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第1話  3月28日(月) あらすじからブリーチの最終話くらいの年数が過ぎました

●目標「入学試験でトップを取れ!」

●詳細「ヒーロー養成高校『皇樹おうじゅ高校』入学試験をトップで通過し授業料免除を勝ち取れ」


「ゼッケン801番! 6秒3!」


 スポーツカテゴリー最後の種目100メートル走を終えた俺の周りで『おおー!』と歓声が上がる。


『すげーなアイツ、戦闘・勉強・人気に続いてスポーツ部門でも5位に食い込んだぜ?」

『だけどアイツの名前なんて読むんだ? むらぬしこうじん?』

『ばーかお前、これは村主すぐり公人きみとって読むんだろ』


「ふっふっふ俺が上位になるのは当然だっての」


 俺は他の試験生の言葉を聞きながらほくそ笑んだ。驚け驚け凡人凡才、そして目に焼き付けておくがいい。今日この時が俺のヒーロー伝説始まりの日だ。


 ヒーロー養成学校の名門である皇樹高校の入学試験全カテゴリーで華々しくトップを飾り、授業料免除を勝ち取った俺は三年間で優秀な成績を残してどんな物語でもめでたしめでたしで終わらせることのできるヒーローになる。


「そういう……予定だったんだけどなぁ」


 俺は電光掲示板を見てため息を付いた。


「なーんで俺の上に何人もいるのかね?」


 そう、先ほどから俺は上位に食い込みこそするのだが、最高で戦闘カテゴリーの2位、勉強は5位、人気は3位である。つまり一度も1位が取れていないのだ。なぜか、答えは単純だ。凄いやつが何人もいて、更にその上に全部1位の奴がいるのだ。ちょうどその人物が俺の前を通り過ぎていく。


『おい見ろよ西園寺さいおんじリーナマリーだぜ!?』

『うっひょー、金髪胸デカナイスバディ!』

『美人なだけじゃねぇぜ、既に中学時代から何人ものヒーローから太鼓判をもらっていて、彼女がヒーローになった業界は数十年は安泰と言われる逸材だ』


「更に父親は日本国の総理大臣かつ皇樹高校の学園長でもある、あの西園寺さいおんじ 竜王どらごんきんぐだってんだからなぁ」


「ふっふっふ私が一位なのは当然じゃない」


 リーナマリーの方からなんか聞き覚えのあるセリフが聞こえたような……気のせいか。


「……大(分)変な奴と同期になっちまったもんだぜ」


 俺は運の無さに苦笑する。いや笑ってる場合じゃねぇ。こうなったらどんなカテゴリーでも良いので1位にならねぇと貧乏な俺は授業料払えずに即退学だ。話が始まる前から終わっちまうなんて、設定で力尽きてエターなる素人のRPGツクールじゃねぇか。


「いや☆ 君も十分大変な人だと思うんだけど☆」


 急に近くで声がしたので「ん?」っとあたりを見渡す俺、しかし誰もいない。おかしいな? と頭を掻いていると腰のあたりから「こっちだよー☆」と声がした。下を見ると奇っ怪な服を着ている少女がニコニコと見上げていた。ドギツいピンクの髪をツインテールにしている。中々にファンキーな恰好である。


「あ、あぁ、すまねぇ。気づかなかった」


「ヒ、ヒッドーイ、確かにワタシは小さいけど☆ そっちが大きすぎるのが悪いんですよーだ!」


 ドギツイピンクの頭からわかりやすい怒気がプンスカ出ている。マズイな、怒らせてしまった。


「ところで俺もあのリーナマリーってのと同じレベルに見られてるのか? えぇっと……」


 そんな少女をなだめるべく俺は話題を変えた。


「ワタシは胡桃くるみ マホ☆ 魔法少女のヒーロー目指してるんだ☆」


「……なるほど、確かに言われてみれば魔法少女っぽい恰好をしているな」


 家の居間に一台だけあったポンコツテレビで妹が魔法少女のアニメを見て熱狂していたのを思い出す。確か名前は『魔法少女リリカルミンキーまどか』だったか。


「そうなの☆ 卒業したらきっと立派な魔法少女になるから期待しててね☆」


「そうか、頑張れよ」


 俺は「卒業する時はもう少女じゃねぇだろ」というツッコミはこらえて話を合わせた。


「って待てよ? 胡桃マホって……」


 そこまで言って俺はその名前に聞き覚えがあることを思い出した。顔を上げて電光掲示板を見やるとそこには『人気4位 胡桃 マホ』と書かれている。


「へー、マホも結構すごいんだな」


 だけどそれだけじゃ無いような気が、胡桃マホ、胡桃マホ、はて? 聞いた覚えがあるような無いような……


「マホでいいよ☆ 公人くん☆ そうなんだよねーワタシもリーナマリーちゃんほどじゃないけど中学時代からお姉ちゃんと一緒に活躍してたんだけど☆ まさか一番自信のあった人気カテゴリーで4位だなんてねー」


「お姉ちゃん? あ、ってことはマホはあの魔女の胡桃マギサの妹さんか!?」


 そうだそうだ。皇樹高校3年S組の『胡桃マギサ』と言えば在学中にも関わらず魔女として活躍している有名人である。っということはこの胡桃マホって子もかなりの実力があるってことになる。ヒーローってのは血筋が何より重要だからな、親が強けりゃ子も強い、姉が強けりゃ妹も強いってのがこの世界の常識だ。


「そう☆ そんなワタシに勝ってる君が普通なわけ無いじゃん☆」


「それでは各部門トップを決める最終試験を開始します。呼ばれた試験生は所定の位置に移動してください」


「あ、いよいよ最終試験だね☆ それじゃあ頑張ってね応援してるよー☆」


 そう言ってマホは手を振って行ってしまった。それを見送った俺は「普通じゃない……か、つい1年前までは普通だったんだけどなぁ」と独り言を呟いた。


■目標「入学試験でトップを取れ!」

■経過「とりあえず戦闘カテゴリーで最終試験に残ることができた。だけど相手はあのリーナマリーかぁ……」

今日のヒーロー

担当:村主公人

「既にプロのヒーローとしてソコソコやってる奴のスキルをコピーしてみたんだが……今年の試験生は化物揃いみたいだな」


「中には大きな白イタチとか『僕は悪くない』とか言ってる目が言っちゃってる本物の怪物もいるし……怖えから近寄らないでおこう」

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