終
年が明けて数日が経過した。まだ冬休みだ。
玄は広い家で一人おせちを食べたあと、どてらを羽織ってリビングで日の当たる庭を眺めている。手には湯飲みがあるが、中の緑茶は冷え切ってしまっていた。
顔には覇気がなかった。
目尻は垂れているようにも見え、頬もどことなく緩んでいるようだった。
大晦日の試合後、控え室に多くのマスコミが押しかけてきた。
フラッシュがたかれ、質問攻めにあいはしたが、玄はそのときの状況を詳しく覚えていない。そもそもどんな試合をしたのか、そんなことも記憶に残っていなかった。勝ったものの辛勝であり、ダメージは玄のほうが大きかった。
鼻は折れ、まぶたは切れ、肋骨にはひびが入っていた。打撲は数え切れないほどある。ほんの少し、まさに紙一重の差だったのだ。
そのためか試合の翌日、元旦は体が動かず、雪と華に面倒を見てもらっていた。
その二人も二日には各々帰省している。雪は猪木村で、久しぶりに両親と祖父母の五人で顔を合わせているはずだ。華も実家がある高知に帰っている。
「玄君は立派になった。これで私は、私がやってきたことは間違いなかったって、これからも玄君を支えていくって、胸を張って報告にいけます。区切りも着いたきね」
玄の幼さが彼女を縛り続けていたが、ようやく解放できた。帰省前に、華からその言葉をもらえて、彼自身もほっとした。
ため息をつき、玄は立ち上がってどてらを脱ぎ捨てた。その下には動きやすいジャージを着ていた。彼はリビングから玄関に向かい、外に出た。
冷たく、鋭利なナイフのような風が頬に当たる。
坂の並木はすっかり枯れてしまって葉っぱ一枚ついていない。夏とは大違いのその様に、玄は雪と出会ったころがひどく昔のことのように感じた。
彼はそのままとぼとぼと、カタツムリにも負けるような歩みで坂を下りていく。雲ひとつない快晴だった空に灰色の分厚い雲が広がっており、ひらひらと雪が降ってきていた。
またため息をつくと、玄は表情を引き締めて走り出した。
足取りは怪我人とは思えぬほどしっかりとしている。坂を下りきると、今度は何かに誘われるように、またその誘いに乗るように、スピードを上げた。
試合を見たのだろう。道行く人から何度か声をかけられたが返事はしなかった。玄はまっすぐ、その場所に向かっていく。
学校を通り過ぎ、山に入り、くねくねと曲がりくねった道を行く。そうして、たどり着いたのはあの小学校だった。体育館入り口の前には黒いワゴン車が止まっている。
玄はためらうことなく扉を開けた。冬なのに、むっとするような熱気が襲ってくる。それを受け止め、足を踏み入れると、あのリングの上に梶が座っていた。黒いショートタイツ。プロレスラーの姿である。
そばのリングサイドには運転してきたのだろう、黒崎もいた。
手にはゴングを持っている。
「よく来たな。怪我は大丈夫か」
梶が言った。
「大丈夫かって言われたら大丈夫じゃありません。でも、それとこれとは関係ありません」
玄は答えながらジャージを脱ぎ捨てる。その下には、赤いショートタイツがあった。靴も靴下も脱ぎ、梶と同じ姿になってリングに上がった。
向かい合い、玄は梶に言った。
「闘いたいって電話が来たときは、驚きもしましたが、納得しました」
「そうか。なら、ここがどういうところか覚えているのか?」
「日比野とやってるときに思い出しましたよ。俺はここで、銀の最後の試合を見ていた」
梶は笑っていた。玄が尋ねる。
「ここ、一体どういうところなんですか?」
「俺と銀が通っていた学校だ。ここで関節技、打撃技、絞め技を練習していた。もちろん、ごっこ遊びの延長だが、真剣だった。そうだな。俺たちが始まったところって言うのがぴったりだ。だから、ここで終わらせようと、銀が死ぬ前に最後の試合をした。ギャラリーはそこの黒崎と、お前の母さん、お前の三人だった」
「少ないですね。信じられないほど豪華なカードなのに」
玄がそう言いながらストレッチをする。
「武道館どころか東京ドームを満員にできるさ」
梶が飛び上がり、コーナーポストに寄りかかった。彼は天井を見上げ、呟いた。
「俺はな、納得がしたいんだ」
「納得ですか」
「プロレスってのはな、見世物だ。見世物じゃなけりゃあんなに試合をすることはできない。本気でやってたら怪我どころか死人まで出ちまうかもしれん。けど、打撃も関節も、絞め技も、闘いに勝つためのもんなんだよ。俺は、銀と闘いたかった。真剣でだ。ところがだ。銀はとっくに弱っていた。弱かった。本当に弱かった。筋肉も衰えていてな、力もない。スピードもない。腕を簡単に折ってやった」
「でも、銀は何度も起き上がった。俺はそこを鮮明に思い出しました。何度倒されても起き上がる」
梶の目には涙が浮かんでいた。つーっと、流れる。
「恐ろしかった。結局チョークスリーパーで落として俺が勝ったんだが、そんなもので満足できなかった。俺はあのときから延々と苦しんでいる。もし、あいつが病にかかっていなかったら、万全だったら、どうなっていたのか。俺はそれを知りたい。勝敗はどうでもいい。納得できたらそれでいい」
梶は玄に振り向いた。もう涙はなかった。
「玄。黒崎に命じてお前を鍛えさせたのも、いろんなやつをけしかけたのも、日比野と闘わせたのも、すべてはこのときのためのお膳立てだ。やってもらうぞ」
玄は笑っていた。怒ることはなかった。
「それじゃあルールはどうします?」
「参ったか、気でも失ったりしたらそこで終わりだが、あっけらかんとしているな」
「別に。どうってことありません。闘ってくれって言われたら、闘う。それだけです。とりあえず、骨が折られたって止まらないんですね」
梶は頷いた。
「よし。そんじゃあやりましょう」
玄は梶と対角のコーナーポストに下がった。
数秒後、黒崎がゴングを鳴らした。
玄は亀にならなかった。走り出していた。
梶もまた走り出していた。
「―――」
「―――」
梶は泣いていた。玄も泣いていた。そして、玄の中にいる銀もまた、泣いていた。
闘いは殴り合いで、蹴り合いで、関節の極め合いで、ぶつかり合いだった。
皮を打つ音が反響した。
肉を打つ音が反響した。
骨を打つ音が反響した。
汗が飛び散った。
が飛び散った。
血が飛び散った。
涙が飛び散った。
梶は喜びを叫んだ。
玄は喜びを叫んだ。
梶は悲しみを叫んだ。
玄は悲しみを叫んだ。
梶は怒りを叫んだ。
玄は怒りを叫んだ。
梶は楽しさを叫んだ。
玄は楽しさを叫んだ。
二人が感情を叫んだ。
梶は梶翔たるもの全てを使い尽くし、玄は千葉玄たるもの全てを使い尽くす。
生きるも死ぬもどうでもいい。
このまま走り、貫き、闘う。
それだけ。
「翔」
――なんだよ。
「俺さあ、アメリカでプロレスラーになるよ」
――そうか。
「お前はどうなんだよ」
――俺もなるよ。
「じゃあ、一番になろうぜ」
――当たり前だ。
「俺はアメリカ、お前は日本。いいなあこれ」
――そうだな。
「アメリカ一と日本一。すごいよな。そうなったら世界一だ」
――そうだな。
「もうさ、プロレスだけじゃあなくしちゃおうぜ」
――どういう意味だ。
「だからさあ、ボクシングも空手も柔道も、なにもかもで一番になろうぜ」
――それ、いいな。
「そうだろ。実現させてみようぜ」
――ああ。
玄の脳の中で誰かの声がする。誰か、子供が喋っている。聞き覚えがあるような声だ。
梶の張り手が玄を打つ。ひっくり返ってロープに振られ、その反動で戻るとラリアット。
キャンバスに倒れ込んだ玄を後目に、梶は素早くコーナーポストに登った。そこから飛び上がってダイビングプレス。それをすんでのところで避けた玄が、起き上がる梶の背後に回り、持ち上げ、全身のばねを使って、後方のキャンバスに叩きつける。
綺麗な弧を描いたジャーマンスープレックスだったがまだフォールを奪えない。玄の拘束から逃れた梶は、ロープに走って反動をつける。そのまま起き上がり様の玄の首を、再びラリアットで刈り取る。仰向けに倒れた玄の視界は明滅し、ざあざあと声がする。
「ああ、来ちゃったか」
――来ちゃったかじゃねえよ。なんで黙ってたんだよ。
「ごめん」
――ふざけるなよ。ようやく、ようやくじゃねえか。
「そうなんだよなあ。かーちゃんも玄もいるんだもんなあ。参ったこりゃ」
――そこじゃねえよ。俺たち、ようやくプロレスラーになったんじゃねえか。
「そうだなあ」
――こっからいろんなやつと闘って、闘って、勝っていくんだぞ。一番になるんだぞ。
「でもなぁ、長くて半年って話だからな。どんどん細っていくぞ。飯がな、まずいの」
――ふざけんなよ。なんだよそれ。なんとかならねえのかよ。
「なりそうもないなあ。確実に死ぬぞ。これ」
――心残りとかないのかよ。
「あるよ。お前には本当に申し訳ないなと。アメリカでどうにもならずに燻っていた俺を助けてもらったのに、恩返しがほとんどできなかったってな」
――いらない。そんなのいらない。ほかにねぇのかよ。
「それなら一つ。俺ってさ、お前とやってないじゃん」
――ああ。
「一番になれてないからなあ。そうだな。やろっか。お前と」
――なんだよ。正気かよ。何言ってんだよ。
「結構まともなこと言ってると思うよ」
――どこがだよ。
「そっか。でもなあ、結構昔から思ってたんだよ。一番になりたい。一番になりたいからお前と闘いたいって」
――そんな、そんなのがお前の望みかよ。
「そうだよ。悪いな」
――謝るなよ。
「でもなあ、やってみたいんだよなあ。とにかくさ、翔とやっておきたいんだ。真剣でな」
――俺は、
「やろうぜ」
――そんな、
「やろう」
――くそ、
「やる」
――やるよ。
フォールを奪いにきた梶を跳ね除ける。起き上がった玄はその場で飛び上がり、足を揃えてドロップキックを放つ。梶の分厚い胸板にぶち当たる。梶はロープに振られるが、勢いがなかったので反動で返ってこない。梶はその場に立って、待った。
玄が突っかかる。顔を殴る。水平チョップを胸に打つ。ソバットを胸に叩きこむ。追い詰める。追い詰めて、追い詰めて、追い詰めて、梶の大振りアッパーで逆転される。
蹈鞴を踏みながら後退していくと、梶は向かってきて、跳んだ。ぐるりと縦に回転して、脚を胸にぶつけてきた。胴回し回転蹴り。空手の技だった。
「銀はね」
――うん。
「銀は、強かったんだ」
――うん。
「すっごく強かった。でもね、才能はなかったんだ」
――うそだ。
「本当。かっこよく勝つなんてできないんだ」
――それは、そうかも。
「背も低いし」
――足も遅い。
「しかも短い」
――でもかっこいい。
「そうなんだよね。銀は、あたしにとったら世界で一番かっこいい男だよ」
――どういうところが?
「そうさね。懸命だったからかな」
――懸命?
「どんなときでも、誰が相手でも、全力でやってた。中途半端なんてもんがなかった。そういう姿がね、かっこいいんだよ」
――俺はどうなの?
「知らないよ。大きくなったとき、懸命にやってたら、かっこいいだろうね」
――じゃあ、がんばる。
「がんばれ」
――がんばって、んーと、そうだ。
「なんだい。何を思いついたんだい」
――銀になる。
「はあ?」
――だから、俺は、銀になる。
「なんでだよ」
――そしたらかーちゃんも寂しくないだろ。
「何言ってんの。いまも十分寂しくないよ」
――そうなの?
「そうだよ」
――夜中に泣いてんじゃん。
「しばくよこんクソガキ」
――虐待すんなよ。
「躾だよ」
――ともかく、俺は銀になるよ。もう決めたからね。
「はいはい。わかったわかった。適当にがんばりな」
――懸命に、がんばるよ。
水平チョップを胸に打たれ、玄は悶絶する。
強い。高木との闘いで梶だって玄と変わらぬくらいダメージを受けているはず。なのに、こうまで強い。化け物だ。ところが、恐怖は感じない。
なんたるパワー。なんたる強さ。玄は楽しくなってきた。
「空手を本格的にやらないか」
――すいません。
「柔道を本格的にやらないか」
――すいません。
「プロレスか。やっぱり」
――違います。
「じゃあなんなんだ」
――銀です。
「どういう意味だ?」
――俺は銀に成りたいんです。
「プロレスラーとは違うのか」
――銀は銀です。
「プロレスなんか八百長だろ」
――そうかもしれません。
「千葉銀とやらも本当に強かったかどうか」
――強いです。
「はあ?」
――銀は強いです。
「なんだよ」
――銀は強いんです。訂正してください。
「やだね」
――そうですか。
「なんだよ」
――泣いて謝れ。
梶は強かった。パワフルで、タフで、豪快で、ぶんぶんと振りまわされて、玄は飛ぶ。意識は朦朧とし、視界が灰色になる。
それでも意思はある。闘う。闘う。闘う。
梶の大振りのパンチが飛んでくる。それを恐れず受け止めて、ひきよせる玄。
直伝の技。日比野を仕留めた技。梶はぐるりと回り、顔面からマットに落ちた。
そのまま肘を取った玄は、関節を極めたが、梶は無理やり、強引に起き上がる。バリと、変な音がした。梶は笑って、玄を蹴り飛ばした。
「玄君!」
――はい。
「喧嘩せんでって何回言うたらわかるが!」
――すいません。
「もう何回目ぞね!」
――数え切れません。
「そうよえ! いつか、もしかしたらこんな傷じゃあすまんかもしれんがで!」
――でも、
「でも?」
――でも、銀は強いんです。にされるわけにはいかないんです。
「玄」
――なんだいかーちゃん。
「イカを食べるんだよ」
――無理。
「だろうね」
――他にない?
「そうさな。あんまり喧嘩すんじゃないよ」
――努力はする。
「怪我すんじゃないよ」
――努力はする。
「あんま華ちゃんを泣かすんじゃないよ」
――努力はする。
「一つぐらいは約束しなよ。そろそろ死ぬっていうのに」
――ごめん。でも、一つだけ、約束する。
「なんだい」
――俺、銀に成る。
「またそれかい」
――うん。
「銀になるってことは銀を背負うんだよ」
――背負うよ。
「ま、あれだ。約束したからには適当にがんばりな」
――懸命にがんばるよ。
後ろ向きに倒れる。玄の意識が飛ぶ。落ちていく。奈落に、どこかに、玄が、銀を背負った男が、負けて、負けてしまう。
ああ、もう、もう無理。死んで、負けて、終わって――、
「けえええええい!」
甲高い雄たけびとともに、玄は背中から衝撃を受けた。そのため、倒れず、膝をつき、梶を見上げた。
「玄!」
女の声がする。雪だった。背中、リングの外にいる。ロープの外から蹴ったのだ。
いつのまに来ていたのか。ある種の予感でもあったのだろうか。
――いや、そんなことはどうでもいいや。
「起きろ! 玄! 銀を背負ったんじゃろが! 負けるんか!」
――そう言われてもな。
「俺は納得も満足もしていたよ」
――へえ。
「病気って言ってもな、まあ、それをひっくるめて俺は俺だし」
――そうは言ってもねえ。
「翔が納得も満足もしていないからなあ」
――そうそう。
「でもな、俺じゃあ翔には勝てんよ」
――そうなんだ。
「闘ってわかった。万全でも負けるわってなあ」
――あっさりしてんね。
「玄」
――なに?
「息子にはな、宿命があるんだ」
――どんな。
「父を越えるってもんだよ」
――そっか。
「俺より前に行け」
――前?
「前だ」
――難しいことを言う。
「行け」
――わかったよ。
「勝てよ」
――わかったよ。
「銀を越えろ」
――わかったよ。
「玄!」
玄は立ち上がった。走った。
梶が拳を振るった。前のめりに受けた。首の筋肉でダメージ吸収、しきれずに仰け反るが、それでも前へ走った。走って、跳んで、ソバットを繰り出す。
速く、重く、強いソバット。
梶が倒れ、玄はその背後に潜り込み、首に腕を回し絞めつける。
裸締め。梶が暴れるが、絶対に逃さない。
「梶さん。俺、銀を越えます。さっき約束しました」
玄の腕に力がった。
わずかな時間のあと、梶の体から力が抜けた。
黒崎がゴングを鳴らした。
一時間を越える死闘だった。
家に戻ってシャワーを浴びたあと、玄は雪に頼んで全身にシップを貼ってもらった。そのままリビングに布団を敷き横になった。毛布を被って暖かくし、庭に積もっていく雪を眺めた。
「明日にでも病院にいくんじゃな」
寒い寒いと、どてらを着た雪が茶を啜りながらそう言った。
「そうする。けど、どうしてお前、あそこにいたんだ」
玄が尋ねる。
「なんとなく。華さんから頼まれとったんじゃよ。実家に帰っちゅうけど、あの子の事が気になるき、見に来てくれっての。んで、早々に戻ってきて、家についたらおらんかったんでどこにいったんかなあと。思いついたんがあの小学校じゃった。あそこは変なのが残っとったからのう」
「……あれは、銀の未練だったんだろうな」
玄が目を瞑った。
「そんなんと闘うなんざ、普通じゃあ考えられんのう」
そう言って、雪は玄の額をなでた。
彼女は微笑を浮かべている。獣ではなかった。やさしく、包み込むような、人の笑みであった。
「色々、疲れたな」
「そうじゃろのう。まあ、いまはゆっくり休むんじゃな」
雪は玄の額に唇を当てた。
「言いたいことがあるんだが、すっかり忘れてたけど」
「なに?」
玄は雪から顔をそらしてから言った。
「女が軽々しくキスするんじゃない」
雪はちょっと間を置いてにんまりとした笑みを浮かべた。からかい相手を見つけた子供のようであった。
「なんじゃ、恥ずかしかったんか。ぬふ、ぬふふ、ぬふふふふ」
「うるさい。それと、前々から言ってきたが、その笑い方は気持ち悪い」
「すまんのう。治らんわあこれは」
雪の笑いはやむことはなかった。
気持ちの悪いはずのそれはいまだけは妙に心地よく、玄は夢の中に落ちていった。
「金か」
――なんだよ。
「悪くないな」
――だからなんだよ。
「将棋のルール、わかるか?」
――わかるけど?
「あれって、前に一歩ずつしか進まないどんがめが、なるだろ。金に」
――と金か。
「そうそう。俺もお前も才能がないが、前に向かっていけばなれるかもな。金に」
――なるさ。あんたの息子だからね。
「懸命に、がんばれよ」
――懸命にがんばるさ。




