第五話 若すぎる理事長
只今、私達三人は両親と離れ、暮らすための荷物を詰め込んだ馬車の中で楽しくお喋り中です。荷物と言ってもほとんどが私物。洋服などは先に送ってある。今、私達個人が持ってるのは、国王様から頂いた魔術師用の赤い宝玉が埋め込まれた杖、真剣、回復用の緑の宝玉が埋め込まれた杖だ。
魔法には、二つの使い道があり、私が持つ紅玉の杖は攻撃専用。マリネの持つ緑玉の杖は回復、防御用だ。
「ヴァルシオーネ学園って名門だし、制服も可愛いよね。」
私が二人にそういうと、こくん、とマリネが頷いた。なんて可愛らしいの。カイルはマリネを滅茶苦茶褒めてる。
褒めすぎて、マリネがカイルうるさい、とカイルの顎をグイッと押し、顔を見られないようにした。滅茶苦茶真っ赤だ。
今、私達が来て居る制服は、紫色のボタン二つのブレザーに、黄色の襟。
黒いスカートだ。しかも芸術家が被る帽子の紫バージョンの帽子もかわいい。斜めにかけるのがいいらしい。
「…あ。」
「…どうしたの?」
熱々な二人に呆れて、無言で本を読んでいた私にカイルと話していたマリネが話しかけて来た。
私が外の建物を指差すとカイルとマリネも見始める。
大きな建物の上には箒に乗った魔術師というか生徒が私達を見ていた。
見られてることに気が付いたのかギョッとした表情でそそくさと何処かに飛んで行く。まちがいなく、マリネを見てたな。
まぁ、それはいい。着いたのだから…ヴァルシオーネ学園に。
「大きいな!」
「ー…うん。」
「…二人とも、準備して。そろそろ降りるから。後、カイル、マリネと手を繋いで恋人らしく見せて。
二人とも可愛いしかっこいいから金狙いの奴等に目を着けられる。私なら大丈夫だから」
二人は恥ずかしがりながらも了承してくれた。…熱くて火傷しそうだ、嫌がらないなんて。
ピタリと止まった馬車から降りれば、立ちながら書類にサインをしていた20代前半の若い女の美人さんがこちらにかけて来た。
が、途中で転んでしまった。
「…大丈夫ですか?」
スタスタと私達の方から歩いていく。
流石に人集りが多いな。
手を差し出すと、手を差し出すと、女の人はありがとう、と手を握って立ち上がった。
「五歳には見えない大人っぷりですね〜噂には聞いていましたよ〜?
私は、ヴァルシオーネ学園理事長のチェスカ・ヴァルシオーネです。
ヴァルシオーネ学園の由来が分かって簡単でしょう?」
…そうだったの?中々和やかな理事長だ。
「…あの、お若いですね。」
と、マリネが言うと理事長はふふふ、と笑って見せた。
「私は100歳を超えていますよ。」
「えぇぇぇ!?」
カイルが大声で驚く。私もマリネも驚愕だ。不老不死にでもかかって居るのだろうか。
いやでも、もしかすると…。
「うふふ、時属性ですよ。この世には様々な異形の属性が多数ありますからねぇ。
私はそのうちの真ん中くらいの時属性ですよ。この学園にはもう一人いますね。
それに、何歳でも美しくありたいでしょう?さて、行きましょうか。」
そう言って、学園に入っていく理事長の後を追うように私達も中へと入っていった。
この世界には、異形の魔法属性がある。本来は、闇、光、水、炎、風、土といった所だが、稀にいるのだ。
理事長のように、自身や周りの時間を早めたり遅らせたり出来る時魔法などの異形属性が。もう一人が気になる。