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第20話  4月 5日(火) 私の一投は夜空をも砕く!

現在の所持能力

①リーナマリーの身体能力

②そこそこの学者の知能

③そこそこのアイドルのメイク技能

④コッキーのシャーマン能力

⑤そこら辺の生徒の 手首から糸を出す能力

●目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

●詳細「リーナマリーから抜き取られた竜王の戦いの記録拡散を阻止せよ」


「それでなんでコッキーがここにいるんだ?」


「学校カラ追イカケテキタヨ!」


 コッキーは右手をピーンと伸ばして元気よくお返事する。


「俺たちヘリコプターで飛んできたはずなんだが」


「頑張ッテ走ッテキタヨ!」


 背伸びもして全身でお返事するコッキー。アラレちゃんかよ。


「……かわいい……妹にしたい」


 先輩がいつの間にか背後に立ちコッキーの頭をナデナデしている。どうやら先輩のツボに入ったらしい。コッキーは頭の上の感触に不思議そうな顔をしていたが振り向いて先輩を見ると花が咲いたようにパァッと笑う。


「ワァ♪ オ姉チャン、スッゴイ美人!」


「……マジラブって呼んで」


「ラブオ姉チャン?」


「……いい、すごくいい」


 先輩は聖母のような柔らかな笑みを浮かべている。姉妹、というよりは親子のようなやり取りをしている二人はとりあえず放っておいて、俺は先輩の本当の妹の方に話しかけた。


「どうした考え込んで?」


 リーナマリーは顎に手を当て空を見ている。


「さっきの攻撃の事を考えてたのよ……」


「ああ、速かったよな。あの距離に来るまで全然気づかなかったぜ」


 俺は「そんな速さの攻撃からよく二人を救えたもんだ」とちょっと自慢げに腕を組んだ。しかし、リーナマリーはひたすら考え続けている。


「そこがおかしいのよね」


「どういうこった?」


「疑問点が……そうね2つあるの」


 指を二本立ててリーナマリーは自分が何に疑問を感じているのかを改めて整理するように話しはじめた。


「一つ目、『あの光線はそんなに速かったのか?』まずそこに引っ掛かったのよ」


「おいおい、そりゃ速いに決まってんだろ。先輩が振り向いて俺が顔を上げるまでの間に至近距離まで迫ってたんだぜ?」


 リーナマリーは俺の言葉に頷く。しかし「でもね」と言葉を返してきた。


「そんな速さの攻撃ならキミトが窓を蹴破ったくらいでヘリに到達してるはずよね?」


「……言われてみるとそうだな。いくらリーナマリーと同じ身体能力を持っている俺でも本当にそのスピードで来てたなら対応は厳しいか」


「悔しいけどそうなるわね」


 あっさりと納得する俺と、あっさりと肯定するリーナマリー。


 全然悔しそうに見えないのは俺達ならではである。成長スキルを持っているリーナマリーは「あとで成長すれば無問題モーマンタイ」と思っているし、俺も「それをコピーすればベネ(よし)」なので状況を冷静に分析することができている。


「っとなると次の疑問点は『あの光線はどこから来たのか?』ってところか?」


 リーナマリーが「そうね」と首を縦に振る。


「考えられる可能性は2つね。1、相手側に先日の虎牙たいがーふぁんぐのようなテレポートスキル持ちがいる」


「あんなスキル持ってる奴がポンポンでてきたら色々と話が崩壊しちまうな」


「もう一つの可能性としては、実は私達が思ってるよりずっと近くに敵がいるってことね」


 喋りながらリーナマリーがちらっと目線を落とし、すぐに目線を上げて俺の顔を見る。俺はニヤリと笑って大げさに「やれやれ」と肩をすくめてみせた。


「おいおい、ずっと近くってどのくらいの距離だよ?」


「そうねぇ、こ の く ら い の 距 離 か し ら ね !」


 そう言ながらリーナマリーがスッっと右足を垂直に挙げ、踵から地面に落とした。普通なら踵が雑草の生い茂る地面にめり込み『ズン』と音を立てるのだが、地面から聞こえてきた音は『ギギギギギイイイ!』というおよそ自然界からは遠い悲鳴だった。


「よっと……」


 俺は間髪入れず地面に腕を潜り込ませる。


「マンドラコドラじゃないと良いんだがなぁ」


 そう言いながら悲鳴を発したモノを地面から引きずり出して打ち捨てた。それは地下を掘り進んで俺たちに近づいていたのだ。ほんの僅かだが地面が盛り上がっていることに気づいたリーナマリーが俺に知らせて芝居を打ったのである。


「POPPO48型っぽい機種だな」


 地面からズルリと出てきたソレを見てリーナマリーの表情が曇った。


「確かにパーツは似てるわね。でも腕もないし足もヒレみたいなのが一本だけ、それでいて口だけが大きい開かれて……こんな気味の悪いロボット見たことないわ」


「同感だ。きっとこれを作った奴はどこかに欠陥があるんだろうよ」


 デザイン門外漢の俺から見てもソレはPOPPO48型とはか設計理念の根本から違っているように見えた。かっこよさや見た目を少しは考えていたPOPPO48型とは違い、これはただ1つの目的のために全てを削ぎ落とした……命を刈り取るだけの形をしている。


「でもこれがいるってことは……」


「確か光線が飛んできたのはあっちの方だったわね?」


 リーナマリーが何もない夜空に向かって指を差す。


「だな、ちなみにほぼ水平に飛んできたことも考えると……」


 俺はリーナマリーの腕を少し上に向けた。


「……」「……」


 俺とリーナマリーは再び顔を見合わせ頷き合った。


「……どうしたの?」「ナニナニ!?」


 先輩とコッキーが何事かと駆け寄ってくる。


「なぁに、ちょっとうるさいモグラを退治しただけさ」


 そう言いながら俺は両手を広げて二人の前に立った。こういう『他人の純粋な悪意の産物』に耐性がなさそうな二人に対しての配慮である。リーナマリーはまた顎に手を当て空を見はじめた。


「ホントー?」


「おおっと、お嬢さんお待ちなさい♪」


 感の鋭いコッキーが通り抜けようとするが俺が的確にディフェンスして通さない。先輩は俺の意図を察してくれたのかそれ以上近寄ってこようとはしなかった。


「モー!」


 コッキーが地団駄を踏む。俺は「ハッハッハ」と笑いながらチラッと後方を確認した。リーナマリーが地面に転がっているロボットの頭を鷲掴みにしている。どうやら対象物の目測が完了したらしい。


「悪いなコッキー。その代わり面白いものを見せてやるからそれで勘弁してくれ」


「ホントー?」


 プーと頬を膨らませているコッキーがと俺の顔を見上げる。後ろの方でリーナマリーの動きはじめた気配がした。


「ああ、本当だ」


 俺はそう言ってスッと体を引いた。その時である。「砕け散りなさい!」というリーナマリーの声が森に響いたのは。


 リーナマリーが振りかぶって頭を鷲掴みにしていたロボットを空に向かってぶん投げた!


 そのロボットは勢いよく夜空に向かって飛ぶ!


 しかし、300メートルほど飛んだところでロボットは『夜空に激突した』。


「エ? エ?」


 理解を超えた出来事にコッキーが混乱している。


「……なるほど」


 その後方で先輩がうんうんと呟いていた。


 ロボットが激突した夜空にピシッとヒビが入る。


「どんなにうまく隠そうとも、真実はいつもまるっとお見通しよ」


 リーナマリーがフンスと鼻息荒くして胸を張る。


 夜空のヒビがピシッピシシシシシッと上下左右に大きくなっていく。すでにそのヒビの大きさは296.33メートルほどに達しようとしていた。


 俺はそれを見上げながら「やー思ってたよりもデカイなこれは、ランドマークタワーくらいか?」と頬をポリポリと掻いた。


 やがてバリイイイイイインと音を立てて夜空が崩れはじめた。ガラガラと無数に舞い落ちる綺羅星のようなガラス片、そしてその中からサーチライトが夜空を照らす巨大ビルがゆっくりと現れる。


 そう、リーナマリーの『あの光線はそんなに速かったのか?』『あの光線はどこから来たのか?』という疑問への答えは『すぐ近くの隠されたビルから光線が発射されていた』だった。


 そして俺達は光線の飛んできた方向や角度を計算し、見事に隠された鳩山エレクトロニクスの本社、万象ビルを探し『当てた』のである。


 建物を見た俺達の反応は様々だった。


「やっと万象ビルのおでましか、長い夜になりそうだ」と70階建てのサイバーパンクな巨大建造物を目の当たりにして溜息をつく俺。


「スゴーイ!」とピョンピョン撥ねているコッキー。


「……ロチェスタークローク?」を謎の言葉を言っている先輩。


「まだ何か近くにいるわね」と俺に囁くリーナマリー……ってちょっと待て『何か』って何がいるんだよ!?


■目標「鳩山エレクトロニクスの社長室へ行こう」

■経過「なんかセフィロスとかジェノバとかいそうなビルだな」

村主 公人

「まあ神羅ビルなだけ良しとするか」


「最悪の場合クリスタルタワーとか来るかと思ってたしな」

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