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第23話  4月 5日(火) ジャッカル達の夜

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②そこそこの学者の知能

③そこそこのアイドルのメイク技能

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


「ありがとうノビ太先輩! リップバーン先輩!」


 心の師に感謝っ……!圧倒的感謝っ……! を述べながら俺は森の中を順調に進んでいた。万象ビルまで残り150メートル、途中何度か撃たれたがこの距離までなら、なんとか避けることができた。


「攻撃されっぱなしってのは性に合わないんだが、銃ってのを撃ったことねぇからコピーしないことにはどうにもならねぇしなぁ……」


 ぶっちゃけて言うと姿を見せない狙撃手というのはコピースキルの天敵である。そのため昔から狙撃手に関する知識取得には結構な時間を割いてきた。結論から言うとその判断は間違ってなかったと言える。それがなければ道中でナメック星でのフリーザのように身体を切り裂かれていただろう。


「自分の腕に絶対の自信を持った敵さんが相手なのは幸か不幸か……」


 俺は手ごろな岩から半分だけ顔を出して敵を見続ける。コピーってのは便利なスキルなんだが視界に捉え続けなければならないってのは大変だなぁ。ちなみに現在コピー完了まで残り10秒となっている。


「まあ今回は万象ビルの屋上にいる豆粒のような敵さんを視界に入れておけばコピーできるんだから楽なもんだな……」


 万象ビルの屋上が光った!


「ただ姿を見せてるってことはそれだけ強敵である証左でもあるんだけどな!」


 正確に顔を狙って飛んできた光線を避ける。このタイミングで俺は岩陰を飛び出して走りはじめた。2……1……0!


「よし、コピー完了! スキルも確認! これで一転攻勢の準備完了!」


 光線により焼き切られた岩の熱を背に感じながら俺は万象ビルの左側から一気に距離を詰めた。二発目が来る可能性は考慮する必要はない。なぜなら敵から光線が放たれたと同時に万象ビルを挟んで逆の方角から弾丸ズガガガンと三発発射され、それを敵は撃ち落としていたからだ。


「リーナマリーの奴、同時発射の数がドンドン増えてんじゃねぇか……」


 俺は半ば呆れながらその様子を眺める。もちろん先程の弾丸はリーナマリーの仕業だ。二発、三発と弾丸が増えているのは成長スキルの賜物なのだろう。


「ほんっと恐ろしい味方だな」


 俺は内心でリーナマリーの成長スキルの恐ろしさに舌を巻きつつ走り続け、ついに万象ビルまで70メートルの距離に到達した。


◆◆◆◆◆◆


「敵さんはとことん狙撃での決着がお望みらしいな」


 俺は万象ビルの周りの風景を見て苦笑する。そこには整備されたきれいな芝生が広がっていた。それ以外のものは何もない。ただただ50メートルほどの芝生が万象ビルをぐるりと囲っていた。


 つまり万象ビルの屋上にいる敵さん側にとってはターキー・ショット、絶好の狙い撃ちポイントってわけだ。


「相手に自分の強みをゴリ押しするための環境を作るってのは嫌いじゃないぜ。まあ中には俺やリーナマリーのように相手の得意分野を凌駕して勝つような人物もいるがな」


 俺はスゥっと狙撃銃を構えた。


「やっべぇな、すごい滑らかに体が動く……」


 自分で自分の動きに驚いた。ここに来るまでの間に森の中を走る俺を正確無比に狙ってきていたことからかなりの腕前だとは思っていたが、この動きはシモ・ヘイヘとかクリス・カイルのレベルだ。


「ってぇことは……あんな遅い光線銃じゃなければいつでも俺達を殺すことができたってことか、ゾッとするね」


 そう言って俺は万象ビルの屋上を見上げた。


「こういうわざわざ不利なことをする奴は二種類のタイプに分けられるんだよな。まずは近くまで来た敵の絶望顔を楽しむ要するに自分の感情を楽しませることを優先する鬼畜タイプ。そしてもう一つが、銃と地形を勘案して効率よく確実に相手を殺すことに重点を置いた仕事人タイプ。今回の奴は道中顔を的確に狙ってきたことから考えるに……後者の仕事人タイプだろうな」


 俺は「こういう仕事人タイプが一番やりにくいんだよなぁ」と溜息をついた。


「付け焼き刃の狙撃スキルは意味をなさない。かと言って挑発に乗るとも思えない……っとなると俺も自分の強みを押し付けるとするかね」


 俺は掌を握りしめて笑った。


「全く雪夫ちゃんめ、初っ端から面白い相手を用意してくれてるじゃねぇかよ」


◆◆◆◆◆◆


 森から発射された弾丸と万象ビルの屋上から発射された光線が幾重にも交錯している。


「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな?」


 カッコつけたのも束の間、俺は呆れながら二人の天才による狙撃戦を見ていた。一人はもちろん俺が狙撃スキルをコピーした万象ビル屋上の狙撃手である。そしてもう一人は……ズガガガガガンと森から発射された弾丸の一発が、光線の網をかいくぐってついに万象ビルに届いた。


「あれ銃の連射速度性能超えてねぇか?」


 もう一人の天才リーナマリーの仕業である。成長スキルのおかげで今では相手の四発の光線を凌駕する五発の弾丸が同時に森から発射されている。俺は「ヒュー」と声を上げた。


「一発目を五回、二発目を四回、弾を木に跳弾させて五発全ての弾速を揃えてやがるのか」


 まさに神業である。そのおかげで敵さんは俺への注意が疎かになっているようだ。先程から俺の方に光線は飛んできていない。


「だがここですぐに撃つほど俺も馬鹿じゃねぇのさ、何しろ俺がここにいるってだけで敵さんへの牽制になるからな」


 いくらリーナマリーが成長したとは言え狙撃スキルでは敵さんのほうが上だ。それはコピーした俺が一番良くわかっている。それでもリーナマリーが敵さんを推しているのは俺の実力が相手にとって未知数であるためだ。


「敵が二人いて、片方が五発撃ってくるならもう片方も五発撃てる、と考えるのが仕事人タイプだからな。ネガティブ思考なんじゃなくて『それでも勝てる』って自負があるんだこのタイプには」


 俺は万象ビルをグルリと囲む芝生地帯の外側をなぞるように移動した。


「俺が動くのは必殺の時だ。パンパカ打ち合う二人の銃撃戦を観察し、最高のタイミングで横合いから殴りつけてやる」


 現在の位置を時計で説明すると、時計の中心に万象ビルがあり、俺が四時、リーナマリーが十時の位置にいる感じである。


「リーナマリーは弾丸の数でこそ勝っているが正確性の面ではまだまだだ。その間に俺が勝利をルパン三世のようにスマートに掻っ攫って」


 俺の言葉を遮ってズガガガガガガンっという音が森に響いた。おいおいっと俺は苦笑いを浮かべる。


「ズガガガガガガンって……また弾丸の数が増えてんじゃねぇか、冗談じゃねぇ」


 光線をすり抜けて飛んでいく『2発』の弾丸を見ながら俺は呟いた。


「神業を超えた仏技ってやつかな?」


 幸いその二発は方向が逸れて万象ビルの上を外れていった。俺はフゥっと息を吐き出す。


「危ない危ない……さて、それじゃあ俺も動くとするか、なにしろこの戦いの勝利の女神はせっかちみたいだからな」


 銃を構える、リーナマリーが再び銃を撃った時がこの戦いの『終わりの始まり』だ。


 ズガガガガガガン!


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「殻を破って化物に」

鳩山 雪夫

「外がドンパチ賑やかになってきたねえ」


「ヒッヒッヒ、自分の職務を冷徹にこなすブラストエイトは強……押されてますねえ!?」

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