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第二話 知ってるぜ、これ異世界だろ?

 目を覚ますと、そこは豪華な広間だった。

 頭上にはシャンデリアが光り、足許にはけったいな模様の絨毯があった。


 紺のローブを着た男達が、俺の周囲をずらりと囲んでいた。


 ぱちぱち、と少し高いところから拍手がする。


「素晴らしい。さすがは私の見込んだ、選りすぐりの錬金術師達だ」


 ちょっとした階段があり、その上にその男はいた。

 派手な王冠を頭に乗せ、金の装飾がなされた下品な椅子に座って足を組んでいた。

 歳は20少しといったところだろうか。


「よくきたな異人よ。私は、このアルデンダ国の王だ。我が国の抱える最高級錬金術師達の力によって、貴様の魂を拾い、肉体を再構築……」


「よっしゃぁぁぁあああああ!! きたぁぁぁああああああっ!」


 死んだと思った。すべて終わってしまったと思った。

 ヤケになって勢いで、ありもしない幻想を夢見て馬鹿なことをしたと。

 しかしそれは、思い過ごしだった。


 俺は勝った。

 自殺したら異世界行けるんじゃね、という限りなく0に近い期待値の賭けに勝ったのだ。


 俺を囲む不審なフードの男、ふんぞり返った偉そうな王様。

 こんなん、絶対異世界転移じゃねーか。勝ち確定じゃねーか。


 俺は来た! 受験もストーカーもいない世界に来たのだ!

 家族と海外旅行に行ってもなぜか到着地で待ち伏せしていたあの愛梨も、まさか異世界まではこれまい。


「喚くな異人っ! 私の言葉を遮るなっ! 次余計なことを口走ったら処刑するぞ!」


「あ、ああ……すいません」


「ふん、わかればよい。では最初から仕切り直すとしようか」


 王は咳払いを挟み、怒りの表情を消した。


「よくきたな異人よ。私は、このアルデンダ国の王だ。我が国の抱える最高級錬金術師達の力によって、貴様の魂を拾い、肉体を再構築……」


「よっしゃぁぁぁあああああ!! きたぁぁぁああああああっ!」


「誰がそこを再現しろと言ったぁぁ!?」


「ステータス、オープン!」


 俺は王を無視し、小説でお決まりの呪文を叫ぶ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シュウ

職業   :なし

LV   :1

HP   :10

MP   :5

攻撃   :5

防御   :5

魔力   :5

素早さ  :5



特殊スキル:

『天の声:MAX』

『アルデンダ言語:Lv8』

『王家の鎖:Lv1』

『剣王:Lv1』


通常スキル:

『ステータス確認:LvMAX』

『鑑定:Lv7』

『勇者の袋:LvMAX』

『スキルドレイン:LvMAX』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 脳裏にステータス画面が浮かぶ。

 おお、すげぇ、本当に出るとは思わなかった。


 能力値はさておき……このスキル、多分チートなんじゃね?



「さっきから私の話を遮るなと言っておるだろうがぁっ!」


「んなことよりさ、このスキルってなんなの? 俺の状況よりそっちのが気になるんだが」


 スキルによって、俺のこれからの人生が大きく変わるのだ。

 チート主人公になって華やかに暮らすか、血塗れになって泥臭い闘いに明け暮れるかの分かれ道だ。


「貴様はとにかく私の話を聞けぇっ!」


「……王様、こやつの相手は、ワタシにお任せください」


 そう言うと、ローブ集団の中で一番大きな杖を持った者が一歩前に出る。

 男ばかりかと思いきや、そいつはどうやら女のようだった。

 ローブの隙間から覗く肌が綺麗だし、睫毛も長い。


「異人よ、そなたの世界の文化は知らん。ゆえ、ワタシ達への無礼は大目に見よう。だが、王への侮蔑は許さんぞ」


 女が出ると、ざわついていた他のローブの男が一気に黙った。

 王様は俺のせいか不満気ではあるが、彼女が代表として話すことに文句はないらしい。


 そこそこ偉い地位にいる人なのだろうが、周囲の男より遥かに若そうなところが気に掛かった。

 彼女は、身長140センチあるかないかと言ったところだった。


「……お前、身長低いな。何歳だ?」


 しん、と場の空気が凍る。

 さっきの落ち着いた静けさではなく、それが恐怖による静寂であることを、俺はなんとなく察した。


「だ、だだっだ……」


「うん?」


「誰がチビだぁぁぁあっ!!!」


 女が叫びながら大杖を振り上げる。


「ロゼ様を止めろ!」「はっ!」

「俺達ならできるはずだ!」「気を抜くな、死ぬぞ!」

「新人は下がっていろ。こういうのは、先のない老兵の仕事だ」


 あちらこちらに光が飛び交った。

 広間の床が燃え、壁が割れた。シャンデリアが落ちた。


「あいつをぶっ殺させろぉぉおっ! 魂を幻獣の餌にしてやるっ!」


「落ち着いてくださいロゼ様! 先ほど王以外への失言は大目に見るとおっしゃったばかりです!」


 俺は映画顔負けの大騒ぎを見て、これからの異世界ライフに心をときめかせていた。

スキル紹介:


『特殊スキル:天の声』

 このスキルを保持していると、レベルアップやスキル取得などを声で知らせてくれる。

 スキルLvの上限は1。


『特殊スキル:アルデンダ言語』

 このスキルを保持していると、アルデンダの言葉がわかるようになる。

 Lv1で幼児程度、Lv最大で歴史に名を残すの詩人程度。

 スキルLvの上限は10。

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