?」


 後ろを付いてきているコッキーが物騒な言葉を口にする。


「ハハまさかそんな……ど、どうなんですか教授!?」


 ここで再びリーナマリーの声が聞こえた……上の階から。


『侮らないで! この程度の敵を殲滅せずして何がヒーローよ! このビル全てのロボット? は、ワタシを倒したければその三倍は持ってこいという話よ!』


 それを聞いた先輩が『処置なし』といった風に首を横に振る。


「……ブチ切れ金剛」


 後ろにいる先輩から北朝鮮並みの無慈悲な遺憾の意が炸裂。俺は「紅茶が飲ミタイネー!?」と意味不明な言葉を発し、(両手が塞がっているので)内心で頭を抱えた。


「いやまあ確かに罰ゲームとして正面玄関から一人で突撃って言ったのは俺だけどさ」


 そう、俺達は作戦を立て、ビルの前で二手に分かれたのだ。


 その作戦を説明するとこうなる。

 ①俺が戦闘能力の低い先輩とコッキーを連れて裏にある階段を駆け上がり、

 ②リーナマリーが正面で敵を引き付けつつ殲滅前進、

 ③そして51階の人間エリアで合流、という手はずだ。


 こう書くとリーナマリーを囮にしたヒドい作戦のように見えるが、何度考えても効率的かつ成功率の高い方法がこれしか無かったのである。


 もちろん、リーナマリーが苦戦するような敵と遭遇した場合はすぐさま俺が助けに向かう予定……なのだが、今のところその必要はないようだ。なぜなら……


『フフフフ、ワタシこそが戦いの王女様!』


 先程よりも上の階からリーナマリーの声が聞こえてきた。


「やっぱり怒ってる……よなぁ……」


「キミトヒドーイ」


 ケラケラと笑うコッキーに、弱々しく俺は反論する。


「黙れ小僧、俺は悪くねぇ!」


「……大丈夫」


 どこぞの親善大使のように精神崩壊(?)しかけたところで先輩の優しい言葉が耳をくすぐった。うん、精神に優しい、そして背中がモニュっと柔らかい。


「ですかね?」


「……他人には怒らない」


 先輩の言葉は理解するのに時間がかかる。この場合、予想される主語はリーナマリーだから……俺は言葉の足りない阪神の監督どんでんの言葉を必死に補足するデイリー新聞の記者のように頭を回転させた。


「えーとつまり『リーナマリーは俺達に怒ってるんじゃなくて不甲斐ない自分に怒ってる』ってことですか?」


 後ろで先輩が頷く気配がした。


『そりゃまあ難儀な性格だねぇ』


 コッキーの後ろの燕さんが呆れている。


「昔の自分を思い出しますか?」


『……言うねぇ公人ちゃん!』


 燕さんがカッカッカと笑った。


◆◆◆◆◆◆


『僕ちんが命ずる! その糞女を止めろ! 止めろオオオオオオ!』


 即落ち2コマのような鳩山雪夫の絶叫を聞きながら俺達は階段を登っていく。どうやら表側でかなりリーナマリーが暴れているようだ。


『STOP』


 そろそろ50階かという所で両手がマシンガンになった警備ロボットが2体、階段を塞ぐように立っていた。


「キミト、ドウスルノ!?」


「こうするのさ、見てろぉ?」


 俺は先輩を降ろした後、両手を上げてロボットに向かって走りはじめる! そして大きな声で叫んだ!


「助けてくださぁい! 集団ストーカーに殺されそうになっていますー!」


『……WHAT?』


 いきなり助けを求められた上に『集団ストーカー』などという謎の単語を浴びせられた警備ロボットが一瞬固まる。


「じゃあ、死のうか」


 その一瞬の隙を逃さず俺は跳躍、ムチのような蹴りで警備ロボットの頭を刈り取った。


「次は『ラ・ヨダソウ・スティアーナ』とか言いながら突っ込んでみるかな」


 俺は着地してドアを見る。そこには数字で51と書いてあった。やっぱりさっきのは人間エリアへの侵入を防ぐ警備ロボットだったか。


「……キミトさんかっこいい」


 コッキーに手を引かれてやってきた先輩が目を輝かせている。俺は「やめてください照れますって」と返事をしながら扉を開けた。


 するとそこには……


「あーら遅かったじゃないキミト、しかもだらしない顔して疲れたのかしら? こっちは時間が余りすぎて紅茶を飲んで待ってたのよ?」


 自販機で買った紅茶を優雅に飲むリーナマリーの姿があった。そんな姿を見て俺は苦笑いを浮かべつつ、最大級の賛辞を送った。


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「……お前頭おかしいよ」

西園寺リーナマリー(戦いながら)

「べ、別にキミトのために頑張ったわけじゃないんだからね!?」


「そ、そうよ! 紅茶って単語が階段の方から聞こえてちょっと飲みたいなーって思っただけよ!」

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