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第13.5話 我ら『目的』は違えど『過程』は同じ

ロボを使って盗撮だってできる。そう、ipoppoならね。

 皇樹高校の校門前にツヤ消しのベンツが停まっている。その車内に突如として二人の男が現れた。しかし、運転手は突然現れた乗客に動じることもなく車を発進させる。


「……どうだった?」


「有益なデータが取れましたよ」


 走りはじめた車の中で、虎牙が尋ねる。隣に座る雪夫は微笑みながら手に持った端末を操作している。その端末に映し出されているのは5000体のロボと戦う二人のヒーローのタマゴの姿だった。


「案内役が代わったと聞いて最初はガッカリしてましたが、いやはや妹様もなかなか面白いですね」


 虎牙は興味無さそうに雪夫の言葉を聞き流し、自分の考えをとつとつと語る。


「それもそうだがもう一人の男、アレには要注意だぞ」


「へぇ、そうなんですか? 僕ちんには劣化した妹様にしか見えませんでしたが」


「……」


 雪夫は大げさに驚いてみせた。しかし、虎牙からの反応はない。雪夫はつまらなそうにため息を1つついたあと、端末を操作しはじめた。


「わかりましたよ、注意しときます。なにしろ世界最高と並ぶヒーロー様のご助言ですからね」


 画面に映し出されたのは目付きの悪い男子生徒、公人の姿だ。その横にスピード・パワー・メンタル・テクニカル・学力が五段階評価で表示されていた。どうやら皇樹高校内で行われている戦いからリアルタイムで身体能力を分析しているらしい。


 雪夫は公人の(リーナマリーに比べて)小さな五角形を見ながら、興味なさげに「ふーんほーん……コレは強いですね―」と声を上げている。


「……何か言いたそうだな?」


「おっと凄まないでくださいよ、僕ちんは無能力者なんですから」


 虎牙に凄まれて怖がるふりをする雪夫。


「フン、貴様の性格の悪さは下手なヒーローの特殊能力を超えておるじゃろうて」


「ヒッヒッヒそう言っていただけると照れますね……」


 襲撃用のロボは量産型を使い、しかも情報操作によって架空の持ち主のモノになっているため足がつくことは無い。雪夫と虎牙が暴れたと訴えようとしても特殊な塗料を顔に塗っているためカメラには真っ黒に映るようになっている。


 このようにスキルが無い分を財力と用意の周到さ、そしてえげつない思考でカバーしてきたのがこの鳩山 雪夫という男なのである。


「それにしてもテレポートスキルなんて誰から奪ったんですか?」


 雪夫の言葉に虎牙が「クックック」と口角を上げる。


「さすがは皇樹、あの少年の言うとおり宝の山だなあの学園は」


 その言葉に雪夫はヤレヤレと肩をすくめる。


「保護者が聞いたら卒倒しますね」


「自負の無いものがスキルなどを持つから世の混乱が極まるのだ」


「ま、そこに関しては僕ちんも同意見ですよ。ただし結果は違いますけどね……ところで解っていますよね?」


「当然だ」


 虎牙が雪夫の頭に右手をかざす。右手が青白く発光し、その光の粒子が帽子の頭の中に吸い込まれていく。


「……………………ヒャーッハッハッハ!」


 しばらくして雪夫が突然笑いはじめた。


「……なるほど、これが……面白い……実に面白いですねぇ!」


 ひとしきり笑った後、抑えきれない喜びに雪夫は身を震わせた。


「約束は果たしたぞ?」


「ええ、ありがとうございます……陽動のために色々しましたが、とりあえずこれで我々の目的は達成といったところですね」


◆◆◆◆◆◆


 野心に燃える二人の党首を乗せた車はひたすら道を走り続けた。

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